中東情勢の先行きが見通せない中、私たちの日常生活への影響が現実味を帯びてきた。原油価格の高騰は「農業」「観光」という鹿児島の主要産業を直撃し始めており、九州経済研究所の福留一郎部長は「長期化リスクも考えないといけない局面」と警戒感を示す。一方で、不安からくるパニック的な行動は「起こることはない」と断言し、冷静な対応を呼びかけている。
「トイレットペーパー騒ぎは起きない」 専門家が冷静な対応を要請
アメリカのトランプ大統領が、イランへの船舶の出入りを阻止する封鎖措置を開始したと発表した4月14日も、混迷が続く中東情勢。特に原油の供給不安が、私たちの生活のさまざまな面に影響を及ぼし始めている。
九州経済研究所の福留一郎部長は、まず県民に対して落ち着いた対応を求める。
「供給不安といっても実際に供給が止まったわけではないし、備蓄も十分ありますから、昭和のオイルショックのときはトイレットペーパー騒ぎがあったんですけど、ああいった状況は今のところ起こることはないと断言できる。不安からパニック的なことになったりとかは控えた方がいい」

昭和のオイルショック当時に見られたような買い占め騒動は、現時点では心配無用だという。しかし、それは問題がないということを意味するわけではない。
農業に「トリプルパンチ」 燃料・飼料・肥料が同時に直撃
原油高の波は、鹿児島の基幹産業である農業にも静かに押し寄せている。
「農業においては燃料高、畜産県なので飼料高、肥料高、こういったところがトリプルパンチ的に1次産業、農業に水産業含めて、影響が徐々に徐々に出始めているかなと」

燃料・飼料・肥料という三つのコスト要因が同時に上昇するこの状況は、農家や水産業者にとって深刻だ。しかも、問題はコストが上がることだけにとどまらない。
「コストが今からどんどん上がっていくとの予測の中、価格転嫁できるかというと、すぐに上げるわけにもいかない。この負担分はじわじわなかなか効いてくる」
価格をすぐに消費者へ転嫁できない構造的な難しさが、生産者側の負担をじわじわと積み重ねていく。特に鹿児島は畜産が盛んな地域だけに、飼料高の影響は他の地域よりも色濃く出る可能性がある。
大型連休を前に観光業にも暗雲 「観光県にとっては痛手」
4月下旬に控えた大型連休を前に、鹿児島のもう一つの主要産業である観光業への影響も懸念されている。
「円安で海外にいけないので、国内回帰でお客さんが鹿児島に来てくれたらいいが、燃料高、ガソリン高が続くと近場で済ませよう、日帰りで済ませようと、ならざるを得ない。観光県にとっては痛手」
本来であれば、円安による「国内回帰」は鹿児島への追い風になりうる。しかし、ガソリン高が続けば、遠距離の旅行を敬遠する動きが広がりかねない。観光客が「近場・日帰り」にとどまれば、宿泊や長期滞在による消費効果は薄れてしまう。
さらに、イベント分野にも影響が及ぶ見通しだ。
「イベントでは主催者側が経費の増加を踏まえて、延期、中止という動きが増えてくると、観光の足を引っ張ることになる。そこは警戒する部分」

経費増大によるイベントの中止や延期が連鎖すれば、観光客を呼び込む機会そのものが失われることになる。
「長期化リスクも考えないといけない局面」
当初、短期的な混乱で収束することへの期待もあった。しかし、状況は日々変化し、楽観できない段階に入りつつある。
「イラン情勢、最初は短期的なショックで終わってほしいと思っていたが、この局面になると先行きが見通せないので、長期化リスクも考えないといけない局面」
中東情勢が長期化すれば、農業・観光・日々の生活コストへの影響はさらに深刻化する可能性がある。私たちの暮らしへの影響が避けられない今、一刻も早い事態の収束が切に望まれる。
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