長崎県佐世保市は水道料金を3年かけて段階的に値上げする。上げ幅は27.5パーセントで、過去3番目の大きさだ。
背景には水道設備の老朽化という全国共通の問題に加え、山がちな地形や慢性的な水不足という佐世保ならではの事情が複雑に絡み合っている。
明治47年の刻印が今も現役
佐世保市内で最も古い、山の田ダムは、建設から118年が経過している。
コンクリートがある時代につくられたものではなく、ていねいに石を積んで強度を保っている。
耐用年数は60年だったが、2006年に補強工事を行い、現在も使い続けている。
内部に設置された導水管には「明治47年」の刻印が残り、高い湿度のなかで、著しく劣化が進んでいる。
佐世保市水道局の寺松正悟課長補佐は「100年以上経っている。相当に腐食が進んでいる状況」と語る。
佐世保の水道設備は、旧海軍が鎮守府を置いた明治時代から発展した。
当時、村だった佐世保は市に格上げされ、全国で10番目にダムや水道管が整備された。
しかし歴史が古い分、耐用年数を超えた設備が多く、破損が相次いでいる。
水道管の多くは1960年代から80年代にかけて設置され、2025年度は漏水が原因の断水が8件起きた。耐用年数を超えた水道管は現在3割程度だが、20年後には8割になる見通しだ。
高台の配水池は全国最多規模の263カ所
大幅な値上げの背景には、佐世保市特有の地形的な事情もある。
山が多く高台に家が立ち並ぶ佐世保では、高台に水をためて供給する必要がある。
高台に水を蓄える配水池は263カ所あり、同じ人口規模の都市と比べると全国最多だ。水を送るポンプの数は295カ所と多く、他の自治体より水道設備の維持に費用がかかる。
さらに、水不足も収益悪化の原因となっている。
約50年で節水の呼びかけは19回、給水制限は3回あった。1994年には給水制限が9カ月間にもわたり、2026年2月も渇水対策本部が設置されるなど、佐世保の水事情は決して恵まれていない。
老朽化したダムの運用を止めて修繕することができない状況が続いている。
加えて、節水を促す料金体系の設定も収入の減少に影響している。
水道局の東隆一郎局長は「市民の半分が使用水量が低い料金体系での支払いに該当している」と説明する。
1484円が1892円に、家計直撃
設備の改修は水道料金の収益でまかなわれるが、人口はこの14年で約3万2000人減り、収益も約4億6000万円減少した。
一方で物価高により改修費用は上がり、2026年度は赤字に転落する見込みだ。
そこで水道局は2026年4月、16年ぶりの値上げに踏み切った。
これまで水10トンの料金は1484円だったが、4月から260円値上げされた。
値上げは3年間段階的に行われ、2028年には1892円になる。
市民からは「物価高で生活費を抑えている。一番必要な物が上がるとなったら家計的にも痛い」と不満の声も上がっている。
石木ダム完成が水道の救いになるか
水道局は、東彼・川棚町で県と佐世保市が建設を進める石木ダムが完成すれば、水道の使用量を増やし収益を上げることができると説明する。
石木ダムは計画当時、1979年度に完成する予定だったが、反対運動が続き工期は10回延期されている。2032年度の完成を目指しているが、現在も13世帯が住んでいる。
建設予定地に住む人は「50年間ダムなしで住んでいる。そうなら今もいらないということを言いたい」と訴える。
専門家からも懸念の声が上がっている。
法政大学の伊藤達也名誉教授は「大規模なダムを作れば費用負担が増す。水道料金はますます上がらなければいけなくなる」と指摘する。
水源の不足は渇水のリスクを高め、市全体の財政にも影響しかねないが、人口減少や物価高が進むなかでのダム建設も財政を圧迫する。複雑な事情が絡んだ佐世保の水道事業は、慎重な判断が求められる。
(テレビ長崎)

