狩猟免許や専門知識を持ち、クマなどの鳥獣被害対策を専門に行う自治体職員「ガバメントハンター」。秋田県内で採用しているのは、25市町村のうち秋田市、鹿角市、東成瀬村の3自治体にとどまっている。秋田テレビが実施したアンケートでは、未採用の22市町村の約6割が「採用の意向はない」と回答。クマ被害が深刻化する中、有効な対策として期待される一方、人材確保や制度面など多くの課題が導入の壁となっている。

採用は3市村のみ 6割が「意向なし」

秋田テレビは6月、県内25市町村を対象にガバメントハンターの採用状況についてアンケートを実施した。

その結果、ハンターを自治体職員として採用しているのは秋田市、鹿角市、東成瀬村の3自治体だった。加えて、県も6月にハンター1人を採用している。

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一方で、「採用していない」と答えた22市町村のうち、約6割が「採用の意向はない」と回答した。

また、5つの市と町は「採用の意向はある」としながらも、実際の採用には至っていないことが分かった。

東成瀬村が新たに採用 背景にクマ被害への危機感

7月1日、東成瀬村はガバメントハンターとして浅見勇人さんを採用した。

東成瀬村のガバメントハンター・浅見勇人さん
東成瀬村のガバメントハンター・浅見勇人さん

埼玉県出身の浅見さんは元地域おこし協力隊。4年前に村に移住し、その後狩猟免許を取得して地元の猟友会に所属した。

猟の経験はまだないものの、地域の役に立ちたいという思いから応募を決意したという。

浅見さんは「いま住んでいる場所に実際クマが出てきてしまった。イノシシも出ていて、うちも農作物がやられた。人と野生動物が近くなりすぎたのかなと感じている」と話す。

男女4人がクマに襲われた現場付近(2025年10月)
男女4人がクマに襲われた現場付近(2025年10月)

村では2025年10月、男女4人がクマに襲われ、30代の男性が死亡する事故が発生した。

また村によると、2026年度のクマやイノシシなど有害鳥獣の目撃件数は、前年同期の2倍以上に増加している(6月末時点)。

東成瀬村産業振興課・佐々木清志課長
東成瀬村産業振興課・佐々木清志課長

村産業振興課の佐々木清志課長は「出没情報が増えたことに加え、去年の人身被害もあり、緊急に対策しなければならないと考え採用に至った」と説明する。

応募者ゼロから一転 地域を知る人材を確保

東成瀬村役場
東成瀬村役場

東成瀬村では6月から募集を開始したが、当初は問い合わせすらなかった。

住民の安全確保と緊急時の対応を考え、狩猟免許の保有を応募条件としたこともあり、人材探しは難航した。最終的に締め切り日に浅見さんから応募があり、採用に結び付いた。

佐々木課長は「地理的なことも分かっている。対策を進めていくうえで助かる。猟友会の先輩方と一緒に経験を積んでもらいたい」と、浅見さんに期待を寄せる。

「知識や技術を習得して任せてもらえるハンターになりたい」と意気込む浅見さん
「知識や技術を習得して任せてもらえるハンターになりたい」と意気込む浅見さん

浅見さんも「経験が浅いので、動物の痕跡など、すぐに判断できないこともある。先輩方の知識を早く習得して、自分に任せてもらえるガバメントハンターになりたい」と意欲を見せている。

導入の壁は“人材育成”と“ガンロッカー”

採用に前向きな自治体も、様々な課題を抱えている。

アンケートで挙げられた採用への課題
アンケートで挙げられた採用への課題

アンケートでは、「クマの出没が少ない時期を含めた年間業務の在り方」「人材確保の難しさ」「ガンロッカーの設置」などが課題として挙げられた。

ガンロッカーは猟銃を保管する設備で、警察への申請や法令に基づく基準を満たす必要がある。

猟銃を自宅に保管しているケース
猟銃を自宅に保管しているケース

猟銃を自宅で保管している場合、庁舎から現場に向かう前に自宅へ取りに戻らなければならず、対応が遅れる可能性もある。

そのため庁舎内での保管を検討する自治体もあるが、設備の整備や運用面のハードルは低くない。

「撃てる人」だけではない 求められる役割

採用に意欲を示す大館市は、ガバメントハンターの役割をより広く捉えている。

大館市・石田健佑市長
大館市・石田健佑市長

大館市の石田健佑市長は「撃てるハンターというより、撃てる人たちとのコミュニケーションを取り、関係性を構築することが重要」と話す。

その上で、「他自治体のクマ対策を実証実験するなど、行政にしかできない知見を生かした活動ができるガバメントハンターの育成が必要だ」と強調する。

大館市では2025年、市街地へのクマ出没が相次ぎ、捕獲頭数は381頭に上った。

石田市長は、猟友会との調整役や若手会員が活動しやすい環境づくりも重要な役割になるとの認識を示している。

県は広域配置を検討

こうした状況を受け、県は将来的に鳥獣管理の専門職員とハンターを、県北と県南に配置する構想を描く。

秋田県自然保護課・柏倉誠課長
秋田県自然保護課・柏倉誠課長

県自然保護課の柏倉誠課長は「鳥獣管理の専門知識を持つ職員とハンターをセットで配置するイメージ」と説明する。

県はそれぞれ6人程度の採用を目指しているが、採用時期は未定。まずは採用に伴う課題の整理や、市町村に対する国の交付金制度の案内など支援を強化する方針だ。

また、専門資格や経験を持つ人材を最初から確保するのは難しく、「採用後に育成していく形になるのではないか」とみている。

鳥獣対策の担い手をどう確保するか

秋田市の市街地でもクマの出没が相次いでいる
秋田市の市街地でもクマの出没が相次いでいる

クマやイノシシによる被害が増える一方で、狩猟人材の不足や高齢化は進んでいる。

ガバメントハンターは有力な対策の一つとして期待されるが、その役割や配置の在り方については自治体ごとに考え方が異なる。

広域で対応するのか、市町村が独自に担うのか。県と市町村が連携しながら、持続可能な鳥獣被害対策の体制づくりが求められている。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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