感染症は予防できる! 豪雨被災地の避難所・ボランティア活動でしてはいけないこと

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  • 日本環境感染学会が、被災地での感染症への注意を呼びかけ
  • 感染症発生の要素は「感染源・感染経路・人の抵抗力低下」
  • 避難所では“手洗い・擦り込み式アルコール消毒”をなるべく励行

西日本を中心に襲った記録的な豪雨。
町中が濁流に飲み込まれた岡山県倉敷市真備町など、各地で土砂災害や浸水被害が相次いだ。
避難所では、物資の供給とあわせて猛暑の中での体調管理が課題となっているという。

復旧作業が本格化しつつある中、日本環境感染学会は、被災者や被災地で活動するボランティアに対して感染症への注意を呼び掛けている。
水害現場で起こりやすい感染症とはどのようなものなのか? それらの感染症から身を守るための効果的な予防策とは?
日本環境感染学会リスクコミュニケーション委員会の中島一敏さんに聞いた。

「感染源、感染経路、人の抵抗力低下」

ーー水害時に感染症リスクが高まる理由は?

洪水や津波などの災害では、発災時に土壌や環境水を吸い込むことで起こるレジオネラ症(肺炎や発熱を発症)や、環境水との接触によって起こるレプトスピラ症(急性の熱性疾患)が発生しやすくなります。
感染症の発生には、感染源、感染経路、人の抵抗力・免疫といった3つの要素が必要となります。
生活環境が汚染されると感染源の分布が変わりますし、溺れることによるレジオネラ菌の吸入は、災害に特徴的な感染経路といえるでしょう。
不十分な栄養状態、避難生活による心身のストレスなどにより抵抗力の低下も背景の一つとなります。

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ーー水害現場で起こりやすい感染症の種類は?

水害に限らず、災害時には以下のような感染症が発生します。

1. 水の衛生が低下することによる下痢症などの水媒介感染症(コレラ、赤痢、腸チフスなど)
2. 避難所による密集した生活による呼吸器感染症や麻疹などの感染症(インフルエンザ、髄膜炎、結核など)
3. 食品衛生管理が低下することによる食中毒
4. 低体温に関連する急性呼吸器感染症
5. 外傷に伴う破傷風や皮膚感染症

時には、蚊などの発生に伴う昆虫媒介感染症が増えることもあります。

個人でできる「避難所生活での感染予防」

避難所は多くの人でひしめき合い、トイレ・洗面所・調理場・ゴミ置き場などの衛生施設も十分とはいえない。
このような環境での生活における感染症予防を尋ねると、次の点に留意してほしいという。

(1)食事と下痢・嘔吐
夏は食中毒や急性胃腸炎が発生しやすい季節。細菌等で汚染された食べ物で腹痛、下痢、嘔吐、発熱などを起こすことがある。
暑いところに放置された食事や、中まで火がよく通っていない肉などを食べることは控える。
食事の前には必ず石鹸と流水で手を洗い、擦り込み式のアルコール手指消毒薬がある場合には、使用する。

(2)トイレと感染症
食中毒や急性胃腸炎などで嘔吐や下痢などがあると、手や共用タオルの汚染を介して、他の人に感染することがある。
トイレで用を足した後は、食事の前と同様に必ず手を洗い、消毒薬を使用する。また、タオルの貸し借りは避ける。

(3)風邪・感冒
避難所で人が沢山いる状態が長く続くと、いわゆる風邪(気道感染症)が被災地の人々に広がっていくことがある。
くしゃみや咳の症状がある時はマスクをする、とっさのくしゃみの時はティッシュや肘の内側で口と鼻を覆う、鼻水や痰が手に付いた時は手を洗う、といった“咳エチケット”を心掛ける。

(4)ワクチンの接種
被災地、避難所などで起きる感染症、人が多いところで蔓延する感染症にはワクチンで予防できる感染症がある。(麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、破傷風、百日咳、日本脳炎など)

(5)暑さ・ストレス・熱中症
感染症以外にも、夏は気温が上がり、暑さ、身体的なストレスで体調を崩すことがある。
熱中症は、屋外だけでなく屋内でも起きる。こまめに水分と適度な塩分を補給し、適宜涼しい場所で休むようにする。
めまいや顔のほてり、頭痛、筋肉のけいれん、だるさ、大量に汗をかくなどの症状がある時は、早めに医療機関へ相談する。

岡山県倉敷市真備町の避難所(10日)

作業時は“全身を防護”  ボランティア活動で感染症を持ち込まない

さらに、瓦礫の撤去や復旧作業で気を付けるべきことについても教えてくれた。

ーー復旧作業の時に、気を付けるべきことは?

露出した皮膚が土壌や環境水に接触すると、レプトスピラ菌に感染します。
レプトスピラ菌は主にネズミ類が感染し、尿と共に菌が排出されることで、土壌や環境水が汚染されて増殖します。
レプトスピラ症は、重症化すると黄疸、腎臓の障害、出血、意識障害などが起こることがあります。

作業中に外傷を受けると、皮膚の感染症や全身の筋肉の硬直、痙攣発作などの症状が出る破傷風に感染することもあります。
破傷風はワクチンで予防できますが、約10年で効果は切れてしまいます。
けがをする可能性がある作業に従事する場合は、事前のワクチン接種をお勧めします。けがをした時に接種することも可能です。
また、屋外での作業の際にマダニや蚊に刺されることで、日本紅斑熱や重症熱性血小板症候群(SFTS)、日本脳炎などに感染することもあり得ます。

屋外作業時は、皮膚の露出面を少なくし、虫除けスプレーの利用、長靴やゴム手袋などを着用することが大切です。
さらに、土木作業などで巻き上がった土埃や環境水を吸い込むことで、レジオネラ菌に感染することがあります。
防じんマスクを着用することも重要です。



被災地で支援活動をするボランティアに対しては、感染症を持ち込まず、また自身も感染しないよう心掛けるべきとだといい、(1)体調を整えてから現地へ向かう(2)麻疹・破傷風のワクチン接種をしておくことを勧めている。

災害の後には感染症の流行が懸念されるが、中島さんによると、流行は必然ではないという。
「リスクを把握し、適切な処置をすることによって、多くの感染症は予防できる」と話してくれた。
豪雨被災地で過ごす人は、健康管理と感染症予防に充分注意してほしい。

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