栃木県上三川町の住宅で1人の女性が殺害された事件。強盗殺人容疑で逮捕されたのは、指示役とみられる20代の夫婦と、実行役とみられる16歳の男子高校生4人でした。
今回、実行役が高校生ばかりだった背景には、「勧誘方法の変化」があるといいます。
「newsランナー」は“闇バイト”の元リクルーターに独自に接触。「勧誘する時点では、必ず優しく話す」一方で、様々な個人情報を求めて「逃げられないように」する実態を明かしました。
若者を犯罪へと引き込む「闇バイト」の実態を徹底取材しました。
■「口コミ」で広がる勧誘 なぜ高校生ばかりが集まったのか
逮捕された高校生の1人は、「同じ学年の人物が仲間にいて、誘われて入った」と供述しているといいます。
この事件には、匿名・流動型犯罪グループ“トクリュウ”が関与したとみられています。今回、なぜ実行役が高校生ばかりだったのでしょうか。
闇バイトに詳しいジャーナリストの石原行雄氏は、その背景に「勧誘方法の変化」があると指摘します。
【ジャーナリスト 石原行雄氏】「仮装身分捜査がスタートして、裏社会関連の人間も非常にSNS上で“闇バイト”募集をすることに警戒をしている。最近は『口コミ』という手口で非常に分厚く集めるようになってきている」
「仮装身分捜査」とは、いわゆる「おとり捜査」のことです。捜査員が身分を偽って闇バイトに応募し、犯罪グループに接触して検挙する手法で、去年から警察が強化しています。
■複数の実行役をすべてSNSで募集すると摘発リスクが高まる
複数の実行役をすべてSNSで募集すると摘発リスクが高まるため、犯罪グループは実行役を1人見つけると、その人物の仲間内に声をかけさせて人数を集めるようになりました。
「実行役の1人が高校生なら、ほかの実行役も高校生が集まりやすい」という構図が生まれるということです。
さらに石原氏は、高校生がターゲットにされやすい理由についてこう語ります。
【ジャーナリスト 石原行雄氏】「“悪の適材適所”なんですけれど、特殊詐欺には使いにくいけれど、強盗であれば体力もあるし、想像力が行き渡らなくて、『年寄りを殴れ』と言われて平気で殴れる。非常に素直に自分たちの言う通りに動いて、『操り人形』として使いやすい」
■「勧誘する時点では、必ず優しく話す」元リクルーターが語る勧誘の手口
取材班が大阪・ミナミで若者たちに話を聞くと、闇バイトが身近に存在する現実が浮かび上がりました。
10代の1人はこう話します。「自分の連れも闇バイト応募して捕まってますね。『日当3万で身分証だけ持ってきてくれたらいい』って言われて、実際はタタキ(強盗)やったっていう話ですね」。
別の10代は「友達から誘われるとかよくありますね」と話しました。
「newsランナー」が独自に接触したのは、元リクルーターの「ユウタロ」さん(30代)です。
特殊詐欺の実行役となる「受け子」や「出し子」を勧誘し、SNSやネットの掲示板を通じて数百人を誘い込んでいたといいます。5年前に逮捕されて服役。現在は、闇バイトの危険性を発信する活動をしています。
【闇バイトの元リクルーター“ユウタロ”さん】「『1日100万稼げる』だとか、『10万稼げる』だといった、嘘の文章を(SNSに)書くんですけども。お金に困って、あしたのご飯、きょうのご飯も食べられないような方が来て、何もできなくなっているような心理状態になっている方が、闇バイトに応募してくる」
■闇バイトに誘い込む“巧妙な手口”とは
取材班に明かしたのは、闇バイトに誘い込む“巧妙な手口”でした。
【闇バイトの元リクルーター“ユウタロ”さん】「勧誘する時点では、必ず優しく話すんですよ。詐欺組織の人も人間なんだと親近感を湧かして、『こんなに優しい人だったら、危ない仕事だけどやってもいいのかな』と思わせる演出もしていました」
一方で、応募者を逃がさないための“ある要求”も…
【闇バイトの元リクルーター“ユウタロ”さん】「当たり前のように個人情報は求めていました。名前、住所、電話番号、仕事している方は勤務先の電話番号と会社名。人によっては、家の玄関入ってから部屋に入るまでの動画を送らせました。逃げられないように、逃げたとしても追っ手が来るんじゃないかって思わせるようにしていました」
■「家族を殺すぞ」脅しによる支配
今回の栃木県の事件では、実行役とみられる高校生の一部が、指示役とみられる夫婦から「家族や友達を殺すと脅された」と供述していることが分かっています。
“ユウタロ”さんがいた犯罪グループでも、指示役が応募者を脅すことがあったといいます。
【闇バイトの元リクルーター“ユウタロ”さん】「『実家の方に連絡するぞ』だとか、『今すぐお前逮捕されてもいいのか』とか、『逮捕させるぞ』といった脅しになりますね」
一度でも加担してしまえば、証拠を握られた状態で脅されるという構造が待っているのです。
■「行方不明になった」 海外の闇バイトに関与した男性の告白
さらに取材を進めると、海外での闇バイトに関与していたと話す男性に接触することができました。
男性は4年前、「遊ぶ金欲しさ」から3カ月の期限付きで中東に滞在し、現地にいる日本人女性から現金を脅し取るなどの犯罪を行っていました。
きっかけは知人からの勧誘で、現地で共に活動したグループのメンバーは「いずれも初対面」だったといいます。
【海外での闇バイトに関与(40代)】「多い時で2000万円、1回でもらってましたね。相手に悪いなという感覚もその時はなかったんですよ。ただその入ってきたお金がでかいので、そっちのうれしさの方が勝った」
(Q.やめたくても抜けられない?)
【海外での闇バイトに関与(40代)】「それはちょっと僕は恐怖心はありましたね。3カ月と(期限が)決められてるから、3カ月はいないといけないなと。ある子がそれ(闇バイトの内容)をしゃべってしまったんですよ、外で。その子がいなくなったという話は聞きました。行方不明になったみたいな」
帰国後、奈良県にある更生施設「ワンネス財団」で再犯防止プログラムを受けた男性は、当時をこう振り返ります。
【海外での闇バイトに関与(40代)】「後悔ですね。今考えたら、本当によくないこと」
そして、当時の自分に声をかけるとしたら何と言うか?という問いに、「『やめとけ』って言いますね」と答えました
実際、去年にはミャンマーで特殊詐欺に加担させられていたとみられる日本人の高校生が保護されるなど、海外での闇バイトに勧誘されるケースも相次いでいます。
■「1回で実刑になる」弁護士が警告する法的な現実
番組に出演した元テレビ朝日アナウンサーの西脇亨輔弁護士は、法的な観点から警告を発します。
【西脇亨輔弁護士】「強盗殺人罪ということで言えば、成人の場合だと死刑か無期拘禁刑しかない。仮に少年の場合であっても、無期拘禁刑があり得る重罪なんです」
ここ2~3年は“闇バイト”で特殊詐欺に関わってしまった若者が多くなっているといいます。
【西脇亨輔弁護士】「面会に行ったときに、第一声で言います。『これまで犯罪を犯したことがなくても、前科がなくても1発で実刑だからね』って。ほぼそうなんです。非常に大きな割合で、1回目の犯罪であっても刑務所に行くことが非常に多い」
さらに、闇バイトの構造的な悪質さについても指摘します。
【西脇亨輔弁護士】「やっていくうちにどんどん犯罪がエスカレートしていく。一方で報酬は途中から脅されて、“タダ働き”というケースも非常に多い」
少年院在院者を対象にした調査で、闇バイトを知ったきっかけについては、友人・先輩などの紹介が8割以上を占めるという傾向もあります。
軽い気持ちで応募したとしても、大変大きな代償を払うということになります。
(関西テレビ「newsランナー」2026年5月22日放送)