「経済界は政治の下請けか」小泉進次郎が期待する両者のコラボレーションとは

総理になる覚悟と用意はあるのか?#6

カテゴリ:国内

  • 去年11月、「このままでは自民党は必要ない」 と政府を批判
  • 「安倍1強で一番ものが言えないのは経済界」 経団連らと対立
  • 故・土光敏夫会長時代の経団連が理想 今後の経済界との関係は?

いまや「総理にしたい政治家」No.1の自民党小泉進次郎筆頭幹事長。
果たして小泉氏は、多くの国民が期待する通り、総理となることができるのか?ここでは、小泉氏のこれまでの「進化」の過程を振り返り、その資質を問うていく。今回検証する「進化」のステージは、「こども保険」だ。

「経済界は政治の下請けか」

「党でまったく議論をしていない。このままでは自民党は必要ない」

2017年11月。小泉氏は、激しい言葉で政府への批判を展開した。
政府のぶち上げた政策パッケージの財源が、党の了承なく突如決められたことへの怒りだった。

この年の10月、政府は経済界に対して教育無償化を柱とした政策パッケージの財源負担を求めた。
総額2兆円のうち1兆7千億円は、2019年10月の消費増税による増収分を充てる。しかし、不足する3千億円を政府は経済界に求め、経団連の榊原定征会長(当時)がこれを容認したのだ。
これによって小泉氏らが提唱していた「こども保険」は、実現化に向けた検討を見送られることになった。

小泉氏は矛先を経団連にも向け、「経済界は政治の下請けか。それだけ政治に左右されるなら、イノベーションは生まれない」とこき下ろした。
そもそも経団連など経済界は、こども保険に対して批判的だった。
選挙前、経団連の榊原会長(当時)は、「子どもを持たないと決めている方も含め、受益と負担のバランスはどうなのか。未就学児童に月額5000円を支援しようということだが、子育ての支援の一助になっても解決にはならない。(保育所設立など企業がやっている)現物給付を拡充するほうが先決だろう」と述べている。
いわば、政府と経済界は、あうんの呼吸で小泉氏のはしごをはずしたのだ。

経団連・榊原定征前会長

「安倍1強で物を言えないのは経済界」

これをきっかけに小泉氏は、さまざまな場面で、経団連はじめとする経済界を批判している。
同じ年の11月、社会起業家のイベントでも小泉氏は経済界を猛批判した。

「安倍1強で物を言えないのじゃないかという声があるが、一番物を言えないのは経済界。日本の中にイノベーション産むのは、政治の顔色をうかがっている経済界ではありえない。『賃上げして』と言ったら、賃上げする。政治の顔色をうかがう現状に甘えていて、イノベーションが産まれるのか?
ソーシャル・イノベーターに期待するのは、新しい経済人として経済界を変えてください。おかしいことはおかしいと言う経済界がいるから、政治が緊張感を持つ」

確かに、安倍政権と経団連は蜜月だった。
経団連の榊原会長の前任である米倉弘昌会長は、アベノミクス、とりわけ大規模金融緩和を批判して距離を置いた。
しかし、榊原会長に代わると、安倍政権と急接近し、逆に「政府に物を言わない」と批判されることが多くなった。

また、今年4月の新経済連盟のイベントで、小泉氏はさらに経済界への批判のギアを上げている。

「理解できないのは、なんで経団連の会長は、製造業の人しかなれないんですかね。要件で決まっているというんですよ。面白いですね、イノベーティブですね。経済同友会、日商と経済三団体と言われますけど、その中の日商は中小企業の団体ですよね。でもトップは大企業じゃないですか。あれだってどういう人が、トップ(会頭)になっているのか。事務局を担うためには、会頭企業が人を出さなければいけないとか、そういうのを見たときに中小企業が(会頭に)なれるわけないんですよ」

「土光さんの気持ちは素晴らしい」

政界であろうと経済界であろうと、旧態依然とした慣習に固執し、変革を阻害するものとは徹底的に闘うというのが小泉氏だ。
小泉氏が理想とする政界と経済界の関係は、土光敏夫会長時代の経団連だ。

経団連会長を務めた故・土光敏夫氏

土光氏と言えば、行政改革の旗振り役として「行革の鬼」と呼ばれた一方、清貧な生活を送り「メザシの土光さん」と慕われた、昭和を代表する財界人だ。

「経済界だって変えなければいけないことがいっぱいあって、横並びを排していかなければいけないので、そういったことに注力してもらう。政治の世界に対しては、昔の経団連の会長・土光さんが言ったみたいに、『これだけは邪魔するな』ということが経済界の役割。『あれやってくれ、これやってくれというのは卑しい』と言う土光さんの気持ちは素晴らしいと思いますね。そういう関係を築けば、プロフェッショナルな経済界と政界のいい意味でのコラボレーションが生まれることになる」

 国のトップを狙うのであれば、経済界と良好な関係を構築するのも重要なミッションだ。しかし言うべきことは言うというのが小泉氏だ。(続く)

【これまでの連載を読む】
小泉進次郎の覚悟#1「私は真正面から鉄砲を撃っている」
小泉進次郎の覚悟#2「国会では友人はできない」
小泉進次郎の覚悟#3「うるさい」と罵倒され足を踏まれても
小泉進次郎の覚悟#4「迷ったらフルスイングだ」
小泉進次郎の覚悟#5「農政は素人、これから勉強する」と語った部会長の手腕

筆者:フジテレビ 解説委員 鈴木款
早稲田大学卒。農林中央金庫で外為ディーラーなどを経て、フジテレビに入社。営業局、「報道2001」ディレクター、NY支局長、経済部長を経て現職。著書「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」(扶桑社新書)

「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」(扶桑社新書)