仙台市が計画する音楽ホールと震災メモリアル拠点の複合施設は、3月にも基本設計案がまとまる見込みです。しかし、建設費が大幅に増えるなど当初の計画とは異なる点も出てきて計画を疑問視する声も上がっています。

記者リポート
「現在午後8時です。こちらの会場では、仙台市が計画する複合施設の建設のあり方を巡り、2時間以上にわたって意見交換が行われています」

仙台市青葉区で開かれた、意見交換会。集まったのは、仙台市の複合施設建設に、疑問や不安を抱く市民など、およそ70人です。

音楽ホール・メモリアル拠点を考える市民会議 高橋直子代表
「期待されているものがどういうものになるのか分からないというところで、不安を感じているところが大きい。そのへんの説明を(市には)もっとしてほしい」

仙台市が計画する「複合施設」とは、クラシックやオペラなどの公演を想定した、2000人規模の「音楽ホール」と、東日本大震災の「メモリアル拠点」を備えるもの。地下鉄東西線・国際センター駅北側に建設する計画です。

設計は、藤本壮介氏。大阪・関西万博の大屋根リングなどを手がけた建築家です。
市は、2031年度の開館を目指し、来月中にも、基本設計案をまとめる方針です。

仙台市の音楽ホールの計画は1992年に始まりましたが、財政事情などを理由に一旦凍結されました。
計画が再び動き出した経緯について、仙台市は「震災からの復興の過程で音楽ホール整備の機運が高まった」と説明します。

仙台市青葉山エリア複合施設整備室 佐々木慎也室長
「平成13(2001)年に、当時の事情によって一度事業が凍結したというところがありますけれども、東日本大震災の過程の中で、改めて音楽の力が認識されたということから、現在また議論がスタートして、今整備を進めているところ」

しかし、計画には、複数の懸念材料があります。

【膨れ上がる事業費】
建築費は、当初の計画より大幅に増え、去年11月の時点で582億円に膨れ上がりました。
また、建築費以外の整備費用を含めると、総事業費はおよそ646億円に及んでいて、実際にはさらに増える可能性もあります。

仙台市は、建設資材の高騰などを理由に挙げ、郡市長も理解を求めます。

郡市長
「ファンドをつくってご協力いただけないかとか、ふるさと納税なども活用できないかなど、いろいろな知恵を絞りながらやってまいりたい」

とはいえ、巨額の事業費は市民に重くのしかかります。
専門家は、近年の人口減少の状況を踏まえ、こう指摘します。

宮城大学事業構想学群 上森貞行准教授
「これまで双方で持っていた施設需要が今後も継続する部分と、今まで需要に応えられていなかった部分がどれだけあるかによって、施設が供給過多になってしまうのか、それともいい形で運営されていくのかが決まってくる」

仙台市は2020年に需要想定調査を実施し、将来に渡り十分な需要があることを確認したとしていますが、具体的な調査結果は公表していません。

先日の意見交換会でも需要や多額の費用について疑問視する声が上がりました。

参加者
「どれだけ大きなもの、どれだけいいものを作っても、需要がなければただの持ち腐れになってしまう」
「今の社会情勢、財政状況を鑑みるのならば、一度立ち止まってもいいのではないか」

【“文化芸術”と“災害文化”の融合とは】
仙台市が、「音楽ホール」と並び複合施設の柱に位置づける、「震災メモリアル拠点」。
基本設計中間案には、「文化芸術と災害文化が融合する、世界に類のない施設を目指す」と記されていますが、ここにも疑問の声が上がっています。

参加者
「やっと今回(音楽ホールが)形になってきたが、突然令和4年、(震災メモリアル拠点と)一緒になる話」
「(災害)文化という言葉がどこからきたのが、そこが見えていない」

4年前、突如持ち上がった複合施設とする計画。そして併せて登場した「災害文化」という耳慣れない言葉。

メモリアル拠点の担当課は仙台放送の取材に文書で回答しました。

「今後も災害が発生する可能性を持つ都市として、仙台ならではの災害文化を創造し、沿岸部と中心部の2拠点で継承していくことが被災地最大都市としての責務だと考えている」
「仙台市では、災害は発生するものと認識した上で、災害が起きても、それを乗り越える術を持った社会文化を『災害文化』と呼ぶことにした」

仙台市が作り出した「災害文化」という言葉。市は、「災害文化は『災害から立ち上がる』点を重視しており、文化芸術と親和性が高い」としています。

【県の音楽ホールとの“二重行政”】
記者リポート
「宮城野区の仙台医療センター跡地です。仙台市が計画する複合施設とは別に、県はこの場所に、音楽ホールを備えた複合施設の建設を始めています」

県が去年着工した複合施設は、「県民会館」と、「みやぎNPOプラザ」を移転・集約するもので、仙台市と同じように、2000席の音楽ホールを備えます。

仙台市と県それぞれが同じ仙台市内に作る大規模な「音楽ホール」。利用想定を見ても用途が重複しています。

宮城大学事業構想学群 上森貞行准教授
「どちらも2000席となると大きな催事を想定してる、来場者からしっかり入場料を取るコンサートなどが想定されると思うが、(蓋を)開けてみたら実は同じターゲットを狙っていて誘致も半々になってしまうような場合だと、完全に競合してしまったという形になる」

仙台市と県、それぞれの考えは…

仙台市青葉山エリア複合施設整備室 佐々木慎也室長
「本市のホールにつきましては、“生の音”に対して優れた音響性能を重視していく、というところがありますので、コンサートホール形式にした際には、舞台の周りを客席が取り囲んで聴衆が一体感を感じられるというサラウンド型となるというのが特徴。主要都市を巡回する興行公演でも、2000席規模のホールが必要とされているというところで承知している」

一方、県は。

県消費生活・文化課 遠藤尚志課長
「テクノロジーの進化にも対応し、多様な音響演出ができるよう“立体音響”や“3Dサラウンド”とも呼ばれ、没入感が期待でき、スピーカーによる残響の制御が可能な“イマ―シブオーディオ”を導入する。お互いそれぞれ機能面を補完し合いながら、運営していければ」

県と市は、密に話し合いを重ねながら、機能を棲み分けていると強調しますが、明確な違いは見えてきません。

意見交換会を主催した団体の代表は、「誰もが納得できる説明が必要」と、市に丁寧な対応を求めます。

音楽ホール・メモリアル拠点を考える市民会議 高橋直子代表
「35年前から仙台の音楽堂を楽しみにしていた人たちが、いっぱいいるっていうのは実感としてある。ただ震災があって、メモリアル拠点とどう複合するのかっていうのが、その複合の仕方というのがまだちゃんと煮詰まってないところがある。市民説明会とかそういったようなものを、市が選んだ人にするのではなくて、一般の人たちに向けてもっと丁寧にするべきじゃないかと私は思う」

仙台放送
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