岩手県花巻市で「岩手から世界へ」をスローガンに掲げ、ダンススクール「This my JAM」を運営する阿部銀河さん(24)と妻の穂乃佳さん(26)。実力派のダンサー夫婦が2024年1月に開業し、幼児から20代まで70人以上の生徒にダンスを教えながら、2025年11月には県内外から約250人のダンサーが集結する大規模イベントを実現。岩手のダンスシーンに新たな風を巻き起こしている。
夫婦二人三脚で夢を形に
奥州市出身の阿部銀河さん(24)と花巻市出身の妻の穂乃佳さん(26)。
かつて花巻市内の別のダンススクールでインストラクターを務めていた2人は、2024年1月に以前スーパーだった建物を改装し、古着店も併設したダンススクール「This my JAM」を開業した。
「自分たちが発信するべきところは岩手だし、花巻をダンスで盛り上げたいと思い、ダンススタジオを2人でやろうと決めた」と銀河さんは語る。
穂乃佳さんも「私の地元の友達とかみんなの居場所みたいになっている点もあり、花巻で良かった」と笑顔で話す。
「岩手から世界へ」をスローガンに掲げ世界で活躍するダンサーの育成を目標に、現在は幼児から20代まで70人以上にレッスンをしている。
輝かしい実績を持つ2人
2人が教えるのは「HIPHOPダンス」。音楽に合わせて全身を大きく使って踊るのが特徴だ。
夫の銀河さんは、東北のダンス大会で何度も優勝や入賞を果たしてきた実力派。
妻の穂乃佳さんは、ヒップホップユニット「Creepy Nuts」など数々の有名アーティストのミュージックビデオに出演した経験を持つなど、夫婦ともに輝かしい実績がある。
小学生の頃からダンスに打ち込んできた銀河さんは、「あいさつとか諦めない心とか、ダンスで得られるものだと思うし、職業でダンスをすることを目標にしてほしい」と生徒たちへの思いを語る。
2人の愛情たっぷりの指導は、生徒からも「ミスしたときに『大丈夫だよ』と言ってくれ、明るくて優しい先生」という声が聞かれ好評だ。
大きな挑戦、大規模イベント開催
2025年11月、銀河さんと穂乃佳さんは新たな挑戦として花巻市を会場に県内外のスクールなどからダンサーを招いた大規模なダンスイベントを企画した。
そのイベントまで残り1カ月に迫ったこの日、スクールの選抜チームが課題曲の練習に励んでいた。
イベントでは銀河さんと穂乃佳さんも生徒たちと一緒に踊るパートがある。覚えなければならない振り付けは全部で5曲分。
決して簡単なことではないが、苦労して身につけたものを披露し、生徒や仲間と一緒にイベントを実現させる経験が、ダンサーとしての成長につながると2人は考えていた。
「(岩手には)目立てるイベントもないし発表会で終わっているところが結構多い。生徒たちが世に出る一歩のイベントになればいい」と銀河さんは意気込む。
穂乃佳さんも「違うジャンルもそうだし同じジャンルもだけど『こんなダンスがあるんだ』みたいなエネルギーを吸収してほしい」と期待を寄せていた。
育てた生徒たちの成長
イベント当日の11月23日。会場には開演の1時間ほど前から長い列ができ、約250人のダンサーたちが舞台に立った。
順位を競うことはせず、各ダンススクールで積み重ねてきた練習の成果を発揮する表現の場となり、プロダンサーも招かれた。
いよいよThis my JAMの選抜チームが登場。舞台袖では出番を前にした銀河さんが、固唾をのんで見守っていた。
全員が自信に満ち溢れたパフォーマンスを披露し堂々と踊り切った。
また、息の合ったダンスを見せていたのは高校3年生の高橋唯斗さんと伊藤李寧さんだ。
2人は銀河さんと穂乃佳さんがスクールを開業する前の2020年頃からレッスンを受けてきた“愛弟子”だ。
県外に進学するため、このイベントがスクールの生徒としての最後の舞台となった。
高橋唯斗さんは「銀河さん・穂乃佳さんへの感謝を込めて踊った。ダンスは努力してきたから努力を忘れないで頑張っていきたい」と語った。
伊藤李寧さんも「ダンスを教えてくれた銀河さん・穂乃佳さんと仲間たちに感謝を伝えるために踊った。楽しむことと感謝を忘れないことが学んだことだと思う」と振り返った。
岩手のダンスシーンを創る
約600人の来場客から歓声と拍手を浴びたイベント。やり遂げた2人が、このとき胸に抱いた思いを明かした。
「岩手にはないダンスシーンをつくれたのではないかという部分がたくさんあった。また来年も頑張りたい」と穂乃佳さんは笑顔を見せる。
銀河さんも「このイベントで岩手のダンスシーンを岩手のダンサーとつくっていきたい。岩手のダンサーさんたち一緒に頑張っていきましょう!」と力強く語った。
岩手のダンス界に新風を吹き込んだ銀河さんと穂乃佳さん。人を育み、心を揺さぶるダンスの力で未来を切り拓いている。
