中東情勢の緊迫化が、身近な店舗にも打撃を与えている。石油製品「ナフサ」の供給不安を背景に、食品トレーやラップ、プラスチック袋といった包装資材が軒並み値上がりし、入荷も不安定になっているのだ。スーパーでは弁当をラップで包むのをやめ輪ゴムに切り替え、パン屋では「袋を持参してもらうことも考えなければ」という声まで上がっている。
ラップは3割、トレーは2〜3割の値上がり見通し
宮城県利府町にある「生鮮市場ヤマトク」は、新鮮な食材に加え、手作りの総菜や弁当を主力商品とする地域密着型のスーパー。日々の営業に欠かせないのが、食品トレーやラップなどの包装資材だ。
生鮮市場ヤマトク 小幡きよみ専務:
価格が一番上がっているのはラップ。3割ぐらい値段が上がる予定。値段が上がらないものがないぐらい。
店の見通しによれば、ラップは約3割、食品トレーは2割から3割の値上がりが予想される。ラベル類も1割高くなるという。
これらの値上がりの原因は、ラップや袋類の原料となる石油製品「ナフサ」の供給不安にある。中東情勢の緊迫化によって原材料の調達が不安定になり、その影響が小売店にまで波及している。
弁当はラップから輪ゴムへ

値上がりに直面したヤマトクがとった対応策のひとつが、弁当の包み方の変更だ。5月から、これまでラップで包んでいた弁当を輪ゴムでとめる形に切り替えた。
生鮮市場ヤマトク 小幡きよみ専務:
弁当の値段を上げないためにも、そういう工夫、努力が必要と思う。
さらに深刻なのが、価格の問題だけではないことだ。注文すれば翌週には届いていたレジ袋が、4月20日ごろに発注したにもかかわらず、いまだに入荷していない状況が続いており、在庫でやりくりしている状態が続いている。次にいつ入荷できるかも不透明だという。
それでも、商品への価格転嫁は極力避けたいという姿勢は変わらない。
生鮮市場ヤマトク 小幡きよみ専務:
原材料が上がって商品が値上げになるなら仕方がない。食べられないもので値段を上げるのは、お客さまに対して申し訳ない気持ち。今のところは値段を上げずに頑張ろうと思う。
1日3000枚の袋、30%値上がりの予告が続々と
ナフサ供給不安の影響は、町のパン屋にも及んでいる。
仙台市内でベーカリー、パティスリーとして営業する「石井屋」は、サンドイッチや総菜パンの品ぞろえが豊富で、個包装の商品が多い。1日に使用するプラスチック製包装袋は約3000枚にのぼる。
包装資材を扱う業者からは、4月上旬にはすでに値上げの連絡が届いていた。
石井屋 伊藤隆紀取締役:
どの袋もこれから30%ぐらい値上がりする。そもそも発注しようとしてもなかなか手に入らない状況。かなり厳しいというのが率直な意見。

包装袋にとどまらず、従業員が使う薄手のゴム手袋の価格が1.5倍以上に値上がりする可能性があり、すでに入手困難な状況が続いている。
こうした状況を受け、石井屋では衛生管理に細心の注意を払いつつも、製造スタッフのみが手袋を着用し、販売スタッフは着用しない対応をとっているという。食の安全と資材不足の間で、苦しい判断を迫られている実態が浮かび上がる。
卵やバターなどパン作りに欠かせない原材料がすでに高騰している中での包装資材の値上がりは、ダブルパンチとも言える状況だ。それでも、石井屋でも商品への価格転嫁は考えていないという。
石井屋 伊藤隆紀取締役:
手ごろな価格でおいしいものを提供したい。どう自分の店らしさを守っていくか。
「豆腐屋にボウルを持参するように」 異例の提案も視野?

現在のところ石井屋には包装資材の在庫があるものの、先行きが不透明で、不安を抱えている。
石井屋 伊藤隆紀取締役:
昔、豆腐屋さんにボウルを持って行ったように、何かしらパンを入れる袋を持ってきてもらって、パンを詰めることも考えなければいけないことがあるかもしれない。
昭和の時代を思い起こさせる「容器持参」という文化が、資材不足という形で現代に舞い戻ってくる可能性を示唆する言葉だ。
地域の食卓を守るための「戦い」は続く

中東情勢という遠い地での出来事が、スーパーやパン屋の店頭に確実に影響を及ぼしている。弁当の包み方を変え、手袋の使い方を工夫し、それでも価格を据え置こうと踏ん張る店主たちの姿は、地域の日常を守ろうとする静かな奮闘である。
在庫がいつ底をつくか、次の発注分がいつ届くか、先の見えない状況の中で、小規模店舗の「戦い」は続いている。
