「県警本部長が警察官による盗撮事件の隠ぺいを図ったことが許せなかった」――。そう主張してきた元生活安全部長の裁判が、事件発覚から約2年を経てようやく動き出す。鹿児島地裁が証拠開示を命じた決定に対し、鹿児島地検が抗告しなかったことが明らかになり、起訴されていなかった盗撮事件も審理の対象となる見通しとなった。

「公益通報」か「情報漏えい」か、問われる県警の隠ぺい

この裁判は、鹿児島県警の元生活安全部長・本田尚志被告(62)が2024年3月下旬、定年退職後に県警の内部資料を北海道の記者に郵送して漏らしたとして、国家公務員法違反の罪に問われているものだ。

本田尚志被告
本田尚志被告
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本田被告は逮捕後、漏えいした文書の内容について語り、未発表の警察の不祥事を明らかにした。なかでも大きな焦点となっているのが、枕崎警察署員が起こした盗撮事件だ。本田被告は法廷で「当時の野川明輝本部長が事件の隠蔽を図った」と主張。自身の行為はその隠ぺいを明らかにするための「公益通報」であり、無罪だと訴えている。

一方、鹿児島地検はこの盗撮事件については起訴せず、別のストーカー事案に関する情報漏えいについてのみ本田被告を起訴していた。

地裁が証拠36点の開示を命令、約1年半の整理手続きを経て

約1年半にわたり公判前整理手続きが続けられるなか、弁護側は起訴されていない盗撮事件についても審理の対象にすべきとして証拠の開示を求めてきた。

3月24日、鹿児島地裁の小泉満理子裁判長は弁護側の請求を認め、盗撮事件の捜査経過を示す証拠36点について地検に開示するよう命じる決定を下した。

この決定に対しては検察・弁護側ともに不服申し立て(即時抗告)が可能だった。しかし3月30日、弁護側は即時抗告の期限である3月27日までに地検からの抗告がなかったことを明らかにした。弁護側も即時抗告を行わない予定だとしており、地裁の決定はこのまま確定する見通しだ。

裁判の行方と地域社会への影響

今回の裁判が注目される最大の理由は、捜査機関である警察組織の内部で何が起きていたのかが、法廷という公の場で問われることになるからだ。

県警本部長が盗撮事件の隠蔽を図ったのか否か。そして内部情報を外部に伝えた本田被告の行為は、組織への背信行為である「情報漏えい」なのか、それとも不正を社会に知らせる「公益通報」なのか。

この二つの問いは、警察組織の透明性や公益通報制度のあり方にも直結する、極めて重要な論点だ。

事件発覚から2年近くが経過し、ようやく裁判が本格的に動き出す。鹿児島県民にとっても、県警に対する信頼をどう取り戻すかという点で、この裁判の行方は見逃せない。

なお、現時点で裁判の具体的な日程は未定となっている。

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鹿児島テレビ
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