秋田県内でクマの出没と人身被害が相次ぐ中、被害防止策として「忌避剤」の利用が急速に広がっている。商業施設でも導入され、日常の安全対策として定着しつつある。強烈なにおいでクマを遠ざける仕組みと、その開発現場、そして現場の声を取材した。
被害相次ぎ対策が日常に
秋田県内ではクマの目撃が増加し、5~6月にかけて1人が死亡、4人がけがをする事案が発生した。
こうした状況を背景に、鈴やスプレーに加え、「忌避剤」を使った対策が広がっている。
クマの嫌う“におい”で接近を防ぐとされ、商業施設や住宅周辺などで設置が進んでいる。
スーパーでも導入「安心感につながる」
秋田市のスーパーマーケット「グランマート泉店」では、2025年秋から出入り口など3カ所に忌避剤を設置した。
周辺でクマの目撃が相次いだことがきっかけで、過去には秋田市内の別の店舗にクマが侵入し、従業員がけがをする事案も起きている。
店長の高橋誠さんは、導入の効果について、「忌避剤は、クマを近寄らせない効果があると言われていて、非常にありがたい。客から『安心して買い物ができる』という声も聞かれているし、従業員からも『非常にありがたい』という言葉をもらった」と話す。
安全対策としてだけでなく、利用者の安心感にもつながっている。
激辛唐辛子が生む強烈なにおい
多くの施設で導入されている忌避剤『熊をぼる』は、青森・五所川原市の企業、エコ・ワークが製造する。「ぼる」とは東北の方言で「追い払う」という意味だ。

主成分は、ハバネロの約10倍の辛さを持つとされる唐辛子「ブート・ジョロキア」。
栽培が難しいため輸入が主流だが、エコ・ワークは土壌改良を重ねることで技術を確立し、自社の畑で種から栽培している。2026年は、前年の2.5倍の2900株を作付けしたという。
ジョロキアは乾燥させて粉末化し、アルコールで成分を抽出。さらに熟成させてにおいを整える。
エコ・ワークの代表・石岡広志さんは、「ジョロキアのカプサイシンのにおいは、当然クマが逃げるくらいのにおい。人でも嫌がる人はいるが、熟成させることで使いやすいにおいになる」と説明する。
さらに木酢液を加えることで、においの持続性を高めている。
「追い払う」ではなく「知らせる」役割
この忌避剤は、つり下げ型や携帯型など複数の種類があり、2025年には売り上げが前年比2.5倍に増加した。
一方で、石岡代表は「あくまで殺虫剤ではない。クマに『ここに人がいる、危険だ』と知らせるもの。場所を分けてもらうためのもの」と、その役割を強調する。
クマを排除するのではなく、人との距離を保つための手段だという。
日常に根付く新たな「防災」
科学的な効果の検証は十分ではないが、“お守り”としての需要は高まっている。
スーパーなどの商業施設はもちろん、個人で購入するケースも増え、インターネット販売も伸びている。
相次ぐ出没と被害。地域が直面する課題の中で、忌避剤は新たな選択肢となりつつある。
クマと人との「すみ分け」をどう実現するか、その模索が続いている。
(秋田テレビ)

