いま世界は、空前の抹茶ブームに湧いている。その裏で、茶の名産地では、或る変化が起きていた。地元の茶販売店の現状を取材した。
「アイラブ抹茶」 押し寄せる外国人旅行客
福岡・八女市にあるお茶の専門店『お茶村』。外国人観光客が手に取っているのは、抹茶のお菓子やパウダーなどたくさんの抹茶製品。

タイから訪れた観光客は「きょうは2軒、ハシゴしました。日本の抹茶や八女の名前はタイではかなり知られています」と話す。

またオーストラリアからの観光客は「抹茶はいま、オーストラリアでとても人気です。抹茶パウダーや葉デザートなどを買いました」と買い物をした後は、併設するカフェで抹茶スイーツに舌鼓を打つ。

農林水産省の調査によると欧米や東南アジアなど、海外への粉末茶の輸出額は、6年間で約7倍に増加している。世界中で“抹茶ブーム”が沸き起きているのだ。

“茶どころ”の八女市では2025年の1年間の外国人旅行者の滞在数が、前年比で2.36倍となり、その増加率は九州で1位、全国でも4位となっている。

市は「海外でのブームの影響で抹茶を求めて訪れる外国人が増えている」とみている。

茶葉を抹茶用の『てん茶』として出荷
創業100年を超える老舗『古賀製茶本舗』。主力商品の玉露茶などに加え、2026年から新たに抹茶パウダーや専用のシェイカーなど、抹茶製品の開発に力を入れ始めたという。今後の売上拡大を期待し抹茶ブームを歓迎していると思いきや実は、手放しでは喜べない現状もあるようだ。

古賀製茶本舗の古賀祐介会長は「去年の入札からかな、急激に価格が上がってですね、必要な人も高く入れないと手に入らない」と話す。

全国の品評会で玉露茶が25年連続日本一に輝くなど、茶の生産が盛んな八女市では、抹茶ブームを受け、茶葉を抹茶用の『てん茶』として出荷する農家が増加している。

2026年、八女市の茶取引センターで扱った茶葉の中で『てん茶』の量は前年より5割ほど増加。一方、玉露など茶葉を煎じて飲む『リーフ茶』は、取り扱いが1割ほど減少した。

さらにペットボトルなど『緑茶飲料』の販売額は、年々伸びていて、大手飲料メーカーが茶葉を確保する動きもみられる。

これらの要因から市場に出回るリーフ茶が少なくなり、価格が上がっているというのだ。

相次ぐ茶関連業者の倒産や休廃業・解散
古賀会長は「やっぱり、そういう仕入れ価格が高騰してですね。で、いままでの既存のお客さんに、もう金額的に届けられない。全然合わない」と話す。

元々、リーフ茶の商品を主に取り扱っていた店は値上がりした茶葉の確保に苦労する店も少なくないという。東京商工リサーチによると九州・沖縄における2025年1年間の茶関連業者の倒産や休廃業・解散は、合わせて20件となり、過去10年間で最多となっている。

総務省の調査では1世帯あたりのリーフ茶の消費量は年々、減少していて、特に若い人がリーフ茶を飲まないというデータもある。そこへ来て、この抹茶ブームでリーフ茶の仕入れ値が上昇。
「これまでのようにスーパーなどへ誰でも気軽に買える価格帯で卸すのが難しくなっていて、高いお茶しか並んでいないとか、お茶の棚自体が無くなっているところもある」(『古賀製茶本舗』古賀祐介会長)
抹茶ブームによる思わぬ影響も出てきたなか、この店では日々の緑茶を飲む文化も大切にしたいとリーフ茶を使ったティーパックなども開発し、これらを海外で販売するために必要な認証の取得も進めている。

「農家さんが判断してやられてるところなんで、僕たち気持ちとしてはですね、もう2年前、3年前ぐらいのかたちに戻ってはほしいんですけど。八女の伝統本玉露っていう八女独自のやり方でやってるんで、もう日本中で高く評価されてますんで、だからそれはやっぱり残してもらいたいですよね」(『古賀製茶本舗』古賀祐介会長)

日々、お茶をいれて飲む文化が途絶えてしまうと、抹茶ブームが去ったあとのお茶業界の生き残りに対して不安も広がる。

空前の抹茶ブームによる“光と影”。伝統のお茶文化を今後も守っていけるのか。産地での挑戦が続く。
(テレビ西日本)

