衆院選での歴史的大勝で圧倒的な議席を確保した高市政権に対し、野党からはこれまで以上に連携の必要性を指摘する声が上がっている。

しかし、野党第1党の座を争う中道改革連合と国民民主党が深い信頼関係を構築するには、なかなか容易ではない現状がある。そして、それぞれの党を代表として率いる小川淳也氏と玉木雄一郎氏についても一定の緊張関係が指摘される。

小川・玉木両氏の関係、そして中道改革連合と国民民主党の今後の連携の可能性などについて、関係者への取材を通じて迫った。

衆院では中道改革連合、衆参両院では国民民主党

「外野からはいろいろ言われるが、私はいつもこう言う。玉木さんと私の間には2人にしか分かり合えない価値、世界観がある」

日本記者クラブでの会見 3月
日本記者クラブでの会見 3月
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3月19日、日本記者クラブでの記者会見で、国民民主党の玉木代表との関係について、こう語ったのは中道改革連合の小川代表だ。

小川・玉木両氏は共に香川県出身で、県立高松高校から東京大学法学部へ進んだ。そして、小川氏は総務省、玉木氏は財務省でそれぞれ官僚というキャリアを経て、旧民主党から衆院選に立候補した。

小川氏は香川1区、玉木氏は香川2区で当選を重ね、民主党の後身である民進党の分裂、その後の野党再編を経て、小川氏は立憲民主党、玉木氏は国民民主党へと袂を分かった。

グループの会合に向かう小川氏 2010年9月
グループの会合に向かう小川氏 2010年9月

2005年の“郵政選挙”で初当選を果たした小川氏が当選8回であるのに対し、年齢が2つ上の玉木氏の当選回数は7回。ただ、小川氏は最近では小選挙区で勝利しているが、過去には比例復活での当選が多かった。一方、玉木氏は全て小選挙区で勝利を果たし、選挙の強さには定評がある。

グループの会合に向かう玉木氏 2010年9月
グループの会合に向かう玉木氏 2010年9月

旧民主党時代には、小川・玉木両氏は、仙谷由人元官房長官や現在は日本維新の会に所属する前原誠司氏らを中心メンバーとするグループ「凌雲会」にも籍を置いていた。

筆者は2007年、民主党の担当記者を務めて以降、小川・玉木両氏に取材を続けてきた。玉木氏については、彼が2009年の衆院選で初当選を果たした当時、あるベテラン議員が「有望な新人がいる。将来、党を引っ張っていく存在になる」と評していたことを思い出す。

当時、両氏に抱いた印象は、小川氏は「愚直に自説を唱える理想主義者」、玉木氏は「政策通でエネルギッシュな現実主義者」というものだった。

野党第一党の座を争う

それでは、小川・玉木両氏はどのような関係なのか。最近では野党第1党の座をめぐり、ライバル意識が見られるという指摘もある。

衆院選から2日後の2月10日、玉木氏は記者会見で、中道改革連合を念頭に置いた野党第1党の役割について見解を尋ねられると、次のように答えた。

国民・玉木代表 2月
国民・玉木代表 2月

「衆参を合わせるとうちが野党第1党だ。50議席を超える野党はうちしかない。その意味で我々にも責任がある」

国民民主党は衆院選で28議席を確保し、参院と合わせると53議席となった。これに対し、中道改革連合は49議席にとどまった。中道改革連合は、立憲民主党と公明党の衆院議員が結成した党で、参院議員はいない。参院では、立憲民主党と公明党がそれぞれ活動を続けている。

衆参両院を合わせた勢力を踏まえ、国民民主党を野党の代表として扱う場面も出てきている。

国民・榛葉幹事長 3月
国民・榛葉幹事長 3月

2月15日のNHKの番組で、与野党各党の幹部が出演した際、野党側として最初に紹介されたのは小川氏ではなく、国民民主党の榛葉賀津也幹事長だった。

番組放送後、中道改革連合のある議員は「党内に動揺が走るかもしれない。衆院選で大敗し、野党第1党の座まで失えば、党は雲散霧消するのではないか」と危機感を示した。

3日後の18日、小川氏は記者団の取材に対し、「衆参両院を合わせれば、国民民主党が野党第1党であることは厳然たる事実なので敬意を払いたい」と述べる一方、「私自身が所属する衆院において、第1会派、第1党であるということの重みは動かない。その重みに照らした言動、行動をしていきたいという自覚は何ら変わらない」と強調した。

小川氏「総理にならなくて済むのなら」 

それでは、小川・玉木両氏は国家の舵取りを担う総理大臣を目指しているのか。

先述の日本記者クラブの会見で、出席者から「小川総理」と水を向けられると、小川氏は「私は総理になりたいのかとよく聞かれる」とした上で、次のように語っている。

「総理になりたいと思ったことは一度もなく、国会議員にすらなりたいと思ったことは一度もない。私的時間、家族のプライベート、失うものがあまりにも大きいということを自覚しながら、家族や親、兄弟、周囲の猛反対を受け、それでも説得をして今日に至った。その歴史から言えば、やることをやったと思えるか、これ以上やれないと見切れるか、早く引退できたらどんなに幸せだろうと今でも思い続けている」

「総理になりたいのかと言われたら、答えは明確にノーだ」
「総理になりたいのかと言われたら、答えは明確にノーだ」

その上で、「総理になりたいのかと言われたら、答えは明確にノーだ。あんなものはならなくて済むのならそれに越したことはない。なりたいという人がいたら逆に聞きたい。その職責の厳しさと難しさ、犠牲にするものを分かって言っているのか」と強調し、次のように続けた。

「覚悟があると言う人が時々いるが、そんなものは実体のない虚に満ちたものだ。覚悟というのはその都度その都度の言動、行動から読み取るしかない。自分で覚悟があると言っているのにろくなものはないと思う」

さらに、3月31日、自身のSNSに事務所名で、「小川代表は『総理になりたい人』?『社会を変えたい人』?」と提起する投稿を寄せた。

3月31日の小川氏のX投稿
3月31日の小川氏のX投稿

投稿の中で、「小川淳也は、完全に後者だ」として、「『権力のため』ではなく、『行き詰まった日本を立て直すため』に政治をしている」とつづった。

そして、「原動力は“権力”ではない。政治は家族も含め大きな負担を伴うもの。それでも続けている理由はただ一つ。『行き詰まった社会を変えたい』」と訴え、次のように締めくくった。

「『日本を変える』という大仕事をやり切ったら、公人としての役割を終え、私人に戻る。地位ではなく、責任で動いている」

玉木氏「総理になったらを常に意識」 

総理になりたいのではなく、日本を変えたいとする小川氏に対し、玉木氏は将来的に総理として国政を担いたいとの意欲を隠してはいない。

1年前の2025年3月、神奈川県川崎市内のタウンミーティングに参加した際、出席者から外交に積極的な理由について問われると、玉木氏は1つ目の理由として、「国政政党のトップとして外交は非常に重要だと思っている。世界の中で、特にアジアの中で、日本が主体的リーダーシップを発揮できる国にしたい」と語った。そして、2つ目の理由として次のように発言している。

外交に積極的な理由2つ目は「総理大臣になるため」 2025年3月
外交に積極的な理由2つ目は「総理大臣になるため」 2025年3月

「総理大臣になるためだ。総理大臣の仕事の半分以上は外交だ。外交だけは国会議員、特に国政のトップが担う役割が大きい」

その後、BSフジの「プライムニュース」に出演した際にも、総理を目指しているかと問われると、次のように答えている。

「私に限らず、国政政党の代表を務めている人は大なり小なりトップリーダーとなって、この国を率いていきたいという意思と能力を示していくことが、政党への支持の大きな動機づけにもなる。自分としても総理になったらどうするかを常に意識しながら、政策も内外への発信でも気をつけているつもりだ」

さらに、2025年10月、国会での総理指名選挙で、自身が野党統一候補として浮上した際には、「公党の代表として内閣総理大臣を務める覚悟はある」とも語っている。

野党連携を訴える小川氏に玉木氏「まず中立公3党で」

2月24日、衆院本会議では、高市総理の施政方針演説など政府4演説に対する代表質問が行われた。登壇した小川氏は「野党各党の皆様にもあえて呼びかけたいことがある」として、次のように言及した。

衆院本会議の代表質問で高市総理と対峙する小川氏
衆院本会議の代表質問で高市総理と対峙する小川氏

「戦後日本において、自民党を中心とする政権が過半数割れに追い込まれた例は、数えるほどしかない。その希少な局面が、わずか1年前だった。その際、各党にはそれぞれ実現したい政策があり、個別の条件闘争に入られた。結果、一定の成果を得たことも事実であり、その努力に深く敬意を表する。しかし、どうだろう。あの時、もし野党の足並みがそろっていれば、政権交代だった。果たしてそこから得られた全体成果は、個別の成果をはるかに上回るものとなった可能性はないか」

そして、「自民党が過半数を割るも、野党の足並みが乱れ、わずか1年で300超の議席を奪い返された」と指摘し、次のように続けた。

「この劇的な再逆転劇の影の主役は実は我々野党。裏から言えば、それだけ自民党は強く、したたかだということだ。しかし、我が国には定期的な政権交代が必要だ。それによる政治の浄化と、政策の軌道修正こそが、日本の長期的な繁栄につながる。私はそう確信する」

その上で、小川氏は他の野党に対し、次のように呼びかけた。

2月の代表質問
2月の代表質問

「我々野党もまた国のため、国民のために、よりしたたかに、より強く、より賢くあらねばならない。今回の事態はそのための痛みを伴う、しかし極めて重い教訓とすべき。そのことを今後の日本の民主主義のために強く訴え、呼びかけたい」

野党連携の必要性を訴える小川氏に対し、玉木氏はどのように考えているのだろうか。

衆院選大敗から5日後の2月13日、中道改革連合の新代表に小川氏が選出された。玉木氏は記者団の取材に対し、「心からの祝意、敬意を申し上げたい」として、次のようにエールを送った。

「同じ香川県出身で、これまで立場、政策は違っても地域、日本のために共に頑張ってきた間柄だ。難局を乗り切るリーダーシップを発揮されることを期待したい」

そして、小川氏について、「非常に真っすぐに物事に取り組まれる方だという印象を持っている」と評し、「決まった後に一本、電話をいただいた。その時に『よろしく』ということだったので、こちらからも祝意を申し上げた」と明かした。

一方で、立憲・公明両党が5日後に召集される特別国会では統一会派を組まず、別々の会派で活動する方針を決めたことについては、次のように疑問を呈した。

国民・玉木代表 2月
国民・玉木代表 2月

「参院の立憲民主党と参院の公明党、衆院は1つになった中道改革連合という3つの党が併存する形になった。会派すら組まないということは合流するということにはならないのか」

国民民主党のある幹部は、玉木氏の意向は中道・立憲・公明3党に関する発言に表れていると解説する。

2月18日に召集された特別国会での総理指名選挙で、高市総理が選出されたことを受け、玉木氏は記者団の取材に応じた。その際に、「今後、中道・立憲・公明3党との連携が避けて通れないと思うが、交渉相手として信頼できるか」として見解を尋ねられると、中道改革連合に向けて次のような考えを示した。

「我が党と交渉する前に、まず参院の立憲民主党や公明党とよく連携していただきたい。その上で我が党や他党とやっていくのが筋だ。まずは3党間の連携と方向性の一致がどれぐらい図れるのか、我々としても見定めていきたい」

国民民主党のある幹部は中道改革連合の現状について、「ヤジロベエみたいなものだ。右にも左にも気にして前に進めない」と指摘し、「早く解党した方がよいのではないか」と冷ややかに見る。

また、別の幹部は「合流するか、分かれるか、早く結論を出すべきだ。それができずに連携したいと言われてもなかなか難しいのではないか」と話す。

野党第1党を目指す競争相手としてそれぞれ独自に進むのか、それとも互いに連携して衆院で圧倒的な勢力となった高市政権と対峙していくのか、今後の中道改革連合と国民民主党の関係、そして小川・玉木両氏の動向に注目が集まる。
(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久) 

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局