英国の街中には、心温まるクリスマスのイルミネーションが溢れている。
その背景には、17世紀ドイツでクリスマスツリーにロウソクを飾る習慣が始まり、19世紀のビクトリア朝に入ると、英国でもクリスマスツリーが普及し、クリスマスクラッカーやクリスマスカードも広まっていった。
映画「ラスト・クリスマス(2019年)」「ラブ・アクチュアリー(2003年)」が英国のクリスマスを舞台に描かれているように、クリスマスのイメージとの結びつきが強い。
作品や演出へ込められた想いや歴史を見てみると、過去から現在へと続く人々の温かな想いや幸せを願う人々の心を映し出してきた、クリスマスのイルミネーションがあった。
天使が飛ぶリージェントストリート
バッキンガム宮殿のすぐ北側に位置するリージェントストリート(Regent Street)のイルミネーション。1954年の初点灯から2024年で70周年を迎え、今年は「Spirit of Christmas」イルミネーションの10周年記念となる年だ。
世界的なライティングプロジェクトを手掛けるJames Glancy Design所属のデザイナー、ポール・ダート氏が手がけ、「30万個以上のLEDライトを用いて、見上げたくなるような、インスタ映えをするデザインに設計した」と語っている。
天使のような”Spirits”が飛び抜ける様子は、クリスマスの魔法に掛かったような瞬間にさせてくれる。
正統派クリスマスツリーと出会えるレドンホール・マーケット
映画「ハリー・ポッターと賢者の石(2001年)」のロケ地にもなった、レドンホール・マーケット(Leadenhall Market)。
約5.5mの巨大なクリスマスツリーが11月13日に点灯式を迎えた。
ビクトリア朝のマーケット店舗やモミのガーランドなどの華やかな装飾が施されている空間で、家族や友人、恋人たちが賑やかに食事や会話を楽しんでいた。
今年は正午と18時に雪の魔法を体験できる幻想的な演出が用意されている。
巨大な金色のベルが並ぶコベントガーデン
ハンドメイドのアクセサリーやクリスマスグッズが並んでいるコベントガーデン(Covent Garden)のアップル・マーケットの頭上には、目を奪われる巨大な装飾で彩られている。
2023年、約10年ぶりに刷新されたこれらのモニュメントは、40個以上の巨大な金色のベル、12個の赤いボール、8個のミラーボールで構成されている。ベルはそれぞれ約5トンの重さがあり、18カ月かけて製作された。
今年はこちらでも雪が降る演出を体験できるようになっており、近くの施設では映画「チャーリーとチョコレート工場(2005年)」をイメージしたアフタヌーンティーや屋外スケートも楽しめるなどのイベントが盛り沢山。映画「ラスト・クリスマス」のロケ地にもなっていることも有名だ。
まさに映画のワンシーンのようなカップル
ここからは、ノーベル賞取材の合間に出会った、スウェーデンのクリスマスシーンを紹介する。
スウェーデン・ストックホルムの中心部に位置するKungsträdgården(コンゴストラッドゴーデン)でのスケート遊びは1884年から始まり、1962年には人工スケートリンクが常設されるようになった。
11月〜3月まで開放されており、靴を持っていれば誰でも無料で利用することができる。
子どもと一緒にスケートの練習をする家族やスピードを競い合う友達グループ、デートスポットとして訪れる恋人などが集まる市民の憩いの場となっている。
遊び心を忘れないクリスマスウィンドウ
ノーディスカ・コンパニー(以下、NK)は、1902年に創業したストックホルムを代表する高級デパートである。
NKのクリスマスウィンドウは、1915年ごろから続く伝統であり、毎年異なるテーマで飾られる。
2025年は、スウェーデンの児童文学「長くつ下のピッピ」出版80周年とNKの創業110周年を記念した内容となっており、子どもも大人も、遊び心を忘れずに、思いがけない楽しみに出会えることを願う想いが込められている。
【結び】
それぞれのイルミネーションの下には、家族、恋人、友人などさまざまな境遇の人々が集まり、クリスマスの思い出の1ページを飾っていた。
毎年当たり前のように見ているイルミネーションの歴史や込められた想いを見直してみると、これまでとは違う新しい見方で楽しむこともできるのではないだろうか。
(執筆・写真:FNNロンドン支局 中島佑馬)
