犯行3日前の3月27日の朝の不審者情報(目撃情報F)も重要だった。

27日の午前8時20分ごろ、Fポートを出たところにある広場に白マスクをかけ、黒い帽子をかぶり、明るいベージュのロングコートにグレーのズボン姿で、紙袋を持ったままEポート方向を見ている不審な男がいたというものだ。
目撃者はFポートのマンションに警察幹部が住んでいると知っていたため『もしもし、何をしているんですか』と男に声をかけた。男は何も言わずに立ち去っていっていた。この男の年齢は30歳から40歳、身長170センチから180センチとやや細身の男だったという。

捜査資料にあったX巡査長の写真をあらためて眺めても、高身長の男には全く見えない。銃撃実行犯の目撃者、Bポートの住人篠田光子がテレビ放送で観たXは「120%違う」と主張したのも頷ける。見た目からしてXの犯人性は低かった。目撃情報とXの人着が違い過ぎるのである。

それに比して端本悟はどうだろうか。身長174センチ体重68キロ。ユーゴスラビアで撮影された写真を見ると、まさに縦に長いすらっとした体型だ。そして別の写真には、端本が縁なしメガネをかけている姿が捉えられていた。

メガネを使っている教団信者がどれだけいたかという観点も重要になっていく。メガネに加えて、逮捕時の写真からも、署長公舎で目撃された男のうっすらとした無精髭という点も端本に合致する。端本の容姿は複数の住民が目撃した実行犯とみられる人物や事件前の不審人物と照らし合わせて似通っていたのである。
現場の目撃情報やアリバイの状況から、特捜本部は端本悟が実行犯である可能性もあるとみて注目していくのである。
【秘録】警察庁長官銃撃事件32に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。