遠く離れた中東の混乱が、鹿児島県のかつお節産地を直撃している。原油価格の高騰を受け、原料のカツオ・重油・包装材がそろって値上がりする「三重苦」の状況に陥り、指宿市山川の加工業者11社が一斉休業を決断。枕崎市でも半数を超える業者が連休期間中に休業する見通しとなった。
「急激な値上げ、資金負担になる」 現場に広がる苦境
枕崎市でかつお節を製造・販売する的場水産は、月に約25トンのかつお節を出荷している地元の主力業者だ。枕崎水産加工業協同組合の組合長も務める的場信也社長は、現在の状況をこう語る。
「まず鰹を仕入れないといけないので、その高騰が一番響きます。枯節だと半年以上かかります。今原料が高騰してもすぐ資金になるわけではない」
かつお節づくりは、カツオを仕入れてから製品として売り上げに変わるまでに長い時間がかかる。特に「枯節」は半年以上の熟成期間を要するため、仕入れコストが上がってもすぐに価格転嫁できず、その間の資金繰りが経営を直撃する。

原料・重油・包装材がそろって値上がり
的場水産の加工場では、3月と比べて状況が急変している。原料となるカツオの価格が3割以上、カツオを茹でる工程で欠かせない重油が2割以上、それぞれ値上がりした。さらに、石油由来の包装用パックも値上がりが激しく、コスト増は3つの方向から同時に押し寄せている。
「急激な値上げだと資金負担になりますね。経営上、値上げせざるを得ない。一度だけでなく2回3回の値上げも発生する」
的場社長のこの言葉が、現場の切迫した空気を如実に伝えている。

指宿・山川でも11社が一斉休業を決断
枕崎市に次ぐかつお節の生産地として知られる指宿市山川でも、状況は深刻だ。山川の水産加工業協同組合では、原価が利益を上回るとして、加盟する16社のうち11社が5月7日から3日間、一斉休業することを決めた。

原価が利益を超えるという事態は、動けば動くほど損をする構造を意味する。業者にとって休業は苦渋の選択であると同時に、経営を守るための現実的な判断でもある。
枕崎でも緊急理事会 補助措置を国・自治体に要請へ
山川の動きを受け、枕崎の組合でも4月24日午後4時から緊急の理事会が開かれ、対応が協議された。その結果、加盟するかつお節業者42社のうち、4月30日から5月9日までの連休期間中に休業する社が半数を超えることが報告された。
理事会ではさらに、今後、国や自治体に対して補助などの措置を求めるよう決議したという。
「この状況を打破していくためには、行政の力も借りながら製造できる状況を作りたい」と的場組合長は話す。

産地を守るために
枕崎・山川のかつお節は、全国に流通する鰹節文化を支える重要な産地だ。地元の食卓はもちろん、だしの文化を通じて全国の家庭や飲食店にもつながっている。その現場が今、中東情勢という遠い出来事の余波で足を止めようとしている。
原油高という構造的な問題に、産地単独で立ち向かうには限界がある。業者たちが求める行政の支援がどこまで実現するか、産地の行方を左右する局面を迎えている。
(動画で見る▶かつお節「三重苦」 原油高で加工業者が休業相次ぐ 枕崎・指宿)
