2025年度の補正予算が16日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決され、成立した。その過程で、高い支持率を維持する高市内閣に対し、国会での対応などで攻勢をかけたかった野党側は攻めあぐねる結果となった。野党第1党である立憲民主党が直面している難しい立場、そして今後の課題などについて取材を通じて迫った。
今年の漢字は「難」 支持率伸び悩みと衆院で与党の過半数回復
「主題歌が心に染みる。世の中、『難儀なことばかり』で始まる。この『難』という字がこの1年を象徴しているのではないか」
記者から自身の今年の漢字について問われ、こう語ったのは、立憲民主党の野田代表だ。野田氏は13日、党のキャンペーンの一環で徳島市を訪問し、記者団の取材に応じた。今年の漢字を「難」とした理由について、NHKのドラマの主題歌に言及したうえで、次のように続けた。

「物価高にずっと苦しみながら、補正予算案が出てきたのは12月8日。遅すぎたのではないか。十分な内容だと私は思っていない。また地震が発生していることも国内における困難を象徴している。世界を見ても、ガザ地区、ウクライナの問題と、依然として紛争状態が続いているうえに、日中間まで冷え込んできた」
野田氏は、「こういう言葉で1年をくくるのは残念だが、難儀なことばかりという歌が染みたまま、『難』という字が思い浮かぶと思う」と説明し、「来年は困難を克服していく幸せな年にしたい」と語った。
こうした野田氏の発言に対し、立憲民主党のベテラン議員は、「国内外が難しい状況であるのは間違いないが、野党第1党である立憲民主党も同じだ」と話す。
こうした危機感の要因として、まず挙げられるのが党に対する支持率の伸び悩みだ。
FNNが11月22・23両日に実施した世論調査では、高市内閣に対する支持率は75.2%で、高い水準を維持している。一方、立憲民主党の支持率については、高市内閣発足以降、野党第1党の座は取り戻したが、11月は5.3%と伸び悩んでいる。
立憲民主党の中堅議員は、「予算委員会などで高市首相を追及すれば、ネットを中心にたたかれる可能性がある。質問する際にも慎重にならざるを得ない」と苦しい胸の内を吐露する。
野田氏も12日の記者会見で、記者から「高市首相はネットを中心に人気が高く、立憲からすれば不条理な批判やコメントがある」として見解を問われると、次のように語った。
「不条理なコメントはいっぱい、しょっちゅう、今回に限らず。でも最近ちょっとまた高まっている。媚中派、増税派、国賊と言われている。リアルな空間ではそうでもないが、ネット空間では結構キツい」
さらに、2024年10月の衆院選で、過半数割れに追い込んだ与党が約1年ぶりに過半数を回復したことも逆風と言える。
日本維新の会に離党届を提出し、その後、除名処分となり、「改革の会」を結成していた衆院議員3人が自民党の会派入りした11月28日、野田代表は記者会見で、次のような見方を示した。
「法案、予算、内閣不信任の取り扱いなど、安定的に採決できる環境になるだろうと、一般的にはそうだが、ほとんど拮抗(きっこう)している状況なので、政権運営としては緊張感は同じではないか」
立憲民主党の幹部は、「参院では過半数割れしているので状況は変わらない」との見方を示す一方、中堅議員は「高市政権の勢いが続けば、今後、他の議員が続く可能性はある」と警戒感を示す。
公明党と組み替え動議「改革中道路線の結集へ大きな一歩」
政府の経済対策の裏づけとなる補正予算案は11日午後、自民党、日本維新の会に加え、国民民主党と公明党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。

物価高対策や成長投資が柱となる補正予算は、一般会計の総額が約18兆3000億円で、コロナ禍以降としては最大規模となった。
補正予算案の衆院通過後、党の会合で、野田氏は反対した理由について、次のように説明した。
「時期の問題、規模の問題、内容において、それぞれ政府案に賛成できないということで、反対をさせていただいた」
国民民主党や公明党とは賛否が分かれる結果となったが、公明党とは補正予算案の組み替えを求める動議を共同で提出した。記者団の取材に対し、野田氏はその意義について次のように語った。
「共同で組み替えの動議を出すことができたことは、改革中道路線の結集をしていくという意味においては大きな第一歩を踏み出すことができた」
「中道政権」を目指す野田氏の念頭にある軸は、連合から支援を受ける立憲・国民民主両党に、自民党との連立政権を離脱した公明党を加えた形だ。
野田氏は「問題意識が共通しているから、共同の動議が可能になったと思う。その点では大きな前進だった」と強調した。
立憲民主党の幹部は「公明党が野党に転じてから初めての大きな決断ではないか。今後のことを考えると大きい。連携を深めていきたい」と意気込む。
一方で、党内からは国民民主党との連携に冷ややかな声も出ている。ある幹部は、「国民民主党は、立憲とそもそも連携する気がない。首相指名選挙の時からそうだった。あまり期待はしていない」と話し、ベテラン議員も「連携できるのはこちらが圧倒的な力を持った時だけだ」との見方を示す。
故仙谷由人氏の墓参で決意新たに「素志貫徹で前へ」
先述の徳島市を訪問した日の夜、野田氏は自身のSNSに投稿し、今年の漢字に触れるとともに、「お世話になった仙谷由人先生のお墓参りをし、この一年の歩みと、これからの決意をご報告してきた」と明かした。
2024年9月、代表選を戦っていた野田氏は、枝野元代表、泉前代表とそれぞれ、徳島市での討論会を前に、民主党政権で官房長官を務めた故仙谷由人氏の墓を訪ねている。その際、野田氏は墓前で手を合わせたあと、記者団の取材に対し、「政権取りを目指すので、天国からぜひ見守ってくださいとあいさつした」と語った。
SNSでの投稿の中で、野田氏は「世の中、難儀なことばかりだと感じる場面が多かった一年だったが、その中で何を学び、どう前へ進むかが問われた一年でもある。主題歌の冒頭にある言葉が折に触れて心に染みる。その思いを重ねながら、『難』の一字をしたためた」と記したあと、最後に次のようにつづった。
「素志貫徹で前へ」
7月の参院選を「ホップ・ステップ・ジャンプ」のステップと位置づけた野田氏が、次の衆院選でのジャンプ、政権交代を実現できるのか、その行方に注目が集まる。
(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)
