コメ農家が営む「おにぎり店」。長野県松本市のコメ農家の女性が、家族で育てたコメをアピールしようとおにぎりの店を始めました。味はもちろん見た目にもこだわっています。
■おにぎり専門店
炊きたてホカホカのご飯。軽く握っておにぎりに。
塩むすびや梅など定番のものから、のりの代わりにレタスを巻いた変わり種もあります。
客:
「全ての素材が際立って、全部がおいしい。感動して食べている」
2月にオープンしたおにぎり専門店「御結び ていねい」。
店があるのは松本市の中心部です。
一見すると居酒屋のようですが、ランチタイムに間借りして営業しています。
■実家のコメをPRしたい
店主の渡辺晴香さん(30)です。
実家は市内のコメ農家で、使っているコメはもちろん実家のコメです。
御結び ていねい 店主・渡辺晴香さん:
「(実家のコメは)甘みがすごく強い。だからおコメだけで食事が完結する。両親がずっとやってくれている稲作、コメがPRできたらうれしいな」
隣にいるのは、母親の正枝さん(59)です。
家業の傍らで店を手伝っています。
母・正枝さん:
「自分でやると決めてやりだしたことに対して、たくましく思う。マイペースにみんなに幸せを与えてもらいたい」
■苦しい時…両親の一言が転機に
渡辺さんが作るおにぎりには、精神的に苦しい時期に支えてくれた家族への「恩返し」の思いが込められています。
県内の短期大学を卒業後、市内の病院で医療事務の仕事をしていた渡辺さん。
やりがいを感じていましたが、日々の業務に追われる中、次第に心をすり減らしていました。
仕事に行けなくなる日も増え、辞めるか悩んでいると―。
渡辺晴香さん:
「両親に『辞めたいかも』と相談して、予想では『もうちょっと頑張ってみれば』とか後押しをくれるのかなと思ったら、その場で『退職願を書きなさい』と言ってくれて、『いいんだ、辞めて』という安心感をすごくもらった」
両親の後押しもあり、2022年に仕事を辞めると、実家に戻って農業を手伝うようになりました。
当時はコロナ禍で外食需要の減少などでコメの消費が落ち込み実家でもコメが余っている状態でした。
渡辺晴香さん:
「(当時は)おコメが余る時代だったのでもったいないなとすごく思って、何か力になれないかなと『おむすび屋』をやろう」
■支えてくれた両親の力になりたい
「苦しい時期に支えてくれた両親の力になりたい」。
渡辺さんは、その後、農業を手伝いつつ、ヨガインストラクターとしても働きながら、おにぎり店を開くことを目指してきました。
場所を探していたところ、2025年、知り合いから居酒屋を間借りして営業することを提案され、思い切って店を開くことを決めました。
渡辺晴香さん:
「『そんなチャンスをいただけるなら、こちらを貸してほしいです』と」
間借りしている店の店主・田辺史和さん:
「うれしいですよね。若い人に飲食店盛り上げてもらいたいので」
■こだわりは「ふわふわ」
オープンから約1カ月。次第に客も増え、手ごたえを感じています。
渡辺晴香さん:
「皆さん、おいしいというふうにおっしゃってくださっていて、おコメの魅力が伝わっているなと実感できるのがすごくうれしいです」
炊き方やにぎり方にもこだわっています。
コメに含まれる水分が多いため、炊く時は水を少なめに。
ふっくらと仕上がるよう、両手で2、3回転がすように優しく握ります。
渡辺晴香さん:
「(握るのは)本当にふわふわで十分」
注文に合わせて具材をトッピングして完成です。
■レタス巻きや月替わりも
定番だけでなく変わり種もあります。
のりの代わりにゆでたレタスを巻いたのは、「そぼろルーローむすび」。
具の豚肉は八角などのスパイスとしょうゆやトウガラシなどで甘辛く味付けしています。
記者が試食―。
(記者リポート)
「甘辛いお肉とご飯がとても合います。甘みなどおコメ本来の味もしっかり感じられるので、シャキシャキとしたレタスとも合っていておいしいです」
月替わりのメニューも。
3月は、酢飯をのりで巻き桜デンブやサヤエンドウ、錦糸卵をトッピングした色鮮やかなおにぎりを提供しています。
■客も絶賛「コメが違う」
市内から訪れた客:
「いつも食べているおコメと全然違って、おコメってこんなにおいしいんだと思ったのが衝撃で」
市内から訪れた客:
「(おにぎりが)ふわふわで、のりの外にも塩がついていて、コメとすごくマッチしておいしかったです」
母親の正枝さんは娘の挑戦を温かく見守っています。
母・正枝さん:
「(恩返しの)気持ちはすごくうれしいです。おいしいと思ってくれる人に家庭的な感じで、リピートしてくれる人が温かい感じで入って来られたらいいかな。そんなお店を目指して“丁寧”にやってもらえればいいかな」
■ほっと一息つける場所に
つらい時期を乗り越え、新たな日々を歩んでいる渡辺さん。
実家のコメをアピールしつつ、訪れた人がホッとできる店にしていきたいとしています。
御結び ていねい 店主・渡辺晴香さん:
「忙しい日々の中で、ここだけは時間がゆったり流れるようにしたい。お仕事の合間、お休みの日でもいいし、ほっと一息つける所として足を運んでいただけたら」