「地震の揺れから助かったはずの命が、なぜ失われてしまうのか?」そこには、直接的な被害を免れた後の避難生活の過酷さがある。宮崎県は南海トラフ巨大地震の被害想定を見直し、今回初めて「災害関連死」の人数を想定に入れた。避難生活で命を落とす「災害関連死」の脅威と、長期にわたる避難生活への備えについて考える。

南海トラフ巨大地震「被害想定」を見直し

東日本大震災からまもなく15年を迎えようとする中、宮崎県には南海トラフ巨大地震の脅威が間近に迫っている。2025年9月に発生確率が改定され、今後30年以内に60%から90%程度以上とされる南海トラフ巨大地震は、県内で甚大な被害をもたらすことが予想される。

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宮崎県が想定する南海トラフ巨大地震の規模は、山間部で震度6弱から6強、沿岸部では最大震度7の揺れが襲う。これは東日本大震災や熊本地震、能登半島地震と同等の揺れだ。

さらに、沿岸部には最短で14分(日南市)、最大で17メートル(串間市)の津波が到達すると予測されている。

東日本大震災時には最短25分で津波が到達した。その津波で甚大な被害をもたらしたことを踏まえると、より早く到達する可能性のある津波には強い恐怖を感じる。

 

県は先日、南海トラフ巨大地震の被害想定を見直した。早期避難率の向上を見込み、死者数は約1万5000人から約1万1000人に大幅に減少したものの、建物被害は約8万棟から約8万2000棟へ増加。避難者も約37万人から43万4000人と大幅に増えている。そして今回、初めて「災害関連死者数」が想定された。その数、約1700人から3500人だ。

「災害関連死」の脅威

「災害関連死」とは、地震や津波などの災害において直接的な被害で亡くなるのではなく、災害時の負傷の悪化や避難生活における心身の負担による疾病で亡くなった人の中で、災害との因果関係が認められるものを指す。

つまり、地震の揺れや津波で直接的に命を落とすのではなく、その後の避難生活の中で亡くなってしまうことだ。

 これまでの巨大地震における「災害関連死」の人数は、その深刻さを示している。

熊本地震では、直接死が55人であったのに対し、「災害関連死」は223人と、4倍以上に上った。能登半島地震でも、2026年2月時点で直接死は228人、「災害関連死」は476人と2倍以上となり、現在も増加し続けている。

「災害関連死」の主な原因の1つは、長期に及ぶ避難生活とされている。

能登被災地支援の専門家が語る過酷な現実

能登半島地震発災後5日目に輪島市へ入り、約2週間にわたり避難所の支援に当たった宮崎大学医学部看護学科の板谷智也教授に話を伺った。

宮崎大学医学部看護学科 板谷智也教授:
発災後5日目に能登の輪島市に行った。私は元々輪島市出身なので、できる支援はしていこうと2週間ぐらいは輪島市に滞在して避難所を回ったり、福祉避難所の支援をしたりしていた。

板谷教授は「なかなか体験しないと想像しにくいかなと思う。私自身も行ってみて初めて分かったが、本当に過酷」と話した。

輪島市の被害状況(2025年9月時点)
人的被害 死者227人 行方不明者2人
住家被害 全壊2311棟 半壊3971棟

板谷教授:
まず水が一切なく、電気も来ないため夜は真っ暗な状況。水が使えないため手も洗えず、歯磨きもできない。それが1週間、10日、2週間と続いた。その中で震度5クラスの強い余震が頻繁に発生し、「これから自分たちはどうなっていくのだろうか」という不安を抱えながら生活を続けることは、非常に大きなストレス。

輪島市では、断水が約1万1400戸、停電は約1万3000戸、復旧には数か月かかり、長期間不便な避難生活が続いた。

また、震災後1年間の余震は2122回(このうち震度6弱:2回 震度5強:9回 震度5弱:8回)。

「災害関連死」について板谷教授は、「統計的に明らかになっていることがある。大半は高齢者であり、呼吸器系や循環器系疾患で亡くなるケースが多い。そのベースにはストレスがあることが分かっているため、具体的な対策を皆で考えていく必要がある」と指摘した。

板谷教授の話にある通り、「災害関連死」の犠牲者の9割以上が70歳以上の高齢者で占められ、わずか半年以内に命を落としている現状がある。

 災害関連死を防ぐための備え

能登半島地震における「災害関連死」の原因を見てみる。

最も多かったのは地震のショックや余震への恐怖による肉体的・精神的負担だった。次いで多かったのが電気や水道などが止まることによる負担。3番目は社会福祉施設の被災による介護機能の低下。そして4番目が避難所などでの生活での肉体的、身体、肉体的精神的負担となっている。

 長期間に及ぶ不便でストレスがかかる避難生活が高齢者の心や体に負担となり、その結果、循環器系や呼吸器系の病気を発症して亡くなるケースが多いということだ。

能登半島地震 災害関連死の死因
循環器系疾患(心疾患・脳血管疾患など) …30.4%
呼吸器系疾患(肺炎など) …28.0%

南海トラフ巨大地震はいつ発生するか予測できない。地震発生時の準備だけでなく、その後長く続く避難生活まで見越した備えが重要だ。

(テレビ宮崎)

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