熊本地震で脱線し、長らく車庫で眠り続けていた九州新幹線「つばめ」が、海の上を旅している。「船の上に新幹線が乗っている」という前代未聞の光景を一目見ようと、串木野新港には家族連れをはじめ多くの見物客が集まった。
地震で脱線、10年の時を経て「大冒険」へ
2016年4月に発生した熊本地震では、JR九州の新幹線つばめが脱線し、運行不能となった。以来、車両は車庫で保管され続けていたが、JR九州はこれを半年かけて修繕。熊本地震の発生から今年4月で10年という節目に、九州各地の港をめぐる特別プロジェクト「つばめの大冒険」として、九州を船で縦断する里帰りの旅に送り出した。
このプロジェクトは、九州新幹線全線開業15周年への感謝を、沿線に暮らす人々に伝えることを目的としている。

「海の上に新幹線がいるというのが感動」 串木野新港に家族連れ
4月1日、熊本から串木野新港に到着したつばめ。翌2日は春休みとも重なり、青空の下、多くの人が港を訪れた。
海上に浮かぶ新幹線という、めったに目にできない光景に、訪れた人々は思い思いの言葉で驚きと感動を語った。
孫と一緒に訪れた祖母は「感動しますよね、海の上に新幹線がいるというのが」と目を細めた。孫も「フェリーと新幹線を見に来ました。(船の)上に乗っているのがおもしろい」「船に乗って浮かんでいるから重いのにすごいなって思った」と興奮した様子で話した。さらに「下の方の車輪が外れたりしていました」と、子どもならではの鋭い観察も聞かれた。
別の家族は一人一人カメラを手に、シャッターチャンスを狙いながら港を歩いた。息子は「地震の被災者の想いも感じるなと。頑張ってほしいなと思います」と静かに語り、娘は「浮いているのすごいなぁという感じ」と笑顔を見せた。母親は「ずっと前から楽しみにしていたので、家族みんなで明日は鹿児島の方に行って指宿の方に一緒に回りたいと思います」と、旅の続きへの期待を膨らませていた。
夕方に出港、鹿児島・指宿へ続く旅路
2日夕方には出港セレモニーが開かれ、午後6時ごろ、つばめは串木野新港を出発。鹿児島市の北ふ頭へと向かった。3日午前8時ごろに北ふ頭へ接岸し、4日には道の駅いぶすき付近の観音崎沖に停泊、海上に浮かぶつばめの姿を楽しめるという。

熊本地震という困難を乗り越え、九州の海を渡る新幹線の姿は、沿線の人々にとって単なる観光イベントにとどまらない。被災地の記憶を胸に刻みながら、感謝と復興の想いを乗せたつばめの大冒険は、まだ続く。
(動画で見る▶熊本地震から10年 九州新幹線つばめが港に停泊 「被災の記憶を伝える」里帰りイベント)
