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メラニア夫人の声明は何のため?イランとエプスタイン問題“二重の危機”が同時に可視化される事態に|FNNプライムオンライン
木村 太郎のNon Fake News

メラニア夫人の声明は何のため?イランとエプスタイン問題“二重の危機”が同時に可視化される事態に

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「Barbra Streisand effect(バーブラ・ストライサンド効果)」という英語がある。アカデミー賞やエミー賞、トニー賞などを総なめにした歌手のバーブラ・ストライサンドさんが、カリフォルニア州の海岸侵食の記録を残すために空中撮影された写真に、自宅が写っていることが「プライバシーの侵害だ」として公開差し止めの訴訟を起こしたが、それをきっかけに写真がネット上に拡散して逆効果を生んでしまったことをいうもので、「言わなければよかったのに」という意味で使われているらしい。

極めて異例で「唐突」な声明

「らしい」というのも、私がこの言葉を知ったのはごく最近のことで、トランプ大統領夫人のメラニアさんが9日、異例の声明を発表したことについて報道した英ガーディアン紙電子版の記事にこの言葉が使われていたからだ。

メラニア夫人はホワイトハウスで異例の声明を発表し、エプスタイン氏との関係を否定(4月9日)
メラニア夫人はホワイトハウスで異例の声明を発表し、エプスタイン氏との関係を否定(4月9日)
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「『バーブラ・ストライサンド効果』という言葉を聞いたことがあるでしょう?これは、情報を検閲しようとした結果、かえってその情報への注目を集めてしまうという現象のことです。
近いうちに『メラニア・トランプ効果』という言葉が定着するかもしれません。これは、死亡した小児性愛者(ジェフリー・エプスタイン氏)との関係はなかったと表明し、その件についてこれ以上憶測を止めてほしいと訴えるためのサプライズ記者会見を開いた途端、人々がその件について憶測し始めた現象を指します」

この声明は、夫であるドナルド・トランプ大統領がイランとの脆弱な停戦をめぐる「失策」や戦争拡大の可能性に直面し、政治的に極めて脆弱な局面にあったタイミングで発せられた。

 また当時、彼女自身に関する新たな疑惑が広く報じられていたわけではなく、この発言は極めて異例で「唐突」と受け止められた。そのため、なぜこのタイミングで発言したのかについて多くの憶測を呼んだ。

その結果、この声明により、中東危機に集中していた報道の焦点が再びエプスタイン問題へと引き戻される結果となったのは確かだ。

「なぜ今?」メディアの分析は

トランプ氏に極めて厳しいニュースサイト「デイリー・ビースト」は次のように分析した。

「なぜファーストレディーが、自ら進んで夫にとって最悪のスキャンダルを蒸し返すのか。常識的には理解しがたいが、それは彼がいかに追い詰められているかを示しているのかもしれない。
ドナルド・トランプは、悪名高い性的人身売買業者と深く結びついていると見られることが、戦争を起こしてでも目をそらしたいほど深刻である一方で、『ジェノサイド的な狂人』と見なされることほどは悪くない、と判断したように見える。
そのため彼は、この話題を以前のスキャンダルへと引き戻す目的で、妻にホワイトハウスで異例の声明を出させた――少なくとも、メラニア・トランプの登場後には、そのような解釈が浮上した」

メラニア夫人の声明をめぐりメディアは様々な見方を示している
メラニア夫人の声明をめぐりメディアは様々な見方を示している

一方、ニューヨーク・タイムズ紙の論説は、より慎重である。メラニアの行動は「不可解」であり、ホワイトハウス内部ですら事前に把握されていなかった可能性を指摘する。動機として浮かび上がるのは、あくまで個人的な名誉回復への焦りであり、緻密な政治戦略の影は見えにくい、という立場だ。

イランとエプスタイン問題を同時に際立たせる構図に

しかし結果だけを見れば、明らかである。メディアの関心は再びエプスタイン問題へと引き戻され、過去の写真やメールが再び拡散された。イラン情勢は依然として重大であり続けたが、少なくとも「唯一の焦点」ではなくなった。

トランプ氏とメラニア夫人、エプスタイン氏と共犯者のマックスウェル受刑者
トランプ氏とメラニア夫人、エプスタイン氏と共犯者のマックスウェル受刑者

ここに、この問題の本質がある。それは「話題を逸らしたかどうか」ではなく、「視線が分裂した」という事実である。しかも皮肉なことに、その分裂は政権にとって必ずしも有利には働いていない。エプスタイン問題の再燃は、むしろ過去の影を濃くし、イラン問題における混乱と並列して語られる構図を生んだ。いわば「二重の危機」が同時に可視化されたのである。

外交の失敗を内政で覆い隠す――そうした試みは歴史上繰り返されてきた。しかし今回のケースは、むしろ逆である。内政上の一手が、外交の混乱と結びつき、結果として双方を同時に際立たせる構図となった。

イランから目を背けさせたのか。それとも、目を逸らそうとして失敗したのか。いずれにせよ、アメリカの視線は確実に二つに割れた。そしてその分裂こそが、現在の政権が置かれている不安定さを象徴しているようだ。
(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。

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