全国的に深刻化している空き家問題。環境や防災面から課題として語られることが多い一方、その空間に新たな価値を見いだす取り組みも始まっている。秋田・大仙市の女性は、空き家となった実家を民泊施設へと改装。5歳の長女とともに、訪れた人に秋田の魅力と温かさを伝える挑戦を続けている。
増え続ける空き家 その活用に挑戦
秋田県内の空き家は、1988年の2万7800戸から、2023年には6万9500戸へと約2.5倍に増加した。管理が行き届かない空き家は地域の課題となる一方、その活用方法にも注目が集まっている。
大仙市で民泊施設を営む大山かほりさんも、空き家活用に挑む1人だ。
2025年7月にオープンした一棟貸しの民泊施設「結ライ処 出羽紬」は、3年前に空き家となった実家を改装して実現した。
畳の部屋や台所、寝室が備わる室内には、かわいらしい装飾や観光ガイドブックが並び、利用者を温かく迎えている。
奄美大島で知った民泊の魅力
大山さんは、かつて観光業が盛んな鹿児島・奄美大島で暮らしていた経験を持つ。
民泊が身近な存在だったことから、「空き家となった実家を活用し、自然の中で楽しめる場所を作りたい」と考えるようになった。
「仲間内でわいわいする所が限られてきている。ここは家族の目を気にせずに、みんなで集まれる場所。仲間同士やかつて一緒に青春したメンバーなどで使ってもらいたい」と大山さんは話す。
利用者には20代のグループも多く、バーベキューを楽しむ姿を見るたびにやりがいを感じるという。
5歳の“共同経営者”とおもてなし
「いらっしゃいませ!どうぞ」
元気な声で出迎えるのは、長女の結莉子ちゃん(5)。運営を支える心強いパートナーだ。
おもてなしの準備や部屋の案内などを担当し、宿を訪れる人との交流も楽しんでいる。
大山さんは結莉子ちゃんについて、「人見知りも全然しない。色々な大人と関わってほしい。『小さい大人』として子供を見ている。一緒に経営していく仲間みたいな感じ」と笑顔で話す。
親子で築く温かな雰囲気も、この宿の魅力の一つとなっている。
駅前に広がる新たな挑戦
大山さんはさらに事業を広げ、2026年にはJR大曲駅前の自宅2階部分を活用した新たな民泊施設をオープンした。
こちらは女性やファミリー向けがコンセプト。子供向けのおもちゃを用意するなど、家族連れでも安心して過ごせる環境を整えた。
「子育て中だと泊まりは結構大変。気兼ねなく、娘も5歳なので、うちの家族に会いに来てもらう感覚で利用してほしい」と話す大山さん。
子育て中の自身の経験を生かし、利用者がくつろげる空間づくりを目指している。
宿泊を“秋田体験”に
施設内には、樺細工の引き出しや楢岡焼の食器など、秋田ならではの工芸品を配置。さらにウェルカムドリンクには、大仙市太田地区で特産化に取り組むエディブルフラワーを浮かべる予定だ。
また、「結ライ処 出羽紬」では、エディブルフラワーを使ったスイーツ作りやきりたんぽ鍋作りなどの体験イベントも開催している。
大山さんは「秋田は何もない、と思っていたこともあったが、外に出てみないと良さを知ることはできなかった。秋田にしかない景色を広めたい。都会で疲れている人などに癒やしを届けたい」と語る。
空き家を地域資源へと変え、親子で秋田の魅力を発信する大山さん。宿泊を通じて人と地域を結ぶ挑戦は、これからも続いていく。
「泊まりにきてね!」
そう呼びかける結莉子ちゃんの笑顔が、訪れる人を待っている。
(秋田テレビ)

