春の高校バレーが1月5日に開幕する。長崎県男子の代表は鎮西学院。県内の主要大会すべてベスト8にとどまっていたが、データ重視の「IDバレー」で、最後の全国大会への切符をつかんだ。
伝統の「強打レシーブ」と「粘り」は健在
鎮西学院男子バレーボール部。強みとしてきた「強打レシーブ」「粘り」は健在だ。
全日本バレーボール高等学校選手権大会=春高全国大会には、2年連続3回目の出場となる。
2025年、鎮西学院はチーム改革に取り組んだ。竹尾監督はミーティングで「意識してほしいのはサイドアウト。4本中3本ラリーを取りに行く。これで75%を超えるから」と、選手に伝える。
「サイドアウト」とは、サーブレシーブをする側が得点を取ることだ。勝利に必要とされるサイドアウトの確率70%を上回る「数値」を意識させ、弱点のローテーションを探る。
データ重視の「IDバレー」
データ重視の「IDバレー」を取り入れたのは、2022年まで東レアローズのアナリストだったOBの竹尾龍慶監督(30)だ。
竹尾監督は選手たちにiPadを見せながら、各ローテーションでどういう風に攻撃をしてくるのか分析結果を伝える。
選手全員がタブレット端末を持ち、監督が分析したデータや対戦相手の動画をもとに、ミーティングを重ねてきた。
「攻撃パターンは自分たちの頭に入っていて、それは試合でも生かされてることをすごく感じる」と竹尾監督は語る。練習中、数字が記されたボードを見る習慣も根付き、IDバレーの考えが浸透してきた。
リベロの吉田凛太郎主将は「相手の攻撃とかデータで取ってやるので、ディフェンスとかブロックのやりやすさはとてもある」と話す。
「SVリーグ」アナリスト退団後、教員の道へ
竹尾監督は東レを退団後、通信課程の大学で教員免許を取得。
2024年、情報の教員として本採用された。そして2025年、ついに目標だった母校の監督に就任、春高出場を決めた。竹尾監督は数字だけではないところも高校生にはあると実感している。
「3年生がポジティブな言葉や前向きな姿勢をずっと続けてきたので、最後まで踏ん張りが効いた。今まで積み上げてきたものが結果として出てきたというところは、すごくホッとしている。ここで終わりではないので、全国大会に向けて頑張っていきたいと思う」と語る。
下積み時代が続いたエース
スタメンの平均身長は176.5㎝と、高さの面ではかなり低い部類といえる。エースの坂本涼太選手(179cm)が得点源だ。
2時間を超えるフルセットの激闘となった春高県大会の決勝。坂本選手は前衛・後衛関係なくスパイクを打ち続けた。足がつりながらも精神的支柱としてチームを引っ張り、歓喜の瞬間を迎えた。
長崎県の北部、佐々町出身の坂本選手は親元を離れ、寮生活を送っている。2022年、鎮西学院が春高に初出場した際のエースに憧れて入学した。寮では2024年の春高県大会の映像を見て、先輩たちの技術を研究している。
1年前、坂本選手の姿はスタンドにあった。「ほかのチームの人たちは自分と同じ学年の人たちがたくさん出ていたから、悔しい思いがあった」と語る。
体育館の外での練習が多かった下積みを経て、やっとレギュラーをつかんだものの、県大会ベスト8どまりが続いた2025年。最後の県大会で頂点をつかむまで、坂本選手は同部屋の西町大輝選手と励ましあってきた。
西町選手は「自分が活躍するイメージを持ってトレーニングをして、きつかったが、その先に栄光があるというイメージをもってやってきた。春高県大会で勝ったときは『やったぞ!』と熱く握手したり、ハグしたりをこの部屋でやりました」と振り返る。
ようやく掴んだ「全国大会」の舞台
3年生11人、部員31人で臨む最初で最後の全国大会「春高」はすぐそこだ。
吉田主将は「先輩たちより身長が低いので、その分粘り強いディフェンスで、最後はエースとかスパイカーに持っていって打ち切って勝ちたいと思う。坂本選手は最後に決めてくれる頼もしい存在なので、そこは安心と思っている」と話す。
坂本選手は「前衛で決めるのも当たり前だが、サーブやバックアタックからでもコートのいろんなところから決めていきたいと思う」と意気込む。
IDバレーを武器を手に、逆境からはい上がった3年生は、目標の全国ベスト8に向け着々と準備を進めている。鎮西学院の初戦は大会初日1月5日の第5試合で、優勝経験のある広島の強豪・崇徳と対戦する。
(テレビ長崎)
