2023年、長野県佐久市で男性を車ではね、山の中に遺棄して殺害した罪に問われている男の初公判が開かれた。裁判は「殺人罪」が成立するかが争点。検察側は「未必の故意」に当たると主張。「事故の隠ぺいのため死亡するのもやむを得ない」と生きていた被害者を遺棄したとした。一方、被告の男は「やむを得ないと思っていない」などと殺意を否認した。

「未必の故意」殺人罪で起訴

殺人とひき逃げなどの罪に問われているのは、佐久市の佐藤英伸被告34歳。

起訴状などによると、2023年12月、佐久市の県道で近くに住む男性(当時85歳)を運転していた車ではね、その後、男性を車に乗せておよそ30キロ離れた長和町の山林に遺棄して、多発性外傷と低体温症により死亡させ、殺害したとされている。

警察は当初、はねた後、被害者を救護する義務を怠ったとして保護責任者遺棄の疑いで逮捕。

男性が遺棄された山林
男性が遺棄された山林
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検察はその後の捜査で、男性が生きていることを認識しながら、事故を隠蔽するには「死亡するのもやむを得ない」とするいわゆる「未必の故意」があったと判断し、殺人の罪で起訴していた。

被告は殺意について否認

10月20日開かれた裁判員裁判の初公判。

佐藤被告は「事故を起こしてしまったことは間違いありません」と述べたものの、「死亡してもやむを得ないと決意したわけではない」と話し、殺意については否認した。

裁判の争点は「殺人罪が成立するか」。

検察側は、冒頭陳述で「男性を車に乗せる際、被告はいびきを聞いていた」などと指摘した上で、「遺棄するまで男性が生存していて、救命の可能性があることを未必的に認識していた」とし、殺意があったと主張した。

初公判
初公判

一方、弁護側は、「被告は、男性はもう助からないと思っていた」と主張。その上で、「男性の死を望んだり、死んでもかまわないと思っていたわけではない」などとして「殺人罪までは問えない」と主張した。

10月21日は、被告人質問が行われ、判決は10月30日に言い渡される予定。

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長野放送
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