奇抜な衣装やパフォーマンスで注目を集める岩手・花巻市のヒップホップグループ。コロナ禍で制限されていたライブなどを再開し活動が順調になり始めたグループだが、2023年7月、メンバーの1人が亡くなった。仲間を失ってから初めて臨んだ2023年夏のステージを追った。

幼なじみで結成されたヒップホップグループ

花巻市を拠点に活動するヒップホップグループ「BIG-RE-MAN(ビックリマン)」。2023年7月、盛岡市内で開かれた音楽イベントに出演した。

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コロナ禍で制限されてきたライブ活動を再開し、奇抜なパフォーマンスでファンを盛り上げるグループだが、この日、ある悲しみと向き合いながらステージに立っていた。

「BIG-RE-MAN」は19年前、花巻育ちの幼なじみで結成。カンダタ・エビス・カタスカシの3人のMC、DJのポンズールー、ライブを盛り上げるSHOUTERのテンディーの5人で活動し、これまで100曲以上をリリース。

特徴はライブで身にまとう奇抜な衣装。一度見たら忘れない強烈なキャラクターで、観客を盛り上げてきた。

“悲しくないわけない”MC・カンダタさんが病死

出演の約5時間前、メンバーたちが会場入りし準備を始めていた。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、2023年の夏は音楽イベントへの出演オファーが殺到したという。

BIG-RE-MAN MC・エビスさん:
断らなければいけないくらい(出演の)話をもらっている。みんな待っていたんだなと思う

本格的にライブ活動を再開し始めた中、メンバーは4人。1人足りない。

BIG-RE-MAN MC・カタスカシさん:
悲しくないわけがない

BIG-RE-MAN MC・エビスさん:
亡くなる2日前まで、一緒にライブをしていた

この約4週間前、BIG-RE-MANのMCカンダタさんが心臓の病気で突然亡くなった。38歳だった。

おちゃめな人柄が愛され、周りにはいつも笑いがあふれていたカンダタさん。月に3回ほど開催していたライブ活動がコロナ禍でほぼなくなる状況に陥っても、メンバーの家に集まり、地元・花巻市を題材にした楽曲の制作に打ち込んでいた。

それぞれ仕事をしながら音楽活動を続けるメンバーと、週に一度集まる時間を大切にしていた。

2023年7月に亡くなったMC・カンダタさん(当時37):
仕事と家庭の行き来だけなら、もっと窮屈な思いをしていたかも。定期的に(メンバーと)会うことで、ぶれないでいられた

地道に作り続けた曲をライブで存分に披露できる日を待ち望んでいた。

BIG-RE-MAN SHOUTER・テンディーさん:
やりたいことだらけだったと思う。「いろんなところに行ってライブしたい」と言っていた気がする

BIG-RE-MAN MC・カタスカシさん:
一緒に見たい景色がもっとあった。やろうとしていることの中にいてほしかった

亡くなった友にささげる特別なステージ

この日は4人になってから初めてのライブ。
それでもメンバーたちは、観客が気兼ねなく笑って楽しめるよう、自分たちのスタイルを変えずに臨むと決めていた。

BIG-RE-MAN SHOUTER・テンディーさん:
「笑える」とか「ふざけている」というノリでずっとやってきた。観客はカンダタが亡くなって、「笑えなくなってきた」というのがある。笑ってもらえないのは俺らも困るし、カンダタも困るというか

こうした中、ライブの終盤にある曲が初めて披露された。

BIG-RE-MAN MC・エビスさん:
カンダタにささげます、『いちばんほしい』

カンダタさんが亡くなってわずか2日後、やりきれない衝動を曲にしたという。

なんで花は咲くのだろうって 思っちゃうくらいへこんだよ
ありがとな これからもよろしくな 俺にはお前が必要だ
ただ同じ年に同じ土地に生まれ 出会った友達なんだけど
それが2004年から今に至るまで
気が付けば一緒にステージに立ってた 
会いたいぜ 約束果たすまでそこで見ててくれ カンダタ

BIG-RE-MAN MC・エビスさん:
気持ちがあふれ出しそうになっていたので、作品にして残していたら特別な曲になるのではないかと

以前と同じように楽しく笑えるライブの中、そこに入り交じった仲間への思い。
ファンたちはしっかりと受け止めていた。

BIG-RE-MANのファン:
湿っぽくせず楽しんでいるのを見ると、俺らも元気をもらえる

BIG-RE-MANのファン:
パワーをもらえるライブをしてくれた。これからも楽しみ

1人分広くなったステージでのライブを終え、メンバーはあらためて亡きカンダタさんの存在を実感していた。

BIG-RE-MAN DJ・ポンズールーさん:
ふと「ああ、いないんだな」と実感したのと、「4人でやっていける」と思った

BIG-RE-MAN MC・エビスさん:
すごく特別な日になった。ただカンダタに「ありがとう」と言いたい。これからもよろしくと言いたいです

コロナ禍、そして仲間との別れ。
苦難と悲しみを乗り越えた花巻市のヒップホップグループ「BIG-RE-MAN」が、亡きメンバーの思い描いたステージに立ち続けている。

(岩手めんこいテレビ)

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