2025年の自動車業界は波乱の1年だった。
日系自動車メーカーの再編が一気に進むとみられた日産とホンダの経営統合は、検討されたものの、破談に。落ち着く間もなく、4月に突如湧き出たアメリカ・トランプ政権による関税政策で、自動車メーカー各社は対応に迫られた。
一方で、ガソリン税の暫定税率の廃止や「エコカー補助金」の見直しという自動車利用者にとっては大きな制度変更が2026年に実施される。
さらに、経済産業省が後押しし、自動車メーカー各社が開発を進める次世代の車「SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)」が、トヨタから去年12月に発売された。
アメリカや中国から出遅れていた分野だが、日本産の「未来のクルマ」が巻き返せるか。
そんな「変革の年」となる2026年、自動車を取り巻く環境がどう変わるのかを、2025年を振り返りながらまとめる。

自動車メーカー大打撃 関税は「ニューノーマルとしてとらえていく」

2025年の自動車業界は、トランプ関税に振り回された1年だった。

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トランプ大統領は、自動車にかかる関税を従来の2.5%に25%を上乗せした、27.5%に引き上げる大統領令に署名。
各社はアメリカへの生産の移管を含め、対応に追われた。

中でも、アメリカを主力市場とする企業では影響が大きく、スバルは大幅な利益減少となったほか、マツダは赤字転落となった。
関税は日本時間9月16日に、27.5%から15%に引き下げられたが、この影響は、2025年度の第3四半期以降に表れる見込みとされている。
ホンダの貝原副社長は、関税を「ニューノーマルとしてとらえている」としたうえで、「需要のあるところで生産するという考え方で、関税影響を打ち返すようなサプライチェーンの構築を引き続き進めていく」と説明したほか、スバルの大崎社長は関税影響を打ち返す策として、“商品ラインナップの拡充や企画段階から原価低減をはかれるか”を挙げた。
経営再建中の日産を除いて、2025年度通期では黒字になる見通しを示している。
150円を超える円安水準が続いていることにより、業績が好調な自動車メーカー各社だが、トランプ関税の影響を押さえ込めるか、そして、地政学リスクによるサプライチェーンの混乱など、さまざまな不確実性が残っている中、2026年度の業績にどの程度影響するかが注目される。

2度目のモビリティショー!「近い未来」が展示される中、往年の名車も…

2年に1回、ショー形式で開催される「ジャパンモビリティショー」。
2025年は2回目の開催となった。

前回に続き取材したが、各社の展示が未来だけでなく、「今」や「近い未来」のクルマやモビリティーが幅広く並んでいる印象を受けた。
各メーカーブースだけでなく、未発売のものから発売しているものまで、小型のモビリティーを体験できるゾーンもあり、筆者も土日に会場に足を運んだが、各社のブースで大盛況となっていた。
そんな中、ホンダは往年の“デートカー”「プレリュード」をハイブリッドで復活させた。
発売から約1カ月で、想定の8倍ほどとなる約2400台を受注。
ホンダの三部社長もジャパンモビリティショーのイベント内で、プレリュードを納車済みだと明かしていた。 

筆者撮影(2025年11月2日・記事トップ画像も)
筆者撮影(2025年11月2日・記事トップ画像も)

トヨタのSDVが発売開始、日本産の「未来のクルマ」が世界へ…

関税や経営統合など、話題が尽きない中ではあったが、各社の新型車の発表が続いた1年でもあった。

トヨタの新型「RAV4」
トヨタの新型「RAV4」

スズキの人気車種「ジムニー」の5ドアタイプや、2025年4月から就任したイヴァン・エスピノーサ社長のもと、経営の立て直しを急ぐ日産の3代目「リーフ」など人気車種の発表が相次ぐ中、トヨタも新型「RAV4」を発表。

「サンシェードをちょっと開けて」と言うと、ちょっと開けられる
「サンシェードをちょっと開けて」と言うと、ちょっと開けられる

車載OS「Arene」を搭載した初のモデルで、「SDV」の第一歩を踏み出した。
SDVはスマホのように、ソフトウェアのアップデートで安全性能や車内の機能を向上させていく「未来のクルマ」で、経済産業省が2030年までに国内外で計1200万台の販売を目標にするなど、国も力を入れている分野だが、日本の自動車メーカーはこれまで、アメリカと中国のメーカーの後塵(じん)を拝してきた。
トヨタ以外でも、「AFEELA」を発表しているソニー、ホンダモビリティなど、日系自動車メーカーも開発に注力していて、今年、新たなSDVが発表されるか注目される。

スズキの「e ビターラ」
スズキの「e ビターラ」

そのほかにも、EVではスズキが「e ビターラ」、ホンダが「N-ONE e:」を発表した。また、三菱自動車は人気車種「デリカミニ」の新型を発表、スバルの新型「フォレスター」は日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

2026年どう変わる?ガソリンは暫定税率廃止へ

2026年はユーザーにとって、「うれしい」ともいえる変化が起こる。
半世紀以上にわたって導入されていたガソリンの暫定税率が、2025年12月31日をもって廃止される。
1974年に「一時的な措置」として導入されて以降、1リットルあたり25.1円がガソリン価格に上乗せされてきた。
政府は、廃止による急激な価格変動や現場の混乱を防ぐため、段階的に補助金を拡充することで実質的な引き下げを行った。
2025年12月11日には、補助金が暫定税率と同額の25.1円に達し、ガソリンの全国平均価格は補助金投入前の173.5円(11月10日)から159.7円(12月15日)まで値下がりした。

ガソリンスタンドの利用者からは「安いところを探して選んでいた」、「一時期180円くらいだったから助かる」といった声も聞かれた。

また軽油には、軽油引取税の暫定税率として1リットルあたり17.1円が課されており、これは2026年4月1日に廃止される予定となっている。
軽油についても、2025年11月27日に補助金が暫定税率と同額の17.1円に拡充されている。
クルマに不可欠なガソリンの値下がりによって、今後のカーライフがどう変わるか注目される。
一方で、暫定税率に代わる財源は明確になっておらず、今後の政府の議論が待たれる。

EV補助金最大+40万円に!EV市場は変わる?

クルマにかかるお金で変わるのが、いわゆる「エコカー補助金」。
EVやFCEV(燃料電池車)を対象に、導入促進を目的として支給されるもので、政府は2026年1月1日以降に新車として新規登録される車両を対象に、補助の内容を見直すことにした。

日米関税協議の中で、アメリカ側から「EVと比べてFCEVの補助金が高すぎる」との指摘があった。
これを受けた合意内容に基づき、政府はEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)の補助上限額を引き上げる。
一方、FCEVについては2026年4月から補助上限額を大幅に引き下げる方針だ。

あわせて1月1日以降の補助額も公表された。
EVで見ると、増額が多い中、中国のEV大手・BYDは据え置きとされた。

EVをめぐっては、年末に大きなニュースが飛び込んできた。
去年の12月17日にEUが2035年以降も条件付きでエンジン車の販売を容認することが決まった。
中国製EVが存在感を増している中、欧州の自動車メーカーが苦戦していることが背景にあると思われるが、条件を満たせばPHEV、HEV(ハイブリッド車)など、あらゆるエンジン車の販売が可能になり、日本の自動車メーカーにとっては追い風だ。

自動車業界は、ここ数年でEVやSDVなどの技術競争が激しくなっているだけでなく、世界的な半導体不足や為替の変動、トランプ関税の影響で難しい経営環境が続いている。
そんな時代だからこそ、日本の基幹産業である自動車業界の官民一体での底上げを期待したい。
(フジテレビ経済部・丹羽うらら)

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丹羽うらら
丹羽うらら

フジテレビ報道局経済部記者。経済産業省・自動車・エネルギー担当。ジャパンモビリティショーなどを取材。