秋田・にかほ市の「園食堂」は、62年続く老舗中華食堂。看板メニューの『肉タンメン』は多くの人に愛されてきた。しかし店主夫婦の高齢化により存続の危機に直面する中、一人娘が故郷へ戻り、父の味を守ろうと動き出した。店と新商品、二つの形で受け継がれる家族の挑戦を追う。
62年続く地域に愛される味
にかほ市象潟町にある「園食堂」は、1964年創業の老舗中華食堂だ。手打ちの平打ち麺や丁寧に仕込まれた料理は評判を呼び、開店前から行列ができることも珍しくない。

中でも看板メニューの『肉タンメン』は、厚いロース肉とあっさり塩味のスープ、つるりとした麺が絶妙に調和した一杯。地元では『肉タン』の愛称で親しまれ、多くの人の記憶に残る味となっている。
店主の金俊夫さん(86)が横浜での修業を経て開いた店で、妻の栄子さん(80)とともに62年にわたり切り盛りしてきた。
高齢化がもたらした存続の危機
しかし、店主夫婦はいずれも80代。体力的な問題から営業時間は昼の3時間に限られ、栄子さんには認知症の症状も見られるようになった。
2017年には病気で3カ月の休業を余儀なくされ、店の継続が危ぶまれる事態に陥った。
それでも店の再開を願う声は多く、地元住民や遠方の常連客から励ましの言葉が届いた。その声が、家族に大きな決断を促すことになる。
娘が継ぐ“父の味”への想い
動き出したのは、一人娘の馬淵恵さん(54)。
岐阜県でスポーツ栄養士として働いている恵さんは、帰省のたびに父から肉タンメンの作り方を学び始めた。
2019年には埼玉で実際に提供し、その重労働と継続の難しさを実感する。
日々同じ味を守り続ける父への尊敬と、店の味を次世代へつなぎたいという思いが、恵さんを突き動かした。
店の外へ広がる新たな挑戦
恵さんは「店に来られない人にも味を届けたい」と考え、商品開発にも着手。
2020年には冷凍餃子、2023年には冷凍の肉タンメンを発売した。さらに2026年には袋麺も完成し、県内の土産店や道の駅などで販売が始まる。
特徴的な太麺とスープを再現しつつ、家庭でも手軽に楽しめる形へと進化させたこれらの商品は、園食堂の味を新しい形で広げている。
家族でつなぐこれからの「園食堂」
現在、恵さんは月の半分を秋田で過ごし、配膳や会計を手伝いながら店を支えている。家族3人での営業は、かつてとは違う形ながらも新たな秩序を生み出している。
今の目標は、俊夫さんが90歳になるまで店を続けること。
父が守ってきた味を、娘が未来へとつなぐ――。園食堂の挑戦は、これからも続いていく。
(秋田テレビ)
