高市早苗首相が誕生し、女性の政治家に注目が集まるなか、福岡で子育てをしながら活動する女性の県議会議員に密着した。議会も変わろうとしている。
議会中の子育ては夫に任せきり
福岡県議会自民党県議団に所属する佐藤かえで議員(30)。2歳の子どもを抱え、さらに現在、妊娠中のいわゆる“ママさん議員”だ。

「子育てで悩んで、泣いて辛い思いをするのは私で最後にしたいという思いで、県政に挑戦しようって思った」と話す佐藤さん。子育て支援の充実、そして安心して暮らせる災害に強い福岡県にしたいという思いを実現すべく活動する女性県議だ。

朝5時に起床する佐藤さんの1日は、朝食とその日の夕食の準備をすることから始まる。「最近、急にお腹が大きくなってきたから酸素不足になることが多くて、それがまたしんどくって」とお腹をさすりながらキッチンに立つ。2歳になる息子のたすく君が起きてくると忙しさに拍車がかかる。ご飯を食べさせつつ、議会に向かう身支度を同時進行で進めていく。

「正直、やっぱり家族とか周りの支えありきですね。特に議会中なんかは子育てのことは旦那さんに任せっきり」。県議会の開会中は自営業の夫、稜介さんが保育園の送り迎えなどを担当し、協力し合いながら子育てをしているという。

夫の稜介さんは「葛藤は見えますね、一緒に子どもと遊びたいだろうなと思うけど、してあげられないって言って、悔しいんだろうなって、それは見てて分かるから、支えるしかないって気持ちになってます」と協力を惜しまない。

「マミー、遅れちゃうから行くよ。はい、行ってきます。急げ、急げ。はい、いってらっい」。慌ただしく家族に見送られ、北九州市の自宅から車、新幹線、電車を乗り継ぎ、1時間以上かけて福岡市にある県議会に移動する。

県議会では現在、県内の各選挙区から選ばれた87人の議員が活動している。佐藤さんは2025年3月の補欠選挙で当選、議員としては1年生だ。
福岡県議会で初めてなこととは…
議会到着後は早速、打ち合わせ。3日後に控えた一般質問に向けて準備を進めている。

その準備のかたわら同じ会派の会長に或る相談をしていた。
▼「予定日、いつやったっけ」(自民党福岡県議団・松尾統章会長)。
▼「4月になります。それを踏まえても一番、最短で6月の議会には復帰したいつもりではあります」(佐藤さん)。

▼「復帰する!? 4月に出産して!?」(松尾会長)。
▼「そうですね1カ月、2カ月ぐらいで」(佐藤さん)。

議員としての責務を果たすため2人目の出産後は、なるべく早く復帰することを目指す佐藤さんだが、大きな問題が横たわる。
▼「旦那さん、育休はとれない?」(松尾会長)。

▼「個人事業主というか、自営業ですので、育休が取れないのが現状なので、できれば議会棟の方に私、北九州から一緒に出勤して、シッターさん自分で手配しますので、子連れ出勤のお許しを頂けたらと…」(佐藤さん)。

▼「実を言うと、そういうことってね、福岡県議会初めてなんよ。時代っていうか、その辺は変えていかんといけんと思う…」(松尾会長)。

福岡県議会には育児休暇の制度が、まだない。佐藤さんはまず、子連れでの出勤を認めて欲しいと動いているのだ。
自身の経験をもとに母親目線で…
さらに佐藤さんは「困っていることがある」と子育てを所管する県の職員にも或る提案をしていた。
「これを見て下さい」と差し出した写真には、トイレの個室内でベビーチェアに座り、カギをいじる息子の姿が写っていた。

「これ、うちの子なんですけど、トイレに行ったら、カギ開けちゃうんですよ」。

トイレ中に子どもが個室のカギを開けてしまった体験を元に改善を図れないかと相談をしているのだ。「公共施設をはじめ、駅だとかショッピングモールだとか、ダブルロックというか、子どもの手が届かない位置にもう1個、カギを設置するお願いを県から各施設にできないかなと思って」。

母親の目線で少しでも社会を変えていきたい。佐藤さんが政治の世界に飛び込んだ理由のひとつだ。県の子育て支援課の川越信一郎課長も「現場での経験や体験を通じているお話なので、リアルタイムでお話を頂けるということに非常に感謝している」と話す。

「ママさんはこういうことに困ってんだって訴え続けていくことが、我々の仕事」と佐藤さんは話す。

このあとも夕方まで会議が続き、17時半前にやっと終了。「終わりました~」と佐藤さんにようやく笑顔が戻る。

「急いで帰ろう。坊ちゃんが待ってる」。電車を乗り継ぎ急いで帰宅した。
ファーストペンギンとして…
「ただいま~」。帰宅後も片付け、食事と忙しなく動き、やっと息子のたすく君との時間だ。息子との時間は、1日に30分あればよい方だという。「帰ったらもう殆ど息子が寝る10分前とかですから」とのことだ。

「想像してた何倍も大変だし、子どもにもやっぱり寂しい思いさせちゃってるのが、すごい辛いですしね。議員になって休み?分かんない。いつ休んだんだろう」と話す佐藤さん。休日も地域の行事などに顔を出し、住民の声に耳を傾けている。そんな佐藤さんに今後の目標を尋ねると。

「女性の職業選択肢のなかに政治家っていうカテゴリーをひとつ増やして頂けるような、そういうファーストペンギンとして働いていきたいなと」

女性議員を増やし、女性、そして母親としての「当事者の声」を政治に反映したい。佐藤さんの奮闘は続く。
※ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンの群れの中から、魚を求めて最初に海へ飛びこむペンギンのこと。転じて、その“勇敢なペンギン”のように、リスクを恐れず初めてのことに挑戦する精神の持ち主を意味する。
(テレビ西日本)
