天皇皇后両陛下の滞在中、ベルギーはヨーロッパを襲う熱波の影響で連日30度を超え、最後の3日間は35度にも達しました。気温の暑さと友情の厚さ、お互いを大切に思う心の熱さ。3つのアツさを感じたベルギーでの6日間の同行取材を振り返ります。
※前編はこちら
フランス語で「暑いですね」汗だくで英仏語交え交流
両陛下がブリュッセルを象徴する市庁舎の中庭に来られる頃には、徐々に陽が照り始め、気温も30度を超えました。
日本人学校の中高生50人余に加え、ベルギーの子どもや学生など100人近くが並びました。
日本人との会話では両陛下が国王夫妻に通訳をし、外務省の通訳無しで英語やフランス語での交流が続きます。
ベルギーは多言語国家ゆえ、母とは日本語で父とはオランダ語で会話するという生徒や、スペイン語を話す生徒など多様です。
皇后さまと王妃は日英仏”ちゃんぽん”状態で「何語が話せるの?」「将来は何になりたい?」などと楽しそうに子ども達と会話を弾ませられていました。
炎天下、30分近く続いた交流を終え、手を振られた後、カメラのすぐ前で4人のこのようなやりとりがありました。
両陛下:(英語)どんどん暑くなってきますね
皇后さま:(英語)太陽がどんどん上がってきて
陛下:(仏語)暑いですね
フランス語でつぶやく陛下の首筋には汗がにじみ、思わず笑顔がこぼれます。
想定外の暑さとどんな相手にも対応できる両陛下の言語力の高さが強く印象に残りました。
お別れの挨拶も汗まみれ
滞在最終日となった25日。照りつける日差しのもと、両陛下は国王夫妻と王宮の庭園を散策し、気温の高い温室も見学された後、いよいよおいとまの時が訪れました。
散策中も何カ所かで記念撮影をしていましたが、ここでも国王が「写真を撮ろう」と声をかけます。
陛下:最後の写真?
王妃:ええ、最後の写真ね
后さま:(位置を入れ替わりながら)同じ並びで?
陛下:同じ並びね(笑)
滞在中様々な場面で記念撮影があったのは、国王が思い出写真を大切なアイテムだと考えているからのようです。その都度並び順を譲り合い、両陛下はそのやりとりも楽しまれているご様子でした。
炎天下で別れを惜しむ中、国王はハンカチで汗を拭っていますが次から次へと汗がしたたり、皇后さまは汗だくの国王の頬に手を添えチークキスを交わされました。
皇后さま:ほんの少し暖かすぎますよね?
国王:暖かすぎるね
あまりの暑さをあえて「warm=暖かい」とウィットで表現。しかし国王の白いシャツには汗がにじみ始めます…。
王妃:こんなに暖かいなんて思ってもみなかったわ
皇后さま:本当に暖かくて
皇后さま(国王に):まるでゆだってるみたい
国王:ゆだってるよ
陛下:ゆだってるね
「warm」の限界を超え、ついに皇后さまが「boiling=ゆだる」と表現されると、汗だくの国王を囲み笑いに包まれました。
国王は握った陛下の手を長い時間離さず、お互いに別れを惜しむ思いがひしひしと伝わってきましたが、最後は暑さと汗、そして皇后さまのウィットに富んだ会話が笑顔を呼びました。
陛下は車に乗りこむ直前、国王夫妻に手を振り、国王は止めどない額の汗を拭いながら手を振り両陛下を見送っていました。
気温の暑さと友情の厚さ、お互いを大切に思う心の熱さ。常に3つのアツさを感じたベルギーでの6日間でした。
幼い頃から両親の姿勢に学び 愛子さまへの橋渡しも
陛下はこれまで折々に天皇としての務めを果たす上で「お手元で育てていただき、小さい頃から両親の姿勢を見てきたことがとてもありがたかった」と話されています。
陛下が先々代のボードワン国王と最初に会ったのは3歳のころ。お土産を頂いてうれしかったそうです。
また、陛下は今回現地で取材に応じた際、上皇ご夫妻の部屋に「ボードワン国王やベアトリックス女王の写真が飾ってあった」と明かし、「両王室の皆さんとの交流を私の両親も本当に大切にしていたんだなと小さい頃から思っておりました」と振り返られました。
愛子さまがフィリップ国王や次の女王となるエリザベート王女と初めて会われたのもオランダで静養された4歳の頃。
愛子さまも王女方もお互いに一緒に遊んだことを大切に記憶にとどめているそうで、陛下は「とてもうれしく思いました」と笑顔を見せられました。
幼い頃からご両親の姿勢を見て王室とのお付き合いを学び、ご自身も交流を重ねてきたように、愛子さまにも交流の土台を作り、将来につなげる「橋渡し」ができたことを心から喜ばれているご様子でした。
笑顔が絶えなかった国王 孤独も共有
10年前の国賓としての来日を取材した際、国王はとても控えめでシャイな印象を受けました。今回は終始穏やかな笑顔で、遠方から大切な友人を迎えた喜びが伝わってきました。
上皇さまは在位中の会見で「天皇という立場にあることは孤独とも思えるもの」と話されたことがあります。
陛下は生まれながらに特殊なお立場にあり、いつか重責を担う日が来ることを心に刻みながら成長し、そして即位後は深い孤独と向き合いながら務めを果たされているのだと思います。
国の制度に違いはあれど、似た立場同志で対等に接し、孤独を含め様々な思いを共有できるかけがえのない友人。それが陛下と国王の関係なのではないかと思います。
上皇后美智子さまは以前記者会見で、各国の王室との交流について
「私どもは離れ離れに暮らしていても同じ目標に向かって生きており、その同じ志の中でお互いを支え合い、励まし合っているように感じております」
と述べられています。
一般市民のように自由に会いに行くことはできないけれど、遠く離れていても心を通わせ、お互い支え合える存在。直接会える限られた機会を大切にし、親から受け継がれた交流をさらに深めて次の世代へとバトンを繋いでいく思いも共有されています。
「新たな1ページ」の続きは
筆者は皇太子時代の陛下単身での外国訪問、即位後の両陛下揃っての外国訪問、そのどちらにも同行しています。
特に王室のあるイギリス、オランダ、ベルギー訪問へ取材を通じて感じたのは、陛下はご両親の背中を見ながら長年大切に育んできた王室との友情を夫婦で分かち合い、国と国との友好親善に役立てていくことができるパートナーとして、皇后雅子さまを選ばれたのではないかということです。
皇后さまの卓越した語学力とコミュニケーション力は行く先々であたたかな交流の花を咲かせ、陛下も本当にうれしそうなご様子でした。
国賓としての訪問は外交儀礼上一カ国に対して一度といいます。体調が整わず、皇后さまが国際親善の舞台から遠ざかっていた時期を経て、今回両陛下揃って国賓としての訪問が叶い、陛下は晩さん会で、「長きにわたって続く交流の歴史に新しい1ページを加えることができることをうれしく思います」と述べられました。
今回ベルギーで撮影された数々の「家族写真」は王宮や御所に大切に飾られることと思います。
両親の姿を見つめ、学んでいる愛子さまがこの先、同じ年の次の女王とどのように交流を深めていかれるのか。次のページも見つめていきたいと思っています。
【執筆:フジテレビ宮内庁担当 宮﨑千歳】

