物価高騰が続く中、リーズナブルに衣類を購入できる古着店。今、異業種からでも『24時間営業の無人店』をオープンさせるケースが増えている。なぜ今、古着の無人店なのか?世代を超えて支持される現場を取材した。

「店員に話しかけられず緊張しない」

2025年9月にオープンした福岡市中央区の古着店。スタッフは誰もいない。

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店内を見回すと、あちらこちらに防犯カメラが設置され、支払いも料金箱に現金を入れるか、PayPayで支払う仕組みとなっている。文字通り完全な“無人店舗”だ。

この古着店を運営する『ファボル』のスタッフ、高野浦のぞみさんは、「アパレルショップは、店員さんに『どうですか?』と話しかけられると、ありがたい反面、ちょっと緊張してしまい、ゆっくり選び辛いところもある。

しかし、ここは無人でスタッフがいないので、試着し放題。お客にじっくり時間をかけて好きなものを探してもらえれば」と、敢えて無人にしているという。

店舗は24時間営業で、常に約400着を取り揃えている。運営会社は、意外にも広告やパッケージなどのデザインを行うのが本業の会社だった。

「スタッフが元々、興味のあったアパレル事業をやりたい」ということで、古着ビジネスを手掛けることになったと高野浦さんは話す。

値段は1千円、2千円、3千円のみ

古着業者から仕入れた服を事務所で検品し、店舗の在庫に合わせて補充するのが、実際の作業。

在庫の服には、定価が高そうな“ブランド”ものも混ざっている。高野浦さんは、「宝探し的な感覚で探して頂れば」と掘り出し物を探し出すのも古着の魅力だと話す。

店舗商品は、1000円、2000円、3000円の3パターンで提供している。

そのため全身コーディネートしても、トップスとボトムス、アウターまで入れた3点で7000円。物価高騰が続く中、消費者にとって、ありがたい価格設定となっている。取材したこの日は、期間限定で、どの商品でも5着5000円で購入できる“お得な日”となっていた。

「最近は食料品など、全部の値段が上がっていて、どうしても節約、節約となってしまう。洋服は楽しみたいけど1着1着が高いから、なかなか難しい状況。そういう時にリーズナブルに綺麗な古着で楽しんで、日々の潤いになれたらいい」と高野浦さんは、賢い古着の活用を呼び掛けていた。

『非接触接客』の需要が増えた

無人古着屋が増えている背景には、コロナ禍の影響がある。コロナ禍以前は、服屋で接客されるのは当たり前だった。しかし、コロナの流行で、ソーシャルディスタンスの提唱と非接触型様式が広がり、アパレル店の営業形態も変化した。そんな中、無人古着屋は、非接触接客のアパレル店舗として東京・大阪を中心に急激に拡大していった。

福岡・糸島市にある別の人気古着店『エコフィールド』。メンズやレディース、キッズのほか、古着店では珍しい着物なども販売している。

1㎏20円で買い取りも行っている。ノーブランド品でも目立ったキズなどがない限り受け付けていて、1日平均200㎏の古着が持ち込まれるという。

海外に出す商品を集めた一角には、ちょっとシミがあったり、襟が汚れていたり、店では出せない服もあり、「東南アジアを中心に出してもらっている。まだまだ着られる洋服ばかり」と『エコフィールド』の社長の多田治雄さんは話す。

商品を保管している倉庫には、客から買い取った服が詰め込まれた段ボールが所狭しと積まれていた。「季節以外のものとか約1年分。今は春夏ものをこちらに持ってきて、冬物を店に出している」(『エコフィールド』多田社長)。

実は、この人気の古着店も2025年6月、24時間営業の『無人店』をオープンさせた。

利用する年齢層に合わせて、有人店と無人店で服のジャンルを“すみ分け”ているという。無人店は、九州大学の伊都キャンパスに通う学生たちの通学路沿いにある。「この通りは、学生さんが多く、何百人と通るが、気兼ねなく安く提供できたら、お洒落して貰えたら」(『エコフィールド』多田社長)。

多田社長の趣味もあり、アメリカ製のTシャツも多く取り揃えていて、スタッフのいる店舗とは、また違った雰囲気だ。価格は、500円か1000円の2択のみに設定されている。

「安いですね、ありがたい。気が向いたときに行けるのでいい」と無人古着店オープンを九州大学の学生も歓迎していたが、利用者は若年層だけではない。この日は、「娘好みの色だなと思って買った」と年配の客にも好評だった。

更に、この店舗の支払い方法は、PayPay以外にもア独自の支払いがある。アルバイトの男性が手作りしたというユニークな仕組みの“会計機”だ。

ユニークな仕組みの“会計機”
ユニークな仕組みの“会計機”

「500円玉で精算して頂く形。1000円の場合は、両替して頂き、500円玉を2枚入れます。不正防止で、カメラで確認できる」と社長の多田さんは話す。

無人の店舗だが、防犯カメラの映像で500円玉がしっかり中に入ったことを確認できる。ちなみに100円玉や10円玉など、他の硬貨を入れた場合は手元に戻ってくる仕組みになっているのだ。

「古着をゴミとして捨てる方もたくさんいると思うが、なんとかもう1回洋服として着られればと思っている。

1点1点の査定はしていないが、いらなくなった洋服など持ってきてもらえれば、1枚1枚大切にリユースしているので、ぜひお願いします」と多田さんは、広く呼び掛けている。

「不要品=お金になる資産」

リユース市場規模は2023年に3兆円を超え、2009年以降14年連続で拡大。2030年には4兆円市場になると予測されている。この成長を支えているのは、生活者の『不要品=捨てるもの』から『不要品=お金になる資産』への意識変革がある。

『不要品=お金になる資産』
『不要品=お金になる資産』

衣類の『リユース』は、まだ浸透しているとは言えないが、2024年のデータをもとに推計した国の資料では、国内で家庭が購入した衣類は、年間で77万トン。しかし、大半がゴミとして捨てられ50万トン以上が焼却・埋め立て処分されている。

国は、2026年3月までに廃棄される衣類を減らすための行動計画を策定し、対策を強化する予定だ。

衣類の再利用が軌道に乗れば、格安でファッションを楽しめる人が増えると同時に、ゴミの削減にも繋がりそうだ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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