小松「勧進帳の里」がリニューアル――海を望む憩いの空間、アタカテラスの全貌
海を眺めながら本を読み、地域の職人が生み出した工芸品に触れ、地元産のトマトをたっぷり使った料理に舌鼓を打つ――。石川県小松市にある文化伝承施設「安宅の関 こまつ勧進帳の里」が正式名称はそのままに、「ATAKA TERRACE(アタカテラス)」という新たな呼び名でリニューアルを果たした。カフェスペースだけではなく、セレクトショップやコワーキングスペースを備え、小松の歴史・文化・食をまるごと体感できるだけではなく、幅広い世代が思い思いのかたちで時間を過ごせる「市民の憩いの場」として、新たなページを開きつつある。

「この落ち着いた空間で海を見ながら本を楽しめる」
取材に訪れた石川テレビの寺西響アナウンサーが最初に口にしたのは「おいしい」という一言だった。コーヒーを片手に、窓の向こうに広がる海を眺めながら本のページをめくる――。「ATAKA TERRACE(アタカテラス)」はそんな贅沢な時間を提供してくれる施設だ。
「この落ち着いた空間の中で海を見ながら本を楽しめるっていいですよね」

寺西アナウンサーがそう感嘆するのも無理はない。日本海を望む開放的な空間にソファや植物が配置され、まるで上質なカフェにいるような感覚を覚える。コワーキングスペースとしての機能も備えているため、仕事や勉強に訪れる人にとっても使いやすい環境が整っている。
そしてこの施設が単なるカフェやコワーキングスペースにとどまらないのは、小松の歴史・文化・味が随所に織り込まれているからだ。訪れるたびに新しい発見がある、そんな重層的な魅力を持つ空間である。
約150年の歴史を持つ老舗書店が選んだ「書架」
寺西アナウンサーが取材中に手に取って読んでいた本は、施設の一角にある「書架」スペースから借りたものだ。棚には本や雑誌が整然と並び、来場者は自由に手に取ることができる。

この本を選定しているのは、石川県民にはおなじみの老舗書店の「うつのみや」だ。およそ150年前の明治時代に小松市で誕生。その縁で今回「書架」スペースのセレクトを担当した。
ATAKA TERRACE(アタカテラス)の池田俊也さんは、施設についてこう語る。
「幅広い世代の方々に利用していただきたくて、この雄大な景色をゆっくり楽しめるような施設になればいいなと思っております」

九谷焼をいまに――セレクトショップが映す「ものづくりの街」小松
書架の隣には、地域の職人にスポットを当てたセレクトショップが設けられている。小松が誇るものづくりの精髄が凝縮されたスペースだ。
まず目を引くのが、九谷焼を現代的に表現するブランド「九九谷(ククタニ)」の作品群だ。色鮮やかな陶器が棚に整然と並び、その隣にはブランドのTシャツやグッズも展示されている。代表的な商品はアメリカの靴ブランド「VANS(バンズ)」とのコラボレーションによるスニーカーで、伝統工芸の意匠を現代ファッションに落とし込んだ大胆な発想が注目を集めている。

池田さんはこのブランドについてこう説明する。
「この方自体が様々なバックボーンをお持ちの方で、現代、昔にとらわれないような九谷焼を展開しております」
九谷焼といえば、鮮やかな彩絵が特徴の伝統陶磁器として知られる。しかしこのブランドは、その枠組みにとらわれることなく、現代のライフスタイルや文化と積極的に交差させることで、新しい九谷焼の可能性を切り開いている。伝統と革新が交わる場所として、このセレクトショップは象徴的な存在だ。
鉄職人のフライパン、北陸唯一の木桶職人――ものづくりの技が光る展示
セレクトショップには、ほかにも小松の職人たちの手仕事が並んでいる。
池田さんが紹介したのは、鉄職人の工房「IRON WORKS KORU(アイアンワークス・コル)」の作品だ。一枚の鉄板をひたすら叩き、形を整えながら鍛造したフライパンは、工場で量産されたものとは異なる重厚感と美しさを持つ。

「ほんとに職人技が光りますね」と寺西アナウンサーが思わず声を上げるのも納得だ。
そのほかにも、見逃せないのが北陸でも唯一の木桶の職人の作品なども並ぶ。池田さんによれば、小松市内に何軒かある酒蔵でも、この職人が作った桶が実際に使用されているという。地域の産業を支えているのだ。セレクトショップを設けた理由について、池田さんは…。

小松の職人たちの技を、より多くの人に知ってもらいたい――。その思いが、ショップの一角一角に込められている。見て回るだけでも、職人たちの「思い」が感じられる空間だ。

入場無料になった「勧進帳ものがたり館」――歌舞伎十八番の世界に浸る
リニューアルを機に隣接する「勧進帳ものがたり館」の入場料が無料になった。これまで300円の入場料が必要だったが、勧進帳の世界観を多くの人に知ってもらいたいという思いからだ。
館内のシアターでは、歌舞伎十八番のひとつに数えられる「勧進帳」の舞台の一端を映像で楽しむことができる。さらに、隈取メイクや勧進帳の舞台衣装を体験できるコーナーも設けられており、観るだけでなく「体感する」要素が充実している。
大きなソファとキッズスペース――すべての世代が安らげる場所
カフェとレストランスペースもこの施設の自慢だ。大きなソファが配置されたゆったりとした空間は、読書や会話、あるいはただぼんやりと海を眺めるのにもうってつけだ。そして奥のほうにはキッズスペースも設けられており、小さな子ども連れのファミリーも気兼ねなく時間を過ごすことができる。

「訪れた人が思い思いに過ごせる場所」。日本海の自然を楽しむ人、コワーキングスペースで仕事をする人、セレクトショップで小松の工芸品を眺める人、子どもと一緒に歌舞伎体験をする人――それぞれの目的と速度で、この空間を使いこなすことができる。
小松産トマトを丸ごと1個―「とろとろ小松トマトのナポリタン」
「いやー、おいしそうですね」と思わず声を上げ、寺西アナウンサーが一口いただく。

「トマトの甘酸っぱさが広がります。非常においしいです」
そして、丸ごと乗ったトマトをカットし、ナポリタンとなじませて味変!トマトからジューシーでフレッシュな甘みが染み出し、トマトの深い味わいが楽しめる。

「たくさんの方に来ていただけた」――初日の手応えと今後への展望
リニューアル初日はあいにくの天気だったという。しかし池田さんの表情は明るかった。

「あいにくの天気だったんですけれども、たくさんの方に来ていただけて、楽しめていただけたかと思います」
今後について池田さんは
「幅広い世代の方々に利用していただきたくて、この雄大な景色をゆっくり楽しめるような施設になればいいなと思っております」
(石川テレビ)
