不登校から高校生活を楽しめるように成功のカギは、授業方法と校内ルールか2025年4月、立川市に開校した都立立川緑高校在校生の9割は不登校経験のある生徒たち。都内で7校目のチャレンジスクールだ。
最新装置が完備された真新しい校舎、先輩がいないことや、自由な校風などが人気で2025年度の入学生は応募が殺到し、最終応募倍率は都立高校全体のトップ3に入る2.55倍をマークした。その立川緑高校が今どうなっているのか、学校の中の様子を取材した。
校舎に入ると、生徒たちから「こんにちは」とあいさつしてくれた。
服装は、制服を着た生徒もいれば、ジャージ姿、私服を着た生徒も多く見られた。
なかには、黒を基調としたフリルやレースの洋服をきた生徒もいたが、私服が認められている都立高校では他校でも見かけることがあるそうだ。
立川緑高校の石田和仁校長は、「きょう学校に行く服を決めること。そうした日々のアウトプットが自立に向けた大事な要素となっていると思います」と話す。
立川緑高校の校舎には、高校には珍しくアイスクリームの自動販売機がある。
校舎を汚してしまうかもしれないので敬遠されているようだが、立川緑高校の生徒は、校舎内の飲食禁止場所以外であれば歩きながら食べられる。
石田校長は、「決して何をしてもいい、という教育ではない。校舎を汚してしまうかもしれないのでダメ・禁止ではなく、汚してしまった場合は自己責任できちんときれいに戻せば良いということを学ぶことが大切」だと話す。
在校生の9割が不登校経験のある生徒だが、約8割の生徒が自分のペースで学校にきているほか、文化祭など学校行事の参加率は9割に上るという。
不登校から登校に転じている理由として、授業が楽しいこと、そして校内に居場所があるからだと考えられている。
立川緑高校では、中学生時代に不登校だった生徒が多いことから若い先生たちが授業内容に中学の学び直しを取り入れている。
理科であれば、ガスバーナーや顕微鏡などを使った実験、英語や数学でも、学び直しの授業を組み合わせて行われている。
学校内での居場所づくりについては、校内居場所カフェや学習室で友達と楽しそうに会話する生徒たちの姿が多く見かけられる。
学校に居場所があることは、生徒たちにとって学校へ行くための大きな原動力となっているはずだ。
立川緑高校のモットーは、「自分たちの学校は自分たちでつくる」だ。
部活動も、生徒からの提案で麻雀部・音楽部・ダンス部・演劇部が誕生した。
生徒役員の選挙では、11名が6つの役職に立候補するなど学校運営に関わろうとする意識が高い。

その中でも、石田校長が感動したのが、生徒たちが作った校歌の歌詞だ。
みどりの歌という校歌の歌詞に、「一歩踏み出す勇気」というフレーズが入っている。
有志の生徒たちがアイディアを出し合って生まれたこのフレーズこそ、不登校から登校へと踏み出そうとする生徒たちの願いや思いが込められているのではないか。
生徒が作った校歌は、11月の開校記念式典で全校生徒によって初めて歌われた。
生徒が自分たちで作る学校は、今後どのように変わっていくのだろうか。
そこに不登校問題の解決策が見つかるのかもしれない。
