「富山は私の第二の故郷です」。滑川市の工場で働くベトナム出身のディン・ティ・キム・チさんは、そう笑顔で語った。母国を離れ、富山で暮らす人々の日常を紹介するシリーズ。今回は技能実習生として来日し、新たな家族との絆を育んでいる女性の物語である。

挑戦の地に選んだ富山

チさんが技能実習生として日本に来たのは7年前のこと。「自分に挑戦したい。家族を支えられる仕事をしたいと思います」と来日の理由を語る。富山を選んだ理由は「地震が少ない」と聞いたからだという。

滑川市の工場では、ベアリングの製造に携わっている。「毎日、材料を機械に投入する。機械は自動加工、終わったら製品を測る。仕事は大変ですけど、毎日いろいろなことを学べる」と仕事の内容を説明する。
家族への思いと新たな絆

4人家族の長女であるチさんは、送り出し機関の手数料などおよそ40万円の借金をして日本に来た。「(返済は)終わりました。大丈夫です」と明るく話してくれた。

これからの夢を聞くと「自分の小さな家族を持ちたい。結婚したい」と笑顔で答えた。



取材記者はチさんに案内され、ある民家を訪れた。そこで出迎えてくれたのは、交流イベントで知り合った布村さん夫妻。時折チさんを自宅に招き、この日はベトナムと日本のおせち料理で新年のお祝いをしていた。

おせち料理を用意する布村さんとチさんたち。チさんは「ベトナムのぜんざいです」とベトナム料理も紹介してくれた。同じベトナム出身の友人・フォンさんも一緒に新年を祝った。

食卓を囲む温かな時間

一人暮らしのチさんにとって、みんなで囲む食事は何よりの楽しみだという。
「お母さん、この料理の名前は?」
「ローストビーフ」
「これ、中は?」
「豆です。緑の豆です」
「日本で中々食べれないよね、お正月の料理だから」
「今日は一番の…」
「豪華?」
「元旦の食事」

和やかな会話が続く食卓。本当の娘のように接してくれる布村さん夫婦の存在が、故郷の家族と離れて暮らすチさんの心の拠り所になっている。

「ベトナムのお父さんに話しました。日本のお父さん、お母さん。新しいお父さん、お母さん、います。お父さんは安心しました」とチさんは語る。

その後、布村さん夫妻と初詣に訪れた神社でおみくじをしたチさん。

「縁談、結婚できるかどうか」とハラハラした様子のチさんに、「神経質にならないで、神様の幸せなご縁を待ちなさい、あまり心配しなくてもいいことあるよ」と母親のように優しく声をかける布村さんだった。
第二の故郷で見つけた喜び

チさんにとって富山とはどんな場所なのか。「富山と日本は私の第二の故郷です。ここで多くの出会いがあり、学ぶこともいっぱい」と答える。「富山は楽しいですか?」という問いには「楽しいです、本当に。ありがとうございます」と目を輝かせた。
技能実習生として来日し、特定技能の資格を取って国内で長く働く人も増えている。富山労働局によると、県内の外国人労働者の数は1万6460人、外国人を雇用する事業所は2651か所と、いずれも過去最多となっている。
日本で働き、新しい家族との絆を深めるチさん。その穏やかな表情からは、第二の故郷で着実に根を張り、新たな人生を歩んでいることが伝わってくる。
(富山テレビ放送)
