高速道路で日々目にする黄色いパトロールカー。乗っているのは、24時間体制で道路の安全を守るNEXCO中日本の「交通管理隊」だ。路面にできた穴の緊急補修や落下物の回収など、その仕事は常に危険と隣り合わせ。利用者の「当たり前の安全」のため命がけで任務にあたる“精鋭部隊”の知られざる一日に密着した。

24時間体制で高速道路を守る"守護神"

「回れ右!配置につけ!」

NEXCO中日本 福井保全・サービスセンター
NEXCO中日本 福井保全・サービスセンター
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福井インターチェンジそばにあるネクスコ中日本の福井保全・サービスセンター。午前9時過ぎ、反射材付きのオレンジ色の作業服を身に着けた作業員たちが、車両に駆け寄り装備の点検を始めた。

今回、密着取材するのは高速道路の安全を守る交通管理隊。あの"おなじみ"の黄色いパトロールカーで北陸自動車道を走行しながら、路面点検から事故対応まで行う精鋭部隊の一日に密着した。

出動前の点検
出動前の点検

午前9時、出動前の点検は細部にまで及ぶ。バッテリー、サイレン、ブレーキランプ。時速80キロで走る高速道路では、わずかな異常が命に関わるからだ。

福井基地は、北は加賀インターから南は今庄インターまでを管轄。今庄から南の木之本インターまでは、敦賀基地が担当している。舞鶴若狭自動車道も小浜インターまでは敦賀基地の管轄だ。

高速道路の管轄エリア
高速道路の管轄エリア

中日本ハイウェイ・パトロール福井基地の後藤弘光隊長は「福井基地は21人の隊員で業務を行っている。日勤と夜勤があるので、24時間体制で異常事態の対応と巡回を行っている」と説明する。

この基地では巡回車3台を管理。1台当たりで年間10万から15万キロを走行するという。これは地球3周半分に相当する距離だ。

360度、常に目を光らせるパトロール

パトロールは2人1組で行われる。今回、入社14年目のベテラン・林龍人さんと、入社5年目の村井祐輔さんのペアに密着取材が許された。

この2人の一日に密着取材!
この2人の一日に密着取材!

「下り加賀インター向け巡回、天候晴れ。今から本線流入します」

無線で基地に報告し、いよいよ北陸自動車道へ。パトロールでは路面やガードレールの異常、落下物の有無などをくまなくチェック。事故発生時には緊急出動して交通整理も行う。

村井さんは「360度、車道の動向を確認する。いつ何が起きても備えられるよう」集中して巡回していると語る。

パトロールカーのハンドルを握る林さんの横で、周囲を確認する村井さん。すると、パトロールカーがスピードを落とし、パーキングエリアへ。2人とも窓を開けた。

SAでも車の中からパトロール
SAでも車の中からパトロール

「貨物車や乗用車からオイル漏れなどがないか、低速で通り抜けることで異常がないかを確認している」と林さん。窓を開けたのは、オイル漏れの匂いを嗅ぎとるためだったのだ。

パーキングエリア内の設備の故障、不審な車が止まっていないかなども、つぶさにチェック。高速道路に関わるすべてに目を光らせている。

緊急事態発生!命がけの補修作業

下り線の折り返し地点となる加賀インターで、上り線に乗り換える準備をしていた時、基地からの無線が鳴り響いた。

「走行右にポットホール」

「下りの102、走行右、ポットホール。了解、向かいます」と村井さんが応答。

無線の指示を受けて現場に急行
無線の指示を受けて現場に急行

サイレンを鳴らし、緊急事態が発生した現場へ直行する。ポットホールとは道路にできた穴のこと。放置すると拡大し、事故の原因になるため、早急な対応が必要となる。

ポットホールとは…
ポットホールとは…

路肩に停車し、特別許可を得てカメラも高速道路上へ。1人が赤旗を振り車を誘導する間、もう1人が穴を探す。走行車線上に10センチほどの穴を発見。さらにその近くにも。合わせて3つの穴が見つかった。

一瞬を見計らい車道に…
一瞬を見計らい車道に…

応急措置が必要だが、目の前には猛スピードの車が走行している。林さんが車から白い袋とスコップを取り出し、車列が途切れた一瞬を見計らって黒い砂のような「常温補修材」を穴に撒く。

「アスファルトを応急的に埋めている。雨が降ると車が通るたびに大きくなっていき、パンクの可能性も出てくるので応急的に埋めている」(林さん)

スコップで叩いて路面になじませていく。隣の車線には猛スピードで車が走行していて、一瞬の判断ミスが命取りになる。危険と隣り合わせだ。

「怖いのは怖いけど、自分が必ず大丈夫というタイミングでしか行かない」という。1人が監視し、通行車両の状況をインカムで連携しながら、2人の目で確認して作業する緊張感に満ちた現場だ。

約2分で応急処置が完了。無事、穴はふさがった。本格的な補修は、この後行われる。24時間、監視の目を光らせる交通管理隊が、未然に事故を防いでいるのだ。

瞬時の判断力が命を守る

装備を確認したところで、再びパトロールへ。中央分離帯に林さんの姿が。手には段ボール。本線を横断して落下物を回収したのだった。

落下物を回収
落下物を回収

さらに…再び何かに気づき、車を停めた。発見したのは鉄の棒。時速80キロで走りながら、わずかな光の反射に気づいての発見だった。

夕方4時過ぎ。この日のパトロールを終え、福井市の基地に戻ってきた。

道路に異常がないか目を走らせる
道路に異常がないか目を走らせる

村井さんは「高速道路上は、落下物など交通に支障があるものがある。早急に見つけて対処できたときに、事故を未然に防げたということにつながるので、やりがいを感じている」と振り返る。

林さんも「故障とか事故で停車した時に、我々が行くとほっとしたようにありがとうと言っていただけるのでやりがいを感じる。公共性の高い仕事なのでしっかりとした仕事をしないといけないという気持ちでやっている」と話す。

高速道路の守護神、交通管理隊。利用者からの「ありがとう」を原動力に、危険と隣り合わせの仕事に日々取り組んでいる。

福井テレビ
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