日本人の2人に1人が患うとされるがん。その最先端の治療施設が、鹿児島県指宿市にある。「陽子線」を使ったがん治療で、これまでに約8000人の患者を受け入れてきた施設だ。治療中の痛みはほぼなく、照射時間は1分以内。しかも近年は保険適用の範囲が広がり、3〜13万円程度で治療が受けられるケースも出てきている。手術や投薬に次ぐ「第三の選択肢」として、その存在感が増しつつある。

東京ドーム77個分の敷地に広がる治療施設

指宿市の市街地から車で約20分。山の上に姿を現すのが、「メディポリス国際陽子線治療センター」だ。東京ドーム77個分という広大な敷地には、最新の治療施設だけでなく、患者が滞在するためのホテルも併設されている。

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施設の中核を担うのが、「シンクロトロン」と呼ばれる巨大な機械だ。上から見るとドーナツ状に見えるこの装置で、水素の原子核である陽子を光の速さの約6割まで加速する。

シンクロトロン
シンクロトロン

技術部放射線技師の和田清隆部長はこう説明する。「陽子を加速器の中に入れてどんどん加速していきます。光の速さの6割程度まで加速すれば、がん細胞をやっつけるエネルギーを持った陽子線ができる」

加速された陽子は、「回転ガントリー」と呼ばれる治療室へと送られ、患者に照射される。

X線との決定的な違い——「がんの病巣だけを狙い撃ち」

陽子線治療の最大の特長は、がんの病巣に集中してエネルギーを届けられる点にある。放射線治療専門医の足立源樹医師はX線との違いをこう語る。

「X線は人間の体に当たると、表面で最大になってそのあとだんだん減っていく。がんに届く時にはすでに弱まっている。一方、陽子線は一番エネルギーが集中するピークを病巣の場所に合わせられるから、それ以外の部位にはほとんど当たらない」

X線と陽子線の違い
X線と陽子線の違い

つまり、正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら、がん細胞のDNAに傷をつけて増殖を止めるのが陽子線治療の本質だ。

実際の症例を見ると、その効果は明らかだ。治療前は約10センチほどあった肝臓がんが、陽子線治療から約5年後のCT画像では大幅に縮小。近くの腎臓を圧迫していた状態も解消されていた。

治療前
治療前
治療から5年後
治療から5年後

治療は1日1回、15〜30分程度。照射中の痛みはほぼない。

「治療後は通常生活ができる」——宮崎から通う77歳の声

実際に治療を受けているのは、宮崎県に住む77歳の男性だ。2026年4月の定期検診で前立腺がんが見つかり、知人の紹介でこの施設を知った。現在はホテルに滞在しながら、6月から陽子線治療を進めている。

「患者が実際ベッドに寝て、治療開始から終わるまで1分もかかりません。痛みも熱くも全く感じない。治療が終わった後は通常生活もできます」

以前は投薬治療として飲み薬とホルモン注射を受けていたが、「筋肉や体の疲れ、だるさ感があった」という。8回目の照射時点では、そうした不調を感じていないと話す。

最初に診断を受けた時の心境については、「自分の体はどうなるんだろうと、精神面、心の面ががんそのものよりも不安だった」と振り返った。

「すべてに万能ではない」——医師が語る課題と可能性

一方で、足立医師は陽子線治療の限界についても率直に語る。「消化管、胃、十二指腸、小腸などは放射線に非常に弱い。がんを治すほどの量を当てると腸に穴が開いてしまうので、その部位は手術の方がよりよい」

足立医師
足立医師

すべての臓器に適応できるわけではなく、病巣の場所や状態によっては他の治療法が優先されるケースもある。

その上で足立医師が強調するのが、保険適用の拡大がもたらす意義だ。2011年の治療開始当初はすべてが保険適用外だったが、2024年までに9つのがんの種類が対象となった。さらに2026年6月からは「大腸がんの手術後に肺へ転移したがん」も新たに加わった。

保険が適用されない場合の治療費は約330万円と高額だが、適用される部位では高額療養費制度を使うことで3〜13万円程度に抑えられる。

「手術だと年齢や合併症、あるいは手術をしたくないという理由で治療の機会を失う方がいる。そういう方たちも保険で陽子線治療ができるとなると、治療の幅がぐっと広がる」

2026年で治療開始から15年を迎えたメディポリス国際陽子線治療センター。九州唯一のこの施設が、指宿という地から切り開く医療の可能性は、着実に広がりを見せている。

【動画で見る▶【がん治療の最前線】がんの「狙い撃ち」陽子線治療とは?保険適用で広がる治療の選択肢 メディポリス国際陽子線治療センター 】

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鹿児島テレビ
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