鹿児島県いちき串木野市の海岸で8月28日、釣りに訪れた中高生5人のうち3人が沖に流され、翌日死亡が確認された。「水の中に入った瞬間に沖に行く流れに入ってしまうことがある」――現場を訪れた専門家はそう語り、海のレジャーにおける事前の安全対策の重要性を訴えている。夏休みの終わりに突如として奪われた3つの命。現場周辺には今も深い悲しみが広がっている。
岩場から飛び込み、4人が沖へ流される
事故が起きたのは、いちき串木野市西島平町にある小さな島・照島の外海に面する岩場だ。
消防に通報があったのは8月28日の午後3時40分ごろ。釣りをしに来ていた中高生5人のうち、2人が海に飛び込んで遊ぼうとしたところ溺れ始めた。それを見た中学生2人が助けようと飛び込んだが、4人全員が沖へ流されてしまったという。
飛び降りた岩場の高さは約2メートル。当日の波の高さは1.5メートルと普段より高い状態だった。近くに住む住民は「昔から『あの辺りは危ない』と聞いていたので行かない」「下はすごく深いから怖い」と口をそろえる。地元では以前から危険な場所として知られていた場所での悲劇だった。
岩場付近に残っていた中学生が消防に通報してから約40分後、海上保安庁の巡視艇が漂流していた12歳の中学生を救助した。しかし残る3人の行方は分からないまま、船や航空機、防波堤からの目視による捜索が続けられた。いちき串木野市消防本部の馬込圭三消防署長は当時、「手掛かりは非常に波が高くて見えない。消波ブロックの中を中心に捜索している」と語っていた。
翌日、相次いで発見――3人全員の死亡を確認
事態が動いたのは、捜索2日目の29日だった。
午前10時40分ごろ、現場から約30メートルの沖合で、海面に浮いていた下夷春樹さんと竹本敬浩さんが相次いで発見された。さらに午後3時40分ごろ、現場近くの岩場に下夷健誠さんが打ち上げられているのが見つかり、3人それぞれの死亡が確認された。死因はいずれも溺死だった。

3人が見つかった現場付近には30日、県内各地から追悼のために多くの人が訪れた。霧島市から来た人は「残念ですね。今からいろんなことを経験したかっただろうし、夢や希望を持っていたと思う」と肩を落とし、薩摩川内市から訪れた人も「怖かっただろうな」と声を詰まらせた。現場に供えられた花やジュースが、3人の死を悼む多くの人々の思いを静かに物語っていた。
専門家が指摘する「岩礁海岸」の危険性
同じ悲劇を繰り返さないために、何が必要なのか。
8月30日、事故現場を実際に訪れたのは、海での事故に詳しい鹿児島大学水産学部の西隆一郎教授だ。西教授は、現場が外海に面した「岩礁海岸」であることに着目し、事故の背景にある危険性を解説した。

「当日うねりがあったということは、水の中に入った瞬間にたまたま沖に行く流れに入ってしまったということもある。そうすると波の流れが非常に複雑なところで簡単に泳げない状況もある」
岩礁海岸は、海が穏やかなときは透明度が高く、魚や海底まで見えるほど美しい。だからこそ、中高生がチャレンジ精神から海に入りたくなる気持ちは理解できると西教授は言う。しかしその一方で、「水の中に入って陸側に帰ることを考えると、陸側に帰るのが難しい場所」でもある。

西教授は地域ぐるみの啓発教育の必要性も訴えた。「中学生、高校生がチャレンジ精神というか、水の中で遊びたいという気持ちを強く持つのもわかるので、できるだけ地域の方、周りの方が安全上の配慮について啓発教育がしっかりできていればよかった」。
「ライフジャケットは絶対に携行を」
西教授がとりわけ強調したのが、ライフジャケットの重要性だ。

「海に行く前に、山に行くのと一緒だが、事前に注意すべきことを知った上で対応していく。絶対に浮く条件、ライフジャケット、浮く物を携行することがかなり重要」
夏休みの終わりに起きたこの痛ましい事故は、地域社会に深い悲しみをもたらしている。同じ悲劇を繰り返さないためにも、海に近づく際の事前準備と、ライフジャケットをはじめとした安全器具の携行が、今改めて問われている。
【動画で見る▶男子中高生3人が死亡した水難事故 現場を訪れた専門家に聞く「ライフジャケットの携行を」】

