7月1日にグランドオープンした秋田・横手市の「IRISOアリーナ横手」。市民のスポーツ拠点として整備された新施設には、県内でも先進的なAIカメラが導入された。試合映像の自動撮影やライブ配信を可能にするだけでなく、選手の技術向上や指導現場の充実にもつながるという。スポーツを「する人」「見る人」「支える人」を結ぶ新たな挑戦が始まっている。
AIが映し出す新しい観戦体験
横手市赤坂に整備されたIRISOアリーナ横手は、第1アリーナと第2アリーナを備える大型体育館だ。

約5000人を収容できる第1アリーナでは、市民のスポーツ活動をはじめ、児童生徒の大会や、横手市を拠点に活動する社会人バレーボールチーム「スカイロケッツ秋田」のホームゲーム開催も予定されている。
その新施設の大きな特徴が、5台設置されたAIカメラだ。
イスラエルの企業が開発したシステムで、1台に3つのレンズを搭載。試合全体を広角で撮影しながら、AIがボールや選手の動きを認識し、自動的に映像を編集する。
開業前に行われた県中学校総合体育大会の試合映像では、ボールの行方を見失うことなく追い続け、まるで人が操作しているかのような自然なカメラワークを実現していた。
撮影のためにカメラマンを配置する必要はなく、複数の試合を同時に記録できる点も大きな強みだ。
「会場に来られない人にも届けたい」
AIカメラ導入の背景には、「スポーツをより身近なものにしたい」という横手市の思いがある。
撮影された映像は、専用サイト「横手スポーツライブ」で生配信され、家族や友人、地域の人たちが場所を選ばずに試合を観戦できる。
横手市スポーツ振興課の進藤倫啓課長は、「試合会場に来られない人たちにも観戦や応援を楽しんでもらいたい」という思いが導入のきっかけだったと話す。
少子化や人口減少が進む中、保護者や祖父母が遠方から子供たちの試合を見守るケースも少なくない。ライブ配信はそうした課題を解決し、スポーツを通じた地域のつながりをより広げる役割も担う。
選手の成長を支える“映像の力”
AIカメラの価値は、観戦環境の充実だけではない。
撮影した映像は試合直後からタブレットなどで確認でき、プレー分析や戦術の振り返りに活用できる。これまで専門スタッフや機材が必要だった映像分析が、より身近なものになる。
開業前にシステムを体験したスカイロケッツ秋田の赤川育也主将も、その効果を実感している。「自分のプレーやチーム全体の動きを客観的に確認できることで、練習の質が高まると感じた」という。
選手自身が映像を見ながら課題を発見し、改善につなげる。指導者にとっても具体的な場面を示しながらアドバイスできるため、AIカメラは練習現場における"もう1人のコーチ"のような存在になりそうだ。
プレーを届け会場の熱気も高める
赤川主将は、AIカメラの可能性は競技力向上だけにとどまらないと考えている。
配信を通じてより多くの人にチームのプレーを届けられるほか、試合会場では大型モニターに映像を映し出し、迫力ある演出や応援に活用できると期待を寄せる。
プレーする選手と観客が同じ映像を共有することで、会場の一体感も高まりそうだ。
スポーツは競技そのものだけでなく、応援する人たちの熱気によっても価値が生まれる。AIカメラは、その熱気をより大きく広げる役割も担っている。
感動を共有するためのツールへ
現在、AIカメラはバレーボールのほか、バスケットボール、サッカー、ハンドボール、ラグビーなど16競技に対応しており、今後さらに対応種目が増える予定だ。
進藤課長は、「スポーツをする人、応援する人、指導する人が映像を通じて感動を共有し、一緒に成長できるツールとして活用してほしい」と期待を寄せる。
IRISOアリーナ横手に導入されたAIカメラは、単なる最新設備ではない。観戦機会を広げ、競技力向上を支え、人と人をつなぐ存在として、地域スポーツの新たな未来を映し出している。
スポーツの感動をより多くの人へ届ける挑戦が、横手から始まっている。
(秋田テレビ)

