中東情勢の緊迫化が、岩手県内の企業にも深刻な影響を広げている。原油由来の原料「ナフサ」の価格高騰や供給の遅延により、製造業では値上げを余儀なくされ、建設関連業では資材の確保が難しい状況となっている。経営を直撃する影響に現場では危機感と不安が強まっている。
発泡スチロール原料高騰
遠く離れた中東の緊張は、岩手県花巻市の工場にも確実に及んでいる。
花巻市太田の「花巻化成」は、リンゴや魚を入れる箱など約300種類の発泡スチロール製品を製造する会社で、創業36年、月に約55トンを生産している。
しかし今、その経営を直撃しているのが原料と燃料の高騰である。
発泡スチロールは、原料となるビーズを機械に取り込み蒸気で膨らませて作る。
そのビーズには原油由来の「ナフサ」が使われているが、中東情勢の緊迫化に伴い価格が高騰している。
花巻化成によると、ビーズのメーカーではロシアによるウクライナ侵攻以降、その価格を引き上げていたが、中東情勢を受けて2026年4月にはそれまでの価格からさらに30%ほど値上げされた。
これに伴い、花巻化成でも5月に製品価格を30%引き上げる苦渋の決断に踏み切った。
また工場の稼働に欠かせない重油も上昇し、3月中旬と比べて約1.6倍に。ひと月の燃料コストは約300万円増加し、経営に重くのしかかっている。
小川正常務は「非常に厳しい。最悪の場合は工場を止めることも考えなければならない」と危機感を隠さない。
さらに懸念されるのが、発泡スチロールから段ボールへの切り替えが進むいわゆる「脱・発泡スチロール」の動きである。
原料のビーズのメーカーからはさらなる値上げの方針も示されており、加えて他の資材も入手が難しくなっている。
現状を打開できる見通しは立っておらず、同社はコスト削減などを図っていくとしている。
塗装業で資材不足深刻
中東情勢の影響は、塗装業関連の現場にも及んでいる。
盛岡市の「吉田塗装工業」では、塗装に欠かせないシンナーや塗料の確保が難しくなっている。

原油由来のナフサが使われているシンナーは、塗料の希釈や塗装道具の洗浄に使う必需品である。
しかし2026年4月から仕入れ価格が上昇し、わずか3カ月ほどの間に2倍近くにはね上がった。
加えて深刻なのが供給の遅れである。
以前は注文から2日程度で届いていたが、現在は1カ月以上かかり、少量ずつしか入荷しない状況となっている。
八木浩明常務は「問い合わせても、いつ入荷するか分からない状態」と話し、不安をにじませる。
またシンナーだけでなく塗料も手に入りにくくなっており、種類によってはメーカーが出荷を停止するケースも出ている。
供給不安続く現場
こうした中、吉田塗装工業では資材を早めに発注し、現時点で約1カ月先までの分は確保している。
しかしその先の見通しは立っていない。
現場では、はけやローラーの洗浄に使うシンナーを再利用するなど、節約を余儀なくされている。
八木常務は「このままナフサ不足が続けば、経営が成り立たない可能性もある」としながらも、「目の前の仕事を確実にこなしていくしかない」と話す。
政府はナフサについて「供給量は十分だが流通で目詰まりが起きている」との見解を示しているが、現場では安定的な確保の見通しが立たない状況に不安を募らせている。
