西馬音内盆踊りの幻想的な夜を、香りで表現する。秋田・羽後町の宿泊施設「盆宿U」のサウナに5月に導入されたロウリュ専用アロマを手がけたのは、地域おこし協力隊として移住し、町でアロマブランドを営む女性。地元の自然と伝統文化への思いを込めた香り作りを通じ、羽後町の新たな魅力発信に挑んでいる。

「アロマで町おこしを」 東京から羽後町へ

秋田・羽後町で「杉宮精香堂」を営む赤石朝美さん
秋田・羽後町で「杉宮精香堂」を営む赤石朝美さん
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羽後町のアロマブランド「杉宮精香堂」を営む赤石朝美さんは、20年にわたりアロマ業界に携わってきたセラピストだ。

もともとは東京のアロマ専門店などで経験を積んできたが、2019年、両親の出身地である羽後町へ地域おこし協力隊として移住した。

そのきっかけについて赤石さんは「地域おこし協力隊にならないか、という話を親戚から聞いて、自分のできるアロマで町おこしをしたい、という話はしていたので、このチャンスを逃してはいけないと思って決断した」と振り返る。

アロマの専門知識を生かして地域に貢献したい。その思いが移住への大きな後押しとなった。

地元の植物から生まれる『羽後町アロマ』

3年間の地域おこし協力隊の任期を終えた現在も、赤石さんは羽後町に根を下ろし、活動を続けている。

自ら山に入り植物を採取する赤石さん(画像提供:本人)
自ら山に入り植物を採取する赤石さん(画像提供:本人)

山林から採取したクスノキ科の植物「クロモジ」などを蒸留し、精油やアロマ製品として商品化。地元の植物資源を活用した『羽後町アロマ』として展開しているほか、定期的にワークショップも開いている。

羽後町産のクロモジを蒸留して作った『羽後町アロマ』
羽後町産のクロモジを蒸留して作った『羽後町アロマ』

ワークショップでは参加者が好みの香りを組み合わせ、オリジナルのアロマスプレー作りを楽しめる。

精油を水にそのまま入れると分離してしまうため、まずエタノールとなじませる工程が必要だという。

赤石さんは「水と油が分離するように、水に直接精油を入れると分離してしまうので、まずなじませるためにエタノールに精油を入れていく。植物を発酵させたオーガニックアルコールになる」と丁寧に教えてくれる。

ワークショップでは自分の好きな香りを組み合わせてオリジナルアロマを作ることができる
ワークショップでは自分の好きな香りを組み合わせてオリジナルアロマを作ることができる

ベルガモットやラベンダー、ひのきなど、数ある中から好みの香りを選び、精油と精製水を混ぜ合わせれば、数分でオリジナルアロマが完成する。

長年抱いていた夢 西馬音内盆踊りを香りで表現

赤石さんには以前からかなえたい夢があった。

羽後町が全国に誇る伝統行事「西馬音内盆踊り」の夜を、香りで表現することだ。

毎年8月に行われる羽後町の「西馬音内盆踊り」(画像提供:赤石朝美さん)
毎年8月に行われる羽後町の「西馬音内盆踊り」(画像提供:赤石朝美さん)

しかし、その世界観をどのように香りとして形にすればよいのか答えを見いだせず、地域おこし協力隊の任期を終えた後も模索が続いていた。

そんな中、大きな転機が訪れる。

西馬音内盆踊りをテーマにした泊まれる文化交流施設「盆宿U」
西馬音内盆踊りをテーマにした泊まれる文化交流施設「盆宿U」

2025年4月にオープンした泊まれる文化交流施設「盆宿U」から、西馬音内盆踊りのかがり火をイメージしたアロマ制作の依頼が舞い込んだのだ。

依頼されたアロマは西馬音内盆踊りの“かがり火”をイメージしたもの
依頼されたアロマは西馬音内盆踊りの“かがり火”をイメージしたもの

「どういうふうに形にしていいか移住してからも分からなくて、そのまま地域おこし協力隊も卒業してしまった。ただ、盆宿Uから西馬音内盆踊りのかがり火のイメージでアロマの制作を依頼されて、自分の夢がかなうチャンスをもらったので本当にうれしかった」と赤石さんは語る。

サウナで体感する盆踊りの世界観

「盆宿U」は、西馬音内盆踊りの魅力を広く発信するために整備された施設だ。

西馬音内盆踊りのはやしの音が流れている盆宿Uのサウナ室
西馬音内盆踊りのはやしの音が流れている盆宿Uのサウナ室

蔵をリノベーションしたサウナでは、おはやしの音色が流れ、利用者は伝統行事の世界観に浸ることができる。

そこで使われるロウリュ専用アロマを開発したのが赤石さんだ。

子供の頃から西馬音内盆踊りに魅了され、約10年前からは踊り手としても参加している赤石さん。自身の記憶や経験を基に、希少性の高い精油を組み合わせながら香りを作り上げた。

赤石さんが開発したアロマが入った水を石にかけるとかがり火を思わせる香りが広がる
赤石さんが開発したアロマが入った水を石にかけるとかがり火を思わせる香りが広がる

サウナ室に広がるのは、燻したような香り。かがり火を思わせる温かさと奥深さが漂う。

目を閉じれば、おはやしの音とともに西馬音内盆踊りの夜の情景が浮かび上がってくる。

まさに五感で体感する西馬音内盆踊りだ。

地域を象徴する“町の香り”へ

赤石さんが目指しているのは、単に地元の植物を使ったアロマ作りではない。

その土地の風景や文化、人々の記憶までも香りとして表現し、“地域の香り”を生み出すことだ。

様々な素材を香りで表現し“地域の香り”を作っていきたいと語る赤石さん
様々な素材を香りで表現し“地域の香り”を作っていきたいと語る赤石さん

「西馬音内盆踊りをイメージする香り、という自分が調合した香りも地域の香りとして成り立つものだと思った。クマもいるし、山からの素材にこだわらなくても町を象徴する香りを作っていけたら、その町の香りとして生かしていけるのかなと思う」と語る赤石さん。

自然の恵みだけでなく、地域の文化や物語も香りの素材になる。そんな発想から生まれた西馬音内盆踊りのアロマは、新たな羽後町の魅力として広がり始めている。

町の自然、伝統、そして人々の思いを閉じ込めた香り。赤石さんはこれからも、ふるさとを感じる香り作りを通して、羽後町の新たな価値を発信していく。

(秋田テレビ)

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