京都・南丹市で3月行方不明となった小学生が遺体で見つかった事件。16日に父親の安達優季容疑者(37)が逮捕され急展開を迎えた。あの日親子の間に何があったのか?
「Mr.サンデー」が新たに入手した行方不明当日の映像と証言から、いまだに残る謎に迫る。
逮捕後も続けられる大規模捜査
容疑者逮捕から2日が経った18日も大規模な捜査が行われていた。

「Mr.サンデー」ディレクター:(18日)
こちらの道、安達結希くんの自宅へとつながる道なんですけれども、規制線が張られ、大がかりな捜索が始まっています。

そこは、自宅からわずか2.5㎞の距離にある公衆トイレだった。警察は、遺体遺棄との関連について今も捜査を進めている。
急転直下のように見えた容疑者逮捕…

空撮リポート:(15日)
自宅の扉が開きました 警察官が自宅の中に入っていきます。
捜査員が自宅に入って、約30分後…

記者リポート:
安達結希くんの家から、父親とみられる男が警察に連れられて出てきました。
マスクをして、うつむきながら捜査車両に乗り込んだ安達優季容疑者。

「首を絞めて殺した」と供述する父親。なぜ最悪の結末は、起きてしまったのか?
同級生らが語る容疑者の生い立ち
その生い立ちは、私たちの想像とあまりにかけ離れていた。

かつての同級生らが語る、容疑者の少年時代は…

安達容疑者の中学時代の同級生:
(容疑者が暮らしていた)あの辺、ちょっとやんちゃな人が多い地区なんですけど、その中でもおとなしい方やった。みんなと一番仲良くて、誰からも好かれてて。あいつ(安達容疑者)のことを悪く言う奴はおらんかったし。

安達容疑者の幼なじみの家族:
虫一匹殺されへんような子や。よくここ来てて、自由に遊びに来てて。どっちかっていうと、うちの息子が引っ張っていった。引っ張られてついてきた。普通におとなしい感じの子や。
安達容疑者を幼少期から知る人:
だから別に特に変わった印象はないけど、もうほんまにごくごく普通の子。挨拶もしたらできるし、向こうから「おばちゃーん」って言って声かけてくれたりとか。
誰もが証言する、目立つことも、争うこともなくただ、誰からも愛される「普通」の少年。だからこそ…

安達容疑者の中学時代の同級生:
(逮捕されたと聞き)だいぶ落ち込みました、まだ落ち込んでるけど。だから、なんかできひんかなと思ってるんですよ。ちょっとこう、差し入れとかもできるからって聞いたし。同級生同士で、なんか相手にできることないかなって、ちょっと僕は思ってるぐらい。
出来ることなら、差し入れをしてやりたいと話す同級生も。
「おばあちゃん子」「家族との接し方が苦手」
しかし、その内面には幼い頃から抱えてきた、深く濃い「孤独の陰」を感じていたと語る人もいる。
安達容疑者の知人:
「お父さんとかお母さんに確か育てられてない」ってことを聞いていて、おばあちゃん子やった。「家族との接し方がちょっと苦手」というか、「不器用や」みたいなことを言ってて。

両親ではなく、祖母に育てられた少年時代。少年が誰より慕っていたのは祖母だったという。
安達容疑者を幼少期から知る人:
おばあちゃんが、ちょっと具合悪くて、買い物に行けないから 中学校の部活を自分だけ早く切り上げて帰ったっていうエピソードはあった。

祖母もまた容疑者へ、愛情を注ぎ続けたという。
安達容疑者を幼少期から知る人:
市営住宅の下に座って「おばあちゃん、こんな寒い日に風が強いのに、薄着でどうしてたの?こんなとこ座ってたらあかんやん」って言ったら「もうちょっとしたら優季が来るって電話があったから、ここで待ってんねん」って言って。おばあちゃんも優季くんに会いたいから寂しいから待ってたと思うねんけどね。いい子やったのよ、ほんまに。

だが、その優しさは成長とともに、ある種の「歪み」を帯びていく。

誰もが「優しかった」と語る安達容疑者の人生を辿ると就職、結婚、そして、子どもを設けてからもごく、ありふれた人生を歩んでいたように見える。
1度目の結婚「良き父」の印象だったが…
周囲の目に映っていたのも意外なほどの、「良き父」としての横顔だった。

安達容疑者の知人:
週末は子供と、ここの公園でサッカーして遊んだりとか、よく見かけてたし(家族)3人で、この道よく歩いてご飯食べに行ったりしてる姿もよく見てた。ただただ、本当に子煩悩なお父さんっていう印象ですね。

そう語るのは安達容疑者が1度目の結婚をした時の夫婦をよく知っていたという知人だ。
子煩悩に映ったという容疑者。だが、その愛情は、一歩 外の世界へ出ると…
安達容疑者の知人:
向こうの方(安達容疑者の実家)の方には全然行かないしとか言って。お盆とかお正月とか奥さんの方(の実家)に行ってもみんなの会話にはなかなか入れないような、ちょっと一人孤立してるような部分あると(妻が)言って。「家族への接し方がちょっと苦手というか、不器用や」みたいなことを言っていた。
ーー家族だんらんが苦手?
安達容疑者の知人:
そうそう 慣れてないから、関わり方が多分分からないところがあるのかなっていう感じ。

自分の子は愛せるが、その外にある、「妻の実家」というコミュニティには、どうしても馴染めなかったという安達容疑者。
離婚…結希くんの母と出会い
そんな孤独な男は、やがて妻と離婚し子どもを手放すと、職場で結希くんの母と出会い付き合い始めることになる。

その頃、結希くんと母親が暮らしていた南丹市内のアパートには容疑者とみられる男が入り浸っていたという。
ーーどのくらい頻繁で男は出入りしていた?
結希くんと母親を知る人:
週3ぐらいですかね…正直静かな方だったので。こういうことをするようには見えなかったので、びっくりしています。
ーー男は車で来ていたと思うが?
結希くんと母親を知る人:
そうですね 黒色の車でした。カローラだったと思います。

それは17日、警察が差し押さえた安達容疑者が利用していたと思われる車と一致する。
アパート火災が転機に?
ところが、こうして始まったアパートでの生活を去年3月、不幸が襲うこととなる。
ーー(結希くんと母親が)住んでいたのは?
結希くんと母親を知る人:
2階の角部屋です。
結希くん親子が暮らしていた2階の角部屋。そこを火元に部屋を焼き尽くす火事が起きたのだ。

結希くんと母親を知る人:
夜中の2時ぐらいですかピンポン鳴って「火事!」って(結希くん親子は)2人とも泣いてたんで。お母さんは結希くんに謝ってた『ごめんね』って。
ーー何に謝ってたんですか?
結希くんと母親を知る人:
それは分からない。

3人が、結希くんの母の実家に身を寄せたのはその火事がきっかけだったとされる。
再婚…しかし妻の親族が大反対
その後、再婚することになった2人だが、その門出を妻の家族や親族は、強く反対していたという。
親子を知る人:
大反対だったみたい。

ーー誰が?
親子を知る人:
周り、親戚。男性自体がみんな嫌だったんじゃないか。
ーーなぜ押し切って結婚できた?
親子を知る人:
お母さんがやっぱり好きだったんだと思う。
ここでも、出てくる話は妻の親族との、ぎくしゃくした関係ばかり。
さらには…
親子を知る人:
運転もすごく荒いって聞いた。あの近辺では車を運転するでしょ、田舎なので。気性の荒い人という印象。
祝福されない新生活。以前の、誰からも好かれる性格はどこへ行ってしまったのか?
さらには、養子縁組を経て父親となった容疑者に向ける結希くんの視線もまた冷ややかだったようだ。
結希くんの同級生の保護者:
(結希くんが)父親のことを「嫌い」と言うのを(子供が)耳にした。
友人に、「お父さんの話はしたくない」と語っていたという結希くん。子供の純粋な本能が、新しい父となる人の本性を静かに見抜いていたのだろうか。
私たちの取材が進むにつれ「優しい」「子煩悩」などの容疑者の実像は霧の中に消えていく。
「お手製チラシ」での不審点
その一つが、息子を探す「お手製のチラシ」を配って歩いた時だった。
安達容疑者が訪れた飲食店員A:
なんかもう何事もないというか、だいぶ冷静な感じで。「あの、この子探してますので、なんか手がかりがあったら」ぐらいの感覚だけでした。冷静やったんで、支援団体の方かなって思うぐらい。
ーー焦った様子とかもなく?
安達容疑者が訪れた飲食店員A:
何もないですね。
安達容疑者が訪れた飲食店員B:
まさかお父さんと思ってない。
ーー切羽詰まってる感じだった?
安達容疑者が訪れた飲食店員C:
いやー、そんな(父親なら)普通もっと慌てるもんやのにと思って、それもなかったし。

さらに、配ったチラシ自体にも不自然さがあると語るのは、古巣である京都府警の捜査一課長を勤めていた樋口文和氏だ。
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
本当に、早く見つけてほしい、情報提供してほしいとなれば、(一番目立つ)リュックを一番最初にここに出してもいい。実物がないからここに出せなかったら、例えばインターネットで服は出している。友達にリュックを借りて、ここに載せる。こういったことで、本気度がやはりないような気はしますよね。探してほしいという本気度。
とは言え、「被害者の父」を捜査する警察は薄氷を踏むような思いだったろうと言う。

元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
被害者の家族ということで任意同行を求めるだけの警察の証拠資料がない限りはなかなか踏み切れない。よほどの捜査指揮官も「引っ張ってこい」という勇気は出せないと思う。それを3週間という短いスパンでこういうことができたということは、警察の熱意と執着ですね。
発見現場をつなぐルート上の映像入手
「通学リュック」と「靴」が発見された別々の場所。そして、18日もまた遺体を一時置いていたのではないかと大規模に捜索された自宅から2.5㎞の公衆トイレ。

謎と違和感に包まれた、それぞれの現場も今となって見れば、実は、容疑者の自宅から職場へと向かう1本のルート上を沿うように位置していることが分かる。

そのルート上にある2つの防犯カメラ映像を確認すると…

結希くんが行方不明になる数日前これらが捉えていた車が容疑者が利用していた車だとすれば、そのリズムは規則正しい。

行方不明の6日前、3月17日は一つ目のカメラに映った時間が午前7時45分。二つ目のカメラには約3分後の7時48分に映っている。

その「3分」という間隔は別の日(3月18日)を調べても、ほぼ同じだった。

では、結希くんが行方不明となった3月23日はどうだったのか?
実は、一つ目のカメラに映った黒い車は、二つ目のカメラには、その4分後も、5分後も現れない。それは、何を意味するのか?
地元の人によると…
地元の人:
小学校行くルートで考えた時なんですけど、ここの道を通るより、奥の道を通った方が小学校には行きやすいルートになってるんですね。
実は、職場へ向かう道とは違い小学校への道は、2つ目のカメラの道より、1本東側を通るのだという。

そこで、カメラ2の映像を、よく見てみると確かに奥にも道がある。手前のカメラ前を通った約3分後、確かに、奥の道を通っている黒い車が確認出来る。

これが、もし、件の車だとすれば警察が発表した通り、確かに、あの日、安達容疑者は朝8時頃、学校方面へ向かっていたことになる。
ところが、学校へ向かう車の姿は確認出来るのに、その後、この道を通って自宅に戻る姿は確認できなかった。

それなのに、次に現れるのは再び小学校へ向かう午前11時過ぎ。これは、妻と一緒に息子を迎えに行く様子だと思われる。
19日、明らかになったのは…
安達容疑者の供述:
車で息子を小学校まで送った後、別の場所に連れていき殺害した。

つまり、学校の近くまでは行ったものの結希くんを降ろさず、別の場所で殺害したという。
安達容疑者の供述:
殺害した場所で遺体を遺棄した後さらに別の場所に移動させた。
という趣旨の供述もしているという。
それは、防犯カメラ映像から得られた推測とも符合する。とすれば、結希くんの殺害した後、何食わぬ顔で妻と二人、帰るはずのない息子を迎えにいったことになる。
「学校で降ろした」証言が招いた不信感
ではなぜ、安達容疑者は一度、学校へ向かい、そのまま息子を降ろさなかったのか?
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
学校へ送っていく途中に父子間の何らかのトラブルがあったと思われる。学校へ拠点をおいたほうが不自然ではない。「ここで降ろした」と言っておけば警察としても疑わないと。自分としては最善の方法が、逆に不自然さを呼んでしまったと。
樋口氏はこの時、警察は、学校前で降ろしたという父親の証言に、すでに不信を抱いていたはずだと言う。
その証拠だというのが行方不明のわずか3日後に撮られていた映像。あの黒い車を、鑑識チームまで入れて入念に調べる様子が映っていた。
父親を疑っていなければ、絶対にありえない光景であり、その様子は、現場に立ち会った容疑者にとって相当なプレッシャーになったはずだと樋口氏は言う。
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
(容疑者も)そういうことは初めは分からなかったと思うんですよ。まさか(警察が)ここまで来るとはと。ところが来たと。

その焦りに突き動かされたのか…
その3日後、あの黄色いリュックが何度も捜索された場所から発見される。

山中から発見された黄色いリュック。それは、警察の捜査をかく乱する目的だったのか?
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
(リュックを)持ってるだけでびびってるんです。被疑者心理で捨てるのが精いっぱいだったと。
ちなみに、リュックが親族により発見されたのは3月29日。あのカメラには午前9時50分に、黒い車が映っている。

しかも、この時は、安達容疑者の自宅敷地内にあったワゴンタイプの車と一緒だ。
それは、容疑者の職場へと続く道。その脇で約1時間後、あのリュックが発見されることになる。
近隣住民:
(3月29日午前)11時頃やわ、パトカーと消防車、救急車上がって行って…
「被害者の父親」捜査の難しさ
では、これほど怪しい動きをしている父親を、もっと早く調べることはできなかったのか?
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
やるべきことを固めていくのに、日にちがかかるんですよ。ましてやその被害者であり被疑者として捜査していくのにはハードル高いので、日にちもかかる。まして資料の分析というのに時間がかかる。
さらに…
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
子供の要は心情的なところ。例えばお友達に自分の心情を話してないかとか、母親に対して父親のことをね、どう日頃、家族関係の話をしてたかと、いろんな話をもとに積み上げていったと思うんですよ。
裏取りに必要な証拠は山のようにあり、しかも、相手は行方不明になった息子の「父親」。

つまり、そこから、ジワジワと外堀を埋めるように自宅へと近づいていった捜査も、極限の緊張感の中で続けられたものだったという。

そして、決め手となったのは…
ドラレコとスマホの解析が決め手に
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
ドライブレコーダーの解析、それからスマートフォンの解析をもとに、この整合性ですね。どういうところで車が止まったか。どういうところで動いたとか。そういうのも合わせながら、その容疑者の行動を把握していっていると。
こうした地道な捜査を繰り返し、浮かび上がったのがあの「遺体発見場所」だった。
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
11日に情報ではここに地元のね関係者の方が入ってこの辺りを見られる。そういう事実はあると。そして、この辺りは当然目につくけども遺体はなかったと、こう言われてるんですよね。ですから、この辺りを歩けばわかる。そういうところに遺体が見つかれば、これはやはりその11日から発見される2〜3日の間に遺棄しているということは認められると思うんですよ。
しかも、ここに行き着くまで、安達容疑者は複数回に渡り、遺体を移動させたていたとされる。

追い詰められ、隠すこともできないまま我が子の遺体を遺棄したのだろうか?
元京都府警捜査一課長・樋口文和氏:
(このままでは)遺体はやっぱり見つかると、自分たちにこの捜査の目が及ぶ可能性は強いと思っている。自分がやったから、余計にね。ですからそこの遺体はどうしても見つかったら困ると。だから転々とリスクを冒しながらでも移動しなければならないというね、プレッシャーがかかってるんですよね。
行方不明の3日後から、警察がかけ続けたプレッシャー。樋口氏はその周到な戦略がハマったからこその逮捕だったと語る。

嘘が嘘を呼び膨れあがった虚像は、罪なき少年の未来を永遠に葬ってしまったのか
(「Mr.サンデー」4月19日放送より)
