前回の衆議院選挙で躍進した「チームみらい」。AIエンジニアの安野貴博氏が立ち上げたことから、“IT集団”のイメージが先行するチームみらいだが、実際には議員それぞれのキャリアや専門性は多種多様だ。なかでも教育・福祉分野で実績を積み、今回初当選を果たしたのが河合道雄議員(比例南関東ブロック)だ。教育現場を知る立場から、政治で何を変えようとしているのか聞いた。
偏差値で進路が決まる現状を変えたかった
河合道雄議員は1990年、東京都生まれ。東京大学文学部を卒業後、京都大学大学院を修了し、教育分野に携わってきた。2011年には高校生・大学生向け教育事業「HLAB(エイチ・ラボ)」を立ち上げ、日本版ハーバード型学生寮ともいえるシモキタカレッジの設立・運営にも関わってきた。筆者も河合氏に会ったのは数年前、HLABの取材を通じてだった。
HLABやシモキタカレッジで河合氏が取り組んできたのは、若者の進路選択を広げることだった。
「大学にはこんなにも多様な学問があるのにもかかわらず、高校まではその広がりに触れる機会は少なく、偏差値という単一の物差しだけで進路が決まっていく現状があります。それを変えたいと思い、自分のロールモデルに出会い、選択肢を考えるきっかけをつくる場を提供してきました」
一人ひとりに「オーダーメイド」の教育を
現在、河合氏は、衆議院の文部科学委員会に所属し、その豊富な教育分野での経験をもとに次期学習指導要領改訂などの議論に関わっている。「国会で教育の議論ができていることが、とても楽しいですね」と語る河合氏だが、学校教育の問題に関心をもつようになったきっかけは、身近な人が不登校になったことだった。
「今、文科省では不登校の児童生徒への支援として、調査書や評価のあり方の見直しが進められています。これまでは出席日数が重視されてきましたが、それが不登校の子どもにとって進路の選択肢を狭める要因になってきました。そこで、学習の中身やプロセスなど学習評価の内実を重視しようとしています。また、高校入試でも調査書の比重が小さくなる制度の導入が進みつつあります。ただ、高校入試制度は都道府県ごとに決められるので、各地域の見直しもあわせて進めていく必要があります」
河合氏が掲げるカリキュラム編成のキーワードは「オーダーメイド」だ。
「算数が苦手、国語は得意といったように、子どもたちにはそれぞれ個人差があります。そうした違いを前提に、一人ひとりに応じたオーダーメイドの学習カリキュラムをつくる、まさに個別最適の学びを実現することが理想です」
この発想は、河合氏が議員になる前、発達障害のある子ども向けの教材開発に携わっていた経験から生まれた。
「文科省の議論で見落とされがちなのが、認知の多様性だと感じています。たとえば文字で学ぶことが得意な視覚優位の子どももいれば、聞くことで理解が深まる聴覚優位の子どももいます。こうした認知特性に応じた教材を、先生の負担を増やすことなく実現していくことは可能だと考えています」
教育をテクノロジーの力で変える
では、そのオーダーメイドの教育をどう実装するのか。そのカギを握るのが、まさにチームみらいが訴えるテクノロジーの力だ。大学院時代に河合氏は、「テクノロジーを使いながら自分に合った学びを選べる環境を探したい」と思い立ち、ハーバード大学の研究機関に短期留学した。そこでオンライン動画を活用した、誰にでも開かれた教育に出会った。
「教育テクノロジーによって、アクセスできる教材の数は圧倒的に増えました。そして、自分に合った学問や教材をどう見つけるのかという課題を解決できる可能性があります。たとえば、キュレーションサイトやAmazonのリコメンドのように、一人ひとりに最適な学習コンテンツを提案する仕組みです。さらにAIを活用することで学習計画を立てたり、学びの伴走役になることも期待できます」
先生が本来の仕事に集中できる環境づくり
そしてもう一つ、河合氏が強調するのが「教員の働き方」を変えるDXだ。
「DXは教員の負担軽減という観点から見た時にすごく重要なことだなと思っています。これまでの教育事業の中で感じてきたのですが、これからの先生は教科を教えるだけでなく、目の前の児童生徒の関心や特性を見極めて、学びや進路、地域社会との接続を支えるコーディネーター的な役割が求められると思います。そのためにはそれ以外の業務をできるだけ減らす必要があります」
「それを進めるにはまず校務のDXを進めていくことが大前提です。まずは民間企業並みに労働時間を把握する基本的な労務管理から、採点や保護者との連絡業務、プリント作りなど、すべてを機械化しようとは思いませんが、省力化できる部分はすすめていくべきです。現場で頑張っている先生たちが、本来の仕事に集中できる環境を整えることが大事だと思います」
そして最後に河合氏は、日本の技術革新を支えるために必要な教育として、高専(高等専門学校)の充実を挙げた。
「少子化の中で高等教育機関の新設はハードルが高いですが、技術人材の育成のために、高専は増やしていくべきだと思っています。また、科学技術の基盤整備も重要です。議員になる前にOIST(沖縄科学技術大学院大学)を訪れましたが、研究資金の配分の仕組みや研究施設を共有する仕組みがとても合理的で、他大学にも広げていくべきだと感じました」
不登校、個別最適化、教員DX、そして科学技術人材の育成。テクノロジーの力を使って教育のいまを問い直そうとする河合氏、そしてチームみらいの挑戦から目が離せない。
