難しい数学の問題でも、メンバーの中に誰か解ける人がいれば、その集団は正答できる、というだけのシンプルな話です。

しかし、この実験が示しているのは、実はそれだけではありません。さらに詳しく見ていくと、この実験結果はなかなか興味深いものです。

この実験では、第1フェーズで個人で問題を解いた後に、第2フェーズで集団で再度問題を解いてもらうという手順でした。

その中には、最初の個人解答の段階で、1人も解けなかった集団もあれば、もともと全員が解けた集団までさまざまでした。

集団に1人正解を知る人がいれば正答率は高まるが…(画像:イメージ)
集団に1人正解を知る人がいれば正答率は高まるが…(画像:イメージ)

もしも集団の中で誰か1人が正解を知っていれば、集団は正答できそうですよね。その人が他の人に教えればいいからです。

ところが実際には、1人では解けるメンバーが入っているのに、集団で解くと間違えたというケースが起きていました。しかも、それなりの頻度でです。

この実験では、数学の課題という明確な答えがある問題のとき、第1フェーズで5人中1人が解けていた場合、第2フェーズの集団の正解率が83%でした。

つまり残りの17%、およそ6分の1が解けなかったことになります。

「正解者」を無視せず生かす

解ける人が集団に含まれていたのに、なぜこのような残念なことが起こったのでしょうか。