近年、デジタル化が急速に進む教育現場に目を向けます。
タブレット端末の導入に離島と本土をつなぐ遠隔授業、そして新たに登場したAIの先生など、今、大きく変わりつつある現場の最前線を取材しました。
鹿児島市の名山小学校。
2年生の児童が手にしているのはノートと鉛筆、ではなくタブレット端末です。
懸命に取り組んでいるのは算数の問題。
名山小学校・中村笑子教諭
「この折り紙を同じ大きさに2つに分ける線を引いてください」
鹿児島市教育委員会は2022年に公立の小学校で児童1人につき1台のタブレット端末を導入。
このクラスでは児童が教科書に載っているQRコードを読み込み、画面に表示された問題に次々に挑戦していきます。
児童
「ねえどうやったらこれって動かせるの?」
教師が教壇で授業を行い、児童が同じペースで学ぶ一斉授業とは異なり、習熟度にあわせて児童が自ら考えて解きすすめる主体性を尊重した授業が行われていました。
児童
「タブレットのキーボードを使ったりするのが楽しい」
Q.黒板とタブレットどっちが楽しい?
「こっち、タブレットが楽しい」
Q.何がわかりやすい?
「何度も使えるところ。デジタル教科書とか何度もやり直しがきく」
中村教諭
「子供たちに求められることが自己決定。非認知能力を育てることを昨今言われてきている。そういう力を育てるためにも、今やっている自己調整学習に取り組んでいる」
今、教育現場ではこうしたデジタル化の取り組みが急速に進んでいます。
鹿児島市から南に約550キロ離れた沖永良部島。
和泊町にある島唯一の高校、沖永良部高校の情報の授業では教壇に教師の姿がありません。
「きょうはOSについて勉強しようと思います」
行われていたのは県本土と離島の高校を結ぶ遠隔授業です。
県は教員の数が限られる離島の高校でも本土と同様の学習環境を整えようと、2025年度から数学や英語など6科目で単位が取得できる遠隔授業の取り組みを開始。
山本成人教諭
「先生めっちゃ驚愕している。何に驚愕していると思う?」
「日本全国で寒気が入ってきて大変だというのに上着を着ていない。さすが沖永良部だね」
鹿児島市に設けられた遠隔授業配信センターでは5人の教師が離島向けの授業を行っています。
遠隔授業の導入によって専門性の高い授業やこれまで受けられなかった科目も学べるようになり、進路の選択肢が広がることが期待されています。
沖永良部高校では数学と情報の遠隔授業を導入し、教室に別の教師がついて授業の補助や生徒の個別の質問に対応しています。
生徒
「先生がいないのは違和感があったけど、(タブレットの画面に)先生が映っているので、逆に1対1でやっている感じがして頭の中に入ってくる」
「(遠隔授業の)先生が親しみやすくて楽しい」
また、遠隔授業の導入は教師の負担軽減にもつながっているといいます。
沖永良部高校 情報担当・上村洋介教諭
「私が商業が専門で情報の免許も持っているけど、慣れていないということもあるので授業してもらえると非常に助かる」
沖永良部高校 数学担当・蔵満周平教諭
「授業準備が減ったので、部活に行っている生徒にその時間も生徒に時間を注げるようになったのでよかった。1時間くらい」
一方、現場では試行錯誤も続いています。
蔵満周平教諭
「zoomを使っているが、タイムラグがあったり、システム上できょうも何人かいたんですけど、なかなかサイトが開けないトラブルがある」
山本成人教諭
「難しいところはどうしても生徒と直接対面していないので、今、生徒がどういうことを話しているのか、向こうの雰囲気を捉えづらい。身振り手振りというのは、実は生徒と直接対面しないからなかなかこっちに注目しないので、少しでも増やして見てもらおうとしている」
行政が地域による教育格差を縮める努力を行う一方で、民間企業による教育のDXも進んでいます。
男子生徒
「一次関数ではありません」
男子生徒
「本当だ、なるほど」
女子生徒
「わぁ、すごい。深いところまで言ってくれるじゃん」
高校生たちが体験しているのは、通信教育大手のベネッセが3月から始めるサービスAIチューターです。
分からない問題をカメラで撮影すると、AIがすぐ答えを出すのではなく、ヒントや回答のステップを示して生徒の学習をサポートします。
開発したのは鹿児島市出身の永田祐太郎さんです。
ベネッセ高校生事業本部・永田祐太郎本部長(37)
「今の高校生って実はチャットGPTとかGeminiみたいなな生成AIを使って分からない問題を実際やっている。そうすると分からない問題を終わらせて宿題を終わらせるだけでは学力につながらないので、学力アップまでサポートしようというのがコンセプト」
永田さんが教育に携わろうとしたきっかけは中学3年生の時、高校受験を前に模擬試験の会場で感じた教育格差でした。
永田さん
「同じ階で(受験した)子が本当にもう貧しくて筆箱が茶封筒だった。この鶴丸(高校)を目指す人たちの中にいる彼を見たときに『絶対この人と合格しよう』と思っていたけど、入学式の時にいなかったというのが自分としての原体験。こういう人生を大きく変えてしまうようなときに、こういうことがないようにしたいと思い、教育に自分は何かしら恩返しをしたいと思った」
教育の分野に身を置いた永田さんが出した答えがAIの活用でした。
体験した高校生
「かさばらないし、履歴にも残るからありがたい」
「学校の先生に聞くことが難しい時にAIチューターを使ったら、より簡単に手軽に勉強を進められるのでは」
永田さん
「今、分からなかった問題が分かるようになって、次は解けるようになるという声をたくさんつくっていきたい」
時代と共に変わりゆく「学びの形」。
デジタル化によりその可能性はさらに広がりを見せています。
子どもたちによりよい教育の場を。
行政、民間がそれぞれの立場で教育DXのあり方を模索しています。