深夜の街で妻が知人男性と交わしたキスや抱擁──。
その触れ合いは、夫婦の絆を壊した「不貞行為」なのか、それとも法が介入できない“感情の揺らぎ”なのか。東京地裁は17日、夫の請求を退け、「キスや抱擁だけでは不貞行為とはいえない」と結論づけた。一般に“不貞と思われがちな行為”と、法律上の「不貞行為」の境界を浮き彫りにした判決となった。

夫婦のすれ違い・・・

原告の男性は、2009年に妻と結婚し、2人の子を育ててきた。

原告は2023年7月、探偵業者に妻の素行調査を依頼し、3週間ほど調査が実施された。原告はその費用として、約234万円を支払っている。

一方、被告は東京都内でバーを経営する男性。2023年夏頃から妻と被告は2人で会うようになっていた。

素行調査によると、2人は路上で手をつないで歩いたり、飲食店を訪れた後に公園のベンチで缶ビールを飲みながら過ごし、キスをしたことなどが確認された。

さらにその後、被告が経営するバー(その日は定休日)に移動し、1時間余り滞在した。被告のバーは、カウンター3席と荷物置きが1つだけのこじんまりとした店だ。

調査期間中のある日は、妻が被告のバーを訪れ、未明に閉店した後、店内に2人だけが残った。その後数時間滞在し、午前3時に店を出て妻の自宅付近まで移動し、路上でキスをして別れている。

別の日にも、2人は路上でキスをし、深夜のバーで2時間ほどともに過ごしていた。

これらの“親密な行為”が複数確認されたことを踏まえ、原告は被告の男性に対して約800万円の損害賠償を求めて提訴した。

肉体関係を前提とした「裏切り」 原告主張

原告である夫は、被告と妻が複数回にわたって肉体関係を持ったと主張した。

さらに、手をつなぐ、腰に手を回す、キスをする、抱き合うといった行為そのものが、法律上保護される夫婦生活の平穏を侵害する「不法行為」に当たると訴えた。

また、原告と妻の関係については、2023年には家族で外出をしたり、夫婦で性交渉があったりしたとし、夫婦関係は破綻していないと主張。

精神的苦痛は甚大であり、慰謝料や調査費用など総額807万円の支払いを求めた。

「不法行為にあたらない」と被告側

被告の男性は、妻との間に肉体関係があったとする原告の主張を否定した。

また、キスや手つなぎなどの行為について認めるものの、これらの行為が「不貞行為」に当たるとはいえないと主張した。

補助参加人として訴訟に参加していた妻も、被告男性との肉体関係を否定し、キスやハグなどの行為も「不貞には該当しない」と裁判で主張した。

妻は、原告である夫に2019年に離婚を申し出た後、関係改善のために続けていた話し合いも1年ほどで途絶え、修復不能だったとした。被告男性も妻も、夫婦関係がすでに破綻した状況下で会っていたと主張したのだ。

裁判所が示した法的基準

東京地裁はまず、妻と被告が親密な関係にあったことを認めた。

東京地裁
東京地裁
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だが、深夜に2人きりでバーで過ごしたことについては、手狭な店の構造や滞在の状況から「バーで2人だけで過ごしていたとしても、性交渉をしたと認める事はできない」と判断した。

さらに、路上でのキス、抱擁、深夜に2人きりで過ごす時間など、“夫への裏切り”や“恋愛関係”と受け取められるであろう行為については、「不法行為を構成するとは認めがたい」と判断した。

その理由について判決では、キスや抱擁は、性交渉またはそれに「準じる行為」とはいえず、それが行われた期間も長くはないことを加味すると、これらの行為について「夫婦生活を侵害する不法行為を構成するとは認めがたい」と断じた。

被告の行為は不法行為ではないとの判断であるため、夫婦関係の破綻の有無については「判断するまでもない」とした。

「手つなぎはどうか?」「ハグは?」「キスはどうなのか」
「浮気の線引き」は巷間議論されることが多い。しかし今回の判決では、深夜に2人きりで密室で過ごしたとしても、密室の広さなどから性交渉の存在は否定され、キスやハグも不法行為とは認められなかった。

プライムオンライン編集部
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