今年1月、再審請求が退けられた 『菊池事件』。誤った表記があった熊本地裁の決定書について、裁判所が訂正せずに判例としてホームページに掲載していることが分かりました。これについて専門家はTKUの取材に「判例として残り続けることを考えなかったのか」と苦言を呈しています。
【刑事法専門 熊本大学 岡田 行雄教授】
「見てほしくなかったら掲載されない。見てほしいならもっと慎重にチェックする
べきではなかったか」
ハンセン病患者とされた男性が殺人などの罪に問われ、無実を訴え続けるも1962年に死刑が執行された『菊池事件』をめぐっては、熊本地裁が今年1月、遺族の再審請求を棄却しました。
遺族はこの決定を不服とし、即時抗告。2月から福岡高裁での審理が始まりました。
しかし、この事件をめぐっては、熊本地裁の決定書に複数の〈誤表記〉があったことが分かり、弁護団や専門家から厳しい意見が出ていました。
こちらは裁判所のホームページです。
誤りが訂正されないままこの決定書がデータベースに掲載されています。
菊池事件の再審請求をめぐっては、刑事訴訟法で明文化されていない『当時の手続きが憲法違反であることが再審を認める理由になるかどうか』が注目されていました。
熊本地裁は再審開始を認めませんでしたが、「当時の手続きに憲法違反があった場合に再審を開始すべき余地がある」と踏み込んだ判断を初めて示しました。
しかし、決定書にはその重要な検討過程で、実際には存在しない憲法39条3項を
記載するなどの誤りが判明。
これについて専門家は…。
【刑事法専門 熊本大学 岡田 行雄教授】
「憲法違反が前の刑事裁判であった場合、それを理由に再審ができるかできないかを
判断した初めてのケース。『憲法違反はあったが再審はしない』という最も重要な根拠になる部分での書き間違い」
また、岡田教授は「刑事訴訟法には、決定書を書き直すための規定がない」と指摘。
裁判所が訂正せずに判例としてホームページに掲載していることについて苦言を呈しました。
【刑事法専門 熊本大学 岡田 行雄教授】
「『裁判例検索』に掲載されたことによって誰でも決定書にアクセスできるようになった。今後、心ある研究者が次々と研究していく中で(誤表記が)ずっと残ってしまう。〈それを考えなかったのか〉と思わざるを得ない。研究者たちが〈なんだ、これは〉とどうしても思ってしまう。ずっと残る、書き換える制度がないから」
熊本地裁はこの問題についてTKUの取材に、「コメントする予定はない」としています。