奇跡の一本松に、復興途中の千枚田…福井市内で開催されている巡回写真展に並ぶのは、東日本大震災や熊本地震、そして能登半島地震の被災地の風景を捉えた48点の写真。
これらの作品はすべて、一人のアマチュア写真家によって撮影された。彼のファインダーが捉え続けてきたのは、被災地のありのままの姿と、そこから立ち上がろうとする復興への確かな光だった。
15年にわたり被災地を撮り続ける写真家
岩手県在住のアマチュア写真家、新井栄二さんは、15年にわたって被災地の写真を撮り続けてきた。
その活動の原点は、東日本大震災の発生から半年が経過した2011年9月にさかのぼる。
当時、長野県に住んでいた新井さんは、津波に耐えて一本だけ残った岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」を撮るため、車を走らせた。
そして目にした松の姿に、心揺さぶられた新井さん。
「よく枯れないで生き残っていたな、とその生命力に感動しました」
写真家として、その生命力あふれる姿を美しく記録したい。その思いが、新井さんを被災地へと通わせる原動力となった。
カメラが捉えた復興の過程
「奇跡の一本松」との出会い以来、新井さんは岩手県を拠点に全国の被災地へと足を運び、5000枚以上の写真を撮りためてきた。
そしてカメラは、被災地が徐々に復興していく過程も克明に記録している。
岩手県陸前高田市の高台から撮られたサクラの木の写真。津波が到達したその場所は当初、更地となっていた。しかし、同じ場所から定期的に撮られた写真からは、時が経つにつれて徐々に復興工事が進む様子が読み取れる。更地だった場所には、いまでは多くの家が建ち並んでいる。
時が経つとともに被災地を撮る写真家が減っていく中、新井さんは「そのときにしか撮れない風景」を撮り続けている。
前向きな気持ちを届けたい
新井さんの活動は現在も続いている。展示されている作品の中には、展示会の直前、4月16日に石川県輪島市で撮影したばかりの白米千枚田を捉えた一枚もある。ひび割れが残るものの一部でコメ作りも再開していて、復興に向けた人々の営みが感じ取れる。
この写真展に込めた思いを、新井さんは次のように語る。
「復興が進んでいるんだと感じられる作品を多く用意しているので、北陸の方々にも前向きな気持ちになってもらえたら」

この巡回写真展は、26日まで福井県済生会病院ピアノホールで開かれている。
