鉄道の魅力を熱くお伝えする野川キャスターの『てつたま』です。
野川さんお願いします。

【野川諭生アナウンサー】
前回に引き続き、広島のデザイン会社、GKデザイン総研広島を取材しています。
今回は、当時の資料を片手に、車両デザインを決めていく過程を見ていきます。

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「まず、先頭部のデザインというところでも、これだけ考えるんだなと…」
「基本的な車両のカラー、イメージというのはできていました。とはいえ、顔のディテールはどういうことができるのか、網羅的に、これを検討したか、してないか、というのは問われるのです。『こうしたら、こういうことになる』、『こうしたら、こうなる』っていうことを1回、全部出し尽くして、『やっぱり、こうだよね』っていう話を組み立てていったと」
「微妙な角度であったり、そういった所でいろいろな物が生まれたんだなと。ちょっとこの先も進んでいきましょうか。あっ!外観デザインがA案、B案、C案に絞られたということで」

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「A案というのは、できるだけ窓をラウンドさせてみせる。B案はちょっと個性的な形。広島のHというシンボルを入れてみたと。C案は縦の流れ。(車体の)背中がグレーなんで、それをそのまま前におろしてくるという…」
「いろいろ書いてありますね。(A案は)一般的なので新規性は少ない。まあ奇抜さが少ないということは、裏返せば、わかりやすいデザインであるということも書いてありますし。(B案は)構造は最もユニークだけれども、シンプルさにかける…うん、どれも長所も、課題点もあったのかなと思うんですけれども、結果、この中ではC案になったと。ただ唐澤さん。これ、私が知っている6000系の顔とはちょっと違う感じがします」

実際に導入された6000系と何が違うのか?デザインしていた時は運転席がどこになるか、まだ分からなかったため、結果、屋根と車体をつなぐ支柱、ピラーが、運転席付近に存在する形になってしまったのです。

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「当然、運転士の方々からの意見としては、視界妨害になると。やっぱり公共交通なので、安全第一。じゃあ、ピラーの位置を外に広げてみてはどうかとか、ピラーをどうするかという話は、ずっとその後も続くんですけれど。ピラーを取っちゃうと×になっちゃうんですね、顔が。デザインを考える上では、もうちょっと流れが欲しいなというところがありました」
「ここから本当にデザイナーの思いと、運転席ですから運転士さんの考えと、あるいは発注元たる組織の考えと、すり合わせていくのかなと」

さらにもう一つ、当初の案からデザインが大きく変更された場所があります。

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「窓の形も違う感じがします」
「この画ではドアの窓がすごく下まで広いですよね。実際にできた車両は、そこまで下げてない。当時は初めての高架鉄道だったので、そこから、『もし、ガラスが割れて人が落ちてはいけない』とか、当然安全面を気にする人もいたんですけれども。割れるか、割れないかっていうのは非常に難しい判断なんですけど。
もしも硬いバッグを持っていて、ぶつけたら割れてしまうんじゃないかという恐れから、できるだけ上げてくれと」
「デザイナーとしての理想といいますか、思い描いたものと、現実的に問題としてあるもの…ここを擦り合わせていった結果、6000系のこの辺りのデザインになっていったんですね」

そして、客室のシートデザインは当時まだ珍しかったセパレートシートも候補になりましたが、乗客一人当たり43センチの寸法しか取れず、最終的に、最も一般的だったロングシートのA案が採用されました。
その内装に対して、デザイナーとしての思いも記されています。

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「唐澤さんここ。私は付箋に二重丸をつけています。個人的に思いがあふれているんじゃないかなと思った文章がここに見えたんですね。『今回、実現は不可能であっても、今後の詳細設計において、少しでもこの方向を実現するべく検討していきたいものである』断念したものもあったけれども、方向性として実現する方向に持って行きたい…滲んでますね」
「はい。新しい乗り物であるっていうことで、シートのデザインってすごく重要なんですね。寸法的にそれは出来ないんですけれど、何かしら人に対して快適性だとか、座りやすさだとか、新しい乗り物であることを残したいという思いがありました」

こうして、アストラムラインのトータルデザイン策定業務を終え、20数年…。
何の因果か、老朽化した6000系の後継車両をGKデザイン総研広島が再びデザインすることとなりました。

【GKデザイン総研広島コミュニケーションデザイン部 佐藤伸矢シニアディレクター/野川アナ】
「30年ぶりに新しくなるよということで、最初に唐澤が色々話したように、すごく考えられた所でのデザインを作り上げていて。物語も平和という街のアイデンティティがあって、その景色をこの車両に込めて30年走らせ続けて来たという思いがデザインサイドにはありました。で、『車両が新しくなるよ』ということなんだけれども、その車両の色とかシンボルマークの考え方、柑子(こうじ)の色・クロムイエロー。人の集まりでもって、ドットができてるとか、整地感とか。そういうところはとにかく、変に崩す話ではないなと。じゃあ、どこで変えていくかというところで、実は16ドットのシンボルマーク。これの純度…『純度を上げる』という言い方を唐澤としていました。例えば、これまでの30年は平面的にこの車両のグラフィックとかサインに16ドットが展開されたんだけれども、それを少し立体にしてみようとか。そういったところで、アイデンティティをもう少し幅を広げながら見せ方を変えて新しさを表現しようということで。ここにですね、16ドットが消えた状態、光った状態ということで。光でもって、シンボルを見せるということで新しさを作っていこう、ということを実は込めています。こういったことが一つで、もう一つは窓ですね。6000系のアイデアスケッチの中に、実は天井から16個穴をあけて、透過させたらどう?っていうスケッチも実はあったんです」
「屋根に穴をあけて…」
「それを7000系では、側面に光を透過させて実現するという新しい取り組みをしている」
「やっぱり7000系というのは、6000系でなかなか形にならなかった想いを、30年の時を経てアップデートさせて、詰め込んだ」
「そうですね、純度を上げた」
「『純度を上げた』。いい言葉ですね」「できないことの純度をあげたと、いうふうなことがありました」
「瀬戸内の柔らかい日差しを受けて、光をパッと照らしているというのは、まさに平和の象徴という感じがありますよね」

6000系でできなかったことへの『純度を上げた』。
ということは…

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「6000系から7000系というところで、私が見ていて『おっ!』と思ったのは、やはりですね、座席でございます。カッコいいセパレート型のシートが7000系にはついていますよね。ここもやはり思いが・・・」
「そうですね。それが一番の思い入れがあったところで。乗り物のシートって、背中の低い所を支えても全然、役に立たないのですよ。揺れるでしょう?そうすると揺れた分だけ、隣の人と当たるとか、寸法以上に狭く感じるんですよ。体をちゃんと支えてくれるということと、ちゃんとした姿勢で座れるということが、乗り物のシートとしては重要なので。今回、セパレートシート。これをアストラムラインに入れました」

6000系車両で心残りだった座席デザインを、30年越しに再びデザインする機会に恵まれ、もう一つ気がかりだったあの場所も…

【GKデザイン総研広島 プラクティカル・アドバイザー 唐澤龍児さん/野川アナ】
「ドア窓の大きさ。7000系は唐澤さん、広げましたね」
「はい。アストラムラインの7000系以前に、いくつかの地方の新交通システムで、トライアルをしてきたんです。モノレールも含めて。下に窓があることによって、ベビーカーに乗った赤ちゃんが下の窓から景色を覗いているシーンにちょうど出くわして。それがよかったのですね。『あ、やっぱり下まで窓があると、いろんな人が外を眺められる』というのがあったので。これは是非、アストラムラインに取り入れたいと。もちろん安全性の問題が脳裏にあったんですけれど、6000系の場合、幅が広いんですね、ガラスの。7000系は人が落ちないように(ガラスの幅を)ちょっと狭くしています。
そういう幅と、やはり上下の視界を確保することを、この新しい車両では優先させてもらって」

7000系車両には30年越しに実現したデザイナーのアイデアが詰まっているわけです。
そして次回は…アストラムラインの牛田駅へ。
アストラムラインの駅舎をめぐります。

テレビ新広島
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