2026年がスタートして1週間あまり。参院で少数与党の状況が続く中、安定した政権運営のため、連立の拡大を目指す高市政権は、野党で政策実現を目指す国民民主党に秋波を送っている。
一方、国民民主党の支援団体である「連合」は、野党第1党の立憲民主党と共に政権に対峙していくべきだとして、連立入りを容認しない方針を示している。連立入りの可能性などについて、国民民主党内ではどのように見ているのか、関係者への取材を通じて迫った。
年頭会見で「野党も建設的で具体的な政策提案を」
「与党も様々な政党に代表される国民の声を丁寧に聞くことが求められる。野党も建設的で具体的な政策を提案し、実現につなげていく。その政策に責任を負うという新しい与党、野党の時代になってきた」
2026年、年頭の記者会見でこう語った国民民主党の玉木代表。4日、三重県の伊勢神宮に参拝した後、榛葉幹事長や古川代表代行、浜口政調会長と共に会見に臨んだ。
会見の中で玉木氏は「どの政党も単独で衆参過半数を占めることは近い将来もできない」との見方を示し、新しい与野党のあり方について次のように言及した。
「与党も、与党だけで決めて何か進めるという状況はなかなか再現できないのではないか。一方、野党も、とにかく反対だけという向き合い方は多くの国民が求めてもいないし、時代にも合っていない。その意味では与野党の垣根が非常に下がってきた」
“ポスト103万円の壁”にも言及
2025年12月、国民民主党はこれまで訴えてきた「年収の壁」の178万円への引き上げで自民党と合意した。
これに関し、玉木氏は「一定の実現が図られたと我々としては認識している」とした上で、「約束を守った相手との信頼関係は以前に比べれば醸成されたと思っている。その醸成された信頼の度合いに応じて、今後の連携のあり方については幅も深さも広がっていく」との認識を示した。
玉木氏は「今後どういうことを互いに実現しようとするのか、よくコミュニケーションを取りながら、どういう政権との距離感や関係を取っていくのかは、まさに今後の話だ」と強調した。
さらに、新年に実現したい政策、“ポスト103万円の壁”については、次のように言及した。
「手取りを増やそうということで、この間、控除額の引き上げなどに取り組んできたが、何年か続いた賃上げの中で、特に地方の中小企業において、賃上げ疲れ、なかなか生産性、利益が上がらない中で、さらなる賃上げがしんどくなってきているところが出てきている」

そして、「地方の中小企業、そこで働く人たちの持続的賃上げをどうやって実現していくのか、特に重点を置いて今後は取り組んでいきたい」と強調した。
玉木氏「批判的な見方でよりよい提案」
23日に召集される予定の通常国会では、2026年度予算案をめぐる与野党の対応が焦点の1つとなる。政府は一般会計の総額が約122兆3000億円に上る予算案を閣議決定した。2年連続で過去最大を更新し、税収の不足分を補うため、政府は新たに約29兆6000億円の国債を発行する。
これに対し、会見の中で玉木氏は「フレームだけ見ると、よく考えられた予算だ」として、次のように評価した。

「色々なマーケットからの心配もある中で、一定程度、積極的な財政政策を維持しつつ、当初予算ベースでは、プライマリーバランス1.3兆円の黒字を達成している。全体としてバランスの取れた予算になっているのではないかという印象だ」
そして、「年収の壁の引き上げやガソリンの暫定税率の廃止も含まれている」として、「私たちの考え方も取り入れられた予算であれば前向きに捉えて、協力について努力していくことになる」との姿勢を示した。
こうした高市政権に対する協力的とも言える国民民主党の姿勢は、他の野党とは一線を画している。
立憲・野田代表「与党へのすり寄り競争」苦言も
立憲民主党の野田代表は4日の年頭会見で、予算案について、「コロナ禍が過ぎた後としては、あまりにも規模が大き過ぎるのではないかという印象を持っている」と指摘。その上で、「財政の規模が大きくなれば、逆に言うとインフレを助長する可能性もある」などと警鐘を鳴らした。そして、「無駄遣いがないかどうか、政策の妥当性をしっかりとチェックしていきたい」と強調した。
さらに、野田氏は4日、自らのホームページにコメントを掲載した。国政の動きや自らの考え方を記した「かわら版」の中で、「『強い国家』をめざしている高市政権には内在的な危うさを感じる。公明党が与党から抜けたことにより、加速的に危うさは増している」と訴えた。さらに、野党のあり方についても、次のように苦言を呈した。
「政権の危うい政策運営を厳しくチェックするのが野党の使命だ。『政策実現』は大事だが、その美名のもと実態は与党へのすり寄り競争が起こっている。気がつけば多くの野党が無自覚のうちに『自民党補完勢力』化している。与党すり寄りの果ての総与党化では、高市政権の危うさを追認してしまう結果になりかねない。それは、日本にとって危ういと思う」
一方、年頭会見で玉木氏は「政権との距離が縮まれば、国会による行政の監視機能が弱まっていく面もある」として見解を問われると、「これから新しい発想で臨んでいく必要がある」と述べた上で、次のように続けた。
「現状の正確な把握と、ある意味、批判的な見方で見るからこそ、よりよい提案ができる。例えば、103万円の壁を178万円に引き上げようという提案は、働き控えという課題を生じさせているという批判的な目があって、初めて建設的な提案ができた。肯定的に全てを捉えているということではなくて、現状を批判的に見る目を持っているからこそ提案が出てくる。それを実践してきたのが国民民主党だ」
連立入りへ自民は秋波、連合は容認せず
与党会派が衆院で過半数に達する一方、参院では依然、少数与党の状況が続いている。安定した政権運営を目指す自民党からは国民民主党の連立入りに期待する声も出ている。
「日本維新の会との連立合意を基礎としつつ、国民民主党をはじめとする野党の皆様にも協力を呼びかけていく」
高市首相は5日の年頭会見で、政権運営に関してこう強調した。さらに翌日には、自民党の鈴木幹事長が会見で、国民民主党に次のように呼びかけた。
「日本の国の政治の安定を取り戻すために国民民主党の協力をいただきたい。進めるにあたっては、連立を組んでいる日本維新の会とも十分に意思疎通をし、相談をしながら、私の希望ということで言えば、3党連立という形になれば日本の政治の安定がしっかりと確立されることになるのではないか」
一方、国民民主党を支援する労働組合の中央組織「連合」は、連立入りを容認しない姿勢を崩していない。
連合の芳野会長は5日の年頭会見で、国民民主党の連立入りについて、「看過できないという方針が今でも生きている」と述べた上で、次のように訴えた。
「立憲と国民が野党の立場で、政府・政権に対して、しっかりと対峙していく体制が必要だ」
芳野氏は、連合が「二大政党的体制」を目指していることを強調し、「立憲民主党と国民民主党には組織内議員がいるので、その連携を重視している。与野党が切磋琢磨して国会で審議を尽くすことがとても重要だ」との認識を示した。
国民民主内からは様々な意見
こうした連合の意向に対し、国民民主党内からは冷ややかな声も出ている。
ある幹部は「政党として判断した場合には尊重してもらわなければならない。それは連合も理解してくれていると思う」と話す。また、別の幹部は「連合の意見は連合の意見だ。意見としては承るが、それ以上でもそれ以下でもない」と冷ややかだ。
それでは、党の連立入りの可能性についてはどのように見ているのか。
ある幹部は「まだ党内で話し合ったことはない」とした上で、「全ての可能性がある。大事なことは政策実現だ。政策実現ができるスキームを考えていかなければいけない。そのために必要であれば踏み出す可能性もある」との見方を示す。
一方、別の幹部は「自民党は日本維新の会に振り回されている。高市首相とは前向きに話ができるが、維新とは目指すべきことが違う。連立政権に入ったとしても、3党ではまとまらず混乱するだけだ」と懸念を示す。そして、「連立入りをしないと政策実現ができないわけではない。これまでの是々非々のスタンスを守りつつ、政策実現ができる立ち位置を確保していくべきだ」と慎重な姿勢を示す。
さらに、連立入りのハードルとして、衆院選での候補者調整を挙げる声もある。国民民主党は党勢拡大に向けて積極的に候補者を擁立していく方針で、年頭会見でも、玉木氏は予算を伴う法案や内閣不信任決議案を単独で提出できる51議席以上の獲得、比例代表で900万票の得票を目指し、全ての都道府県に候補者を擁立する考えを改めて示した。

ある関係者は「自民党と候補者調整ができるのか疑問だ」とした上で、「調整できずに連立に入れば選挙で同じ与党の自民党と戦わなければいけなくなる。それでは選挙は戦えない」と苦しい胸の内を漏らす。また、幹部は「一方的に国民民主党は候補者を擁立しないようにと言われても困る。連立に入る場合には、事前に候補者調整などの問題を解決しなければいけない」との見方を示す。
党内で様々な意見が出る中、玉木氏は2025年12月28日、自身のSNSに投稿し、次のようにつづっている。
「『連立迷い』とか『連立模索』などの記事も多く見たが私たちが模索しているのは、多党化時代の『政策実現の新しいあり方』であり『政権との関係の新しいあり方』だ。『つくろう、新しい答え』で頑張る」
政策実現を目指す国民民主党が高市政権と今後どのような関係を構築していくのか、そして次の衆院選でさらなる躍進を果たすことができるか、今後の行方に注目が集まりそうだ。
(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)
