広島の企業・アンデルセンが59年にわたって続けてきた、日本とデンマークの食文化交流。その象徴である「デンマークフェア」が今年も6月、広島アンデルセンで開かれている。シェフやスタッフが総力を上げるイベントの舞台裏に密着した。
駐日デンマーク大使を招いた前夜祭
5月31日。広島市中区の広島アンデルセンが、1年で最も忙しい日を迎えた。
翌日から始まるデンマークフェアを前に開かれた前夜祭。その晩餐会のゲストには、ヤール・フリース=マスン駐日デンマーク大使夫妻も招待された。
アンデルセングループの山崎賢治総料理長がスタッフに声を掛ける。
「料理はきれいに、おいしく、熱く、冷たく出していきます」
厨房には、駐日デンマーク大使公邸のサンパット・バンダラ エグゼクティブシェフの姿も。広島の食材を使いながら、デンマークの考え方を取り入れた料理をアンデルセンのシェフたちとともに仕上げていく。
会場では、デンマークから訪れたゲストたちが「デンマークフェアに来てね」と笑顔で呼びかける場面もあった。
閉店後に始まる“舞台裏の伝統”
前夜祭が佳境を迎えるころ、店内ではフェアの準備が始まっていた。閉店後、翌日の開幕に向けてスタッフが一斉に動き出す。
「フロアは自分たちで作り上げるのが代々の伝統。デンマークフェアの一大行事です」と副店長の小島崇さん。
デザイン室では、フェアにあわせて行われるスタンプラリーのポップなどを制作。フラワーチームの寺戸正三さんは、デンマークの国民的作家・ヴィンブラッドの器に花とグリーンを生けながら、「ヴィンブラッドの器には合わせるのが難しい」と思案を重ねていた。
売り場のスタッフたちは「毎年のカーニバルみたいな感じ」と笑う。
商品をどう並べるかにも、それぞれの思いがある。リテイルグループの山内久美さんは「やっぱりおすすめしたい商品を先頭に持ってきたい」と話す。そして「ちょっとマニアックなパンですが、すごくおすすめです」と、本場デンマークで親しまれている全粒穀物パン「ロブロ」を紹介してくれた。
世界最高峰バーガーを広島で再現
一方、2階のレストランでは、今年のフェアの目玉企画の準備が進んでいた。
「世界101のハンバーガーランキング」で5位に選ばれたデンマークの人気店「ガソリングリル」とのコラボである。半年近くかけて進めてきたポップアップショップの企画。本場の味を再現するために、多くのスタッフが力を合わせてきた。
パテを担当した料理長の中川幸二さんは、デンマークと広島の牛肉の違いに悩みながら試行錯誤を繰り返し、ガソリングリル創業者のクラウス・ウィットラップさんが納得するパテを完成させた。バンズを担当したベーカリー長の平岡憲治さんも、「世界トップレベルのバーガーにふさわしい品質を届けたい」と意気込みを語る。
店内の装飾も、クラウスさんから届いたデザインをもとに、一晩で本場の雰囲気へと様変わり。企画チームの久保原由美さんは、「かっこいいです。実際に張られると世界観が広がります」と笑顔を見せた。
フェア初日から“完売”の好スタート
6月1日、デンマークフェア初日。
フェアのために来日したクラウスさんが、「たくさんバーガーを作るのを楽しみにしています。この1カ月間、とても忙しくなると思いますが、みんなで頑張りましょう」と激励する。
クラウスさんとスタッフが円陣を組み、小島副店長の呼びかけで一つになった。
「1カ月後、みんなでガッツポーズできるよう頑張りましょう」
「ガソリングリル、頑張るぞ!」
「おう!」
オープニングイベント用のロングペストリーも焼き上がり、いよいよ1カ月間に及ぶフェアがスタート。平日の午前中にもかかわらず、店には多くの客が訪れた。
ハンバーガーは次々と注文が入り、用意していた180個が完売。中川さんは「報われたという気持ちです」と、パテ作りに奮闘した日々を振り返った。
59年守り続けた日本とデンマークの絆
初日はデンマークから来日したスタッフたちも売り場に立った。アンデルセンのデンマーク店で人気の味噌とキャラメルを組み合わせたデニッシュなど、両国の文化が融合した商品が並ぶ。
スタッフのニクラス・ジェイミ・フレイズさんは、「塩味のある味噌とキャラメルの甘さの相性がとても良い」と話す。
1968年に始まったデンマークフェア。半世紀以上にわたり、日本にデンマークの文化を紹介しながら、両国の絆を深めてきた。
ヤール・フリース=マスン駐日デンマーク大使は、味噌など日本の食材を使った商品がデンマークのアンデルセンで販売されていることに触れ、「日本の食文化がアンデルセンを通じてデンマークの人に伝わっている。互いに文化を交換できていることをうれしく思っています」と感謝を口にした。
デンマークフェアは6月30日まで。
歴代のアンデルセン社員たちが守り続けてきた、日本とデンマークをつなぐ文化の絆。2027年、デンマークフェアは60年目を迎える。
(テレビ新広島)

