新型コロナウイルスへの対応は4月1日から大きく変わった。重症者向けの専用の病床の確保などはなくなり、原則、全ての医療機関で受け入れるようになった。治療費や入院費の一部は公費負担があったが、これもなくなった。無料だったワクチン接種も終了し、今後は65歳以上の高齢者などを対象にした年1回の「定期接種」に移行する。自己負担額は7000円程度になる。

長野県のコロナ対応
長野県のコロナ対応
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長野県中野市の医療機関は病院内での感染を防ぐため、今も患者と接する場合は防護服などを着けて対応を続けている。国からの補助金も終わり、院長は感染が再拡大し、入院患者が増えると、これまでより財政的にも人員的にも負担が大きくなると懸念している。

「通常医療」になるも…対策変わらず

中野市の厚生連・北信総合病院。地域の中核病院として新型コロナと闘ってきた。

入院患者が多かった1月に撮影された病室の様子。感染を防ぐため防護服やゴーグルを付けて患者に対応していた。

4月から「通常医療」になったが、当時と変わらない対策を続けていると言う。

提供:北信総合病院(1月撮影)
提供:北信総合病院(1月撮影)

北信総合病院の荒井裕国統括院長は「一番の理由はコロナの感染力の強さ。インフルエンザとは全然違う。3月には一番多い時で患者の数が一日20人くらいのこともあった。現在は一日1人くらいに減ったが、夏場にもう一度新たな波が来る恐れもある。限りなくゼロコロナに近い状況を維持しないと他の患者に影響が出る。病院の機能が維持できなくなる」と現状について懸念している。

北信総合病院・荒井裕国 統括院長
北信総合病院・荒井裕国 統括院長

財政的、人員的にも負担増と懸念

ただ、コロナ対応の病床を確保した医療機関への国の補助金が3月いっぱいで廃止され、防護服などにかかる経費は病院の負担になった。

4月から勤務医の時間外労働の上限規制が適用されることや看護師の人手不足で、財政的にも人員的にも負担がこれまでより大きくなる。病院では勤務シフトの見直しなどを進める一方、地元の中野市や飯山市に財政面での支援を求めた。

荒井統括院長は「病院は患者さんに対しいわゆる価格転嫁ができないので支出ばかり増えてしまい経営上、大変難しい状況。行政の支援を得ながら、一方で勤務の工夫などをして1、2カ月は様子を見ないとわからない。地域医療として穴をあけるわけにはいかない」と話す。

自己負担増…診察控え懸念

負担が増えたのは病院側だけではない。治療にかかる薬代の自己負担は3割負担の人でこれまで9000円が上限だったが、4月からは抗ウイルス剤「ゾコーバ」の場合で5日間の投薬で負担は1万5000円以上になる。

抗ウイルス剤「ゾコーバ」
抗ウイルス剤「ゾコーバ」

荒井統括院長は、「現場の医師が良い薬を処方しようと思っても患者が嫌がる場合は出すことが出来ないのが苦しいところ」と話し、自己負担額が増えることで患者が診察を控えたり、値段が高い薬をもらうのをためらうようにならないか心配している。

感染対策は「通常」に戻せない。

地域の医療現場は今も新型コロナへの対応に苦慮している。

北信総合病院
北信総合病院

(長野放送)

長野放送
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